昼のスナックから生まれたまちの元気 下町の絆を広げるアクション

東京・荒川区の小台大通り商店街。隅田川に近く、都内で唯一の路面電車(都電荒川線)が走る小台駅のそばにある。その商店街の一角に、「生活茶屋」という住民が楽しめる空間を作った田中類氏。彼は、どんな目的でその空間を作り、何をしようとしているのか。下町から広がる元気の源を探った。
聞き手:高橋恒夫(事業構想修士)

 

田中 類(bonds 代表取締役)
写真左は生活茶屋のスタッフで81歳現役の山本かず子さん

小台という地名は東京都足立区に属するが、小台大通り商店街は荒川区西尾久エリアにある。特段、有名な史跡などはないが、歩いてみると、肉屋、魚屋、青果店など昔ながらの商店に出会う。昼間は高齢者の姿が目立つ、この古い下町のお話をご紹介したい。

活気を失いかけていた下町に「会話」を見る

専門学校在学中にアメリカへ留学していた田中氏、その時彼は就職か起業かで悩んでいた。帰国後、いったん就職したものの、2012年に趣味のバスケットボールで大けがをする。手術により何とか回復したが、一時は医者から今後歩行困難とまで言われたそうだ。「自分の人生はこれでいいのか」と改めて真剣に考えたという。

幸いにして、会社員時代の取引先の応援もあり、飲食系のコンサルタントとして独立、荒川区に住み始めた。事業を立ち上げた2015年頃、「ぶらぶらと街を見るのが大好き」という田中氏が目にしたのは、活気を失いかけている街の中で、主婦たちが井戸端会議をしている姿だった。「あちこちで立ち話をしている。入る喫茶店とかないのかな」。そう感じた彼は、生活の中の広場という意味を込めて、まず「生活広場」という住民のための小さな雑貨のお店を開いた。

引き続きまちを歩いてみると、居場所を求めていた人は他にもいた。中高生はハンバーガー店にしか行くところがない。ビジネスマンは商談する場所がない。喫茶店は殆どが閉店してしまっている。居場所を探してあげたいと思った田中氏は 空き物件を見つけ、次は「生活茶屋」を開く。今度は住民の「お喋りする場所」だ。採用したスタッフの仕事内容は「お客様とお喋りすること」。お酒は提供しない「昼のスナック」がお店のテーマだ。

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