地域の未来を構想するフォーラム デジタルの活用で稼ぐ力を強化

持続可能な自治体経営に向けて地域の稼ぐ力の向上が求められる中、楽天グループと事業構想大学院大学は、「第1回 自治体地域イノベーションフォーラム」を開催した。データを用いた自治体経営により、地域経済循環をつくり、地域の活性化を図る可能性を議論した。

楽天:自治体と共に歩む存在
として地域創生事業に尽力

今回のフォーラムでは、楽天グループの上級執行役員でドリーム事業/地域創生事業ヴァイスプレジデントの木村美樹氏が開会挨拶を行った。

木村 美樹
  楽天グループ 上級執行役員
※肩書は講演当時のものです。

楽天グループの地域創生事業では、地方自治体や住民をエンパワーメントしていくことを意味する「WALK TOGETHER」という言葉を掲げている。その柱は①地域における稼ぐ力の創出やその支援、②地域におけるデータを利活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)推進、またはその担い手である人材の創出、③地域における課題や問題を楽天グループが持つデータサービスアセット等を使い解決すること、という3つだ。

木村氏は「楽天グループはこれらを通じ、地域経済循環モデルの一助として地方自治体の持続可能な運営と住民の福祉に貢献したいと考えています」とした上で、「グループが持つデータやサービス、アセット等々を使い倒していただき、自治体と共に歩む存在として地域創生事業に尽力していきたいです」と語った。

内閣官房:「デジタル田園都市
国家構想」で地域の未来を拓く

続いて、内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局前事務局長の髙原剛氏が「デジタル田園都市国家構想で目指す地域未来構想」というテーマで基調講演を行った。国の「デジタル田園都市国家構想基本方針」には、「『全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会』を目指して」という副題がある。

髙原 剛
  内閣官房 デジタル田園都市国家構想実現会議事務局 前 事務局長
※肩書は講演当時のものです。

「国は構想で中長期的な方向を示しますが、あくまで地方が自主的、主体的に取り組むことが前提です。地方では自らが目指すべき理想像を描き、実現に向けた取り組みを推進していただくものです。その際、民間企業や大学のような多様な主体をいかに巻き込んでいくかが大きなポイントになるはずです」(髙原氏)。

国家構想の取り組み方針は、4つの柱から成る。第1の柱「デジタルの力を活用した地方の社会課題解決」では、まず地方に仕事をつくることを掲げる。地方が経済的に自立するには、地域を支える産業の振興や起業を促し、活発な経済活動を確立することが不可欠となる。また、自らの力で稼ぐ地域を作るためには民間企業が持つデータの利活用も有用だ。

さらに人の流れをつくることも重要で、「転職なき移住」というキャッチフレーズによる地方創生テレワークの推奨などの施策を行っていく。他には、結婚・出産・子育ての希望をかなえることや、魅力的な地域づくりも目指す。

第2の柱「デジタル田園都市国家構想を支えるハード・ソフトのデジタル基盤整備」では、光ファイバーや5G等の通信インフラの整備が不可欠となる。また、総務省では「デジタル田園都市国家インフラ整備計画」に基づき、地方のニーズに即したインフラ整備も進めていく。

第3の柱「デジタル人材の育成・確保」では重要業績評価指標(KPI)として、2026年度末までにデジタル推進人材230万人を育成するという目標を掲げている。あわせて「デジタル人材地域還流戦略パッケージ」に基づき、人材の地域への還流も促進していく。

第4の柱「誰一人取り残されないための取組」では「地域ICTクラブ」の普及推進や、高齢者等に向けたデジタル活用支援の推進、デジタル活用による行政相談手段の多様化などを進める。

「デジタル田園都市国家構想は地方創生の目的を共有した上で、取り組みを継承、発展させるものです。国は年内を目途に『まち・ひと・しごと創生総合戦略』を抜本的に改訂し、『デジタル田園都市国家構想総合戦略(仮称)』という名称に改める方針です。地方自治体には、この戦略に基づく目指すべき地方像の再構築や、地方版の総合戦略改訂をお願いしていきます」(髙原氏)。

山形市:ビッグデータを分析、
最適な公共交通を検討

フォーラムでは、山形県山形市や山梨県富士吉田市、群馬県の取り組みも紹介された。このうち山形市については、山形市副市長の井上貴至氏が「データを用いた自治体運営」というテーマで講演した。井上氏は総務省出身で「地方創生人材支援制度」の立ち上げに関わり、自身も鹿児島県長島町で2年間、地方創生に取り組んだ。さらに昨年7月からは山形市の副市長として市政全般のデジタル化を進めている。

井上貴至
  山形市副市長
※肩書は講演当時のものです。

山形市の学校教育におけるDXの取り組みでは現在、すべての中学校でプログラミング学習教材「Life is Tech! Lesson(ライフイズテック レッスン)」を導入している。他には市立商業高校でデジタル環境を整備しているほか、「やまがたAI部」の支援を拡充する。

「やまがたAI部」は、県内の企業や教育機関、自治体が連携して取り組むデジタル人材育成プロジェクトだ。2020年に県内の高校生を対象とする「部活動」形式で始まり、放課後に人工知能(AI)に関する先進技術やデータサイエンスを学ぶ機会を提供している。さらに、活動の集大成を発表する場の「やまがたAI甲子園」も毎年、開催している。

一方、市内の子育て世帯を対象とする「おやこよりそいチャットやまがた」が今年始まり、子育ての悩みをLINEでデジタルソーシャルワーカーに相談できるようになった。公共交通に関しては今年5月、県内の路線バス等で使える地域連携ICカード「cherica(チェリカ)」が導入された。今後は交通結節点の整備や電動シェアサイクリング/MaaS(サービスとしての移動)導入に取り組むほか、リアルタイムデータの可視化やビッグデータの分析で最適な公共交通を検討していく。観光面では、蔵王温泉スキー場のリフト券をスマートフォンで事前購入できるようにしたほか、DMC(観光地経営会社)設立やデジタルマーケティングの検討にも取り組む方針だ。

山形県が導入したICカード「cherica」

「地方創生の取り組みでは、自分だけ、自社だけでできることには限界があり、いかに仲間と連携するかが重要になります。山形市では今後さらに蔵王温泉のデジタル化や、ふるさと納税との融合も進めていきたいです」(井上氏)。

 

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