総務省が自治体の課題解決を支援 先端ICTで地域活性化を

総務省はローカル5G、スマートシティ、自治体DXなど地域のICT活用の推進を進めている。政策の要点について、総務省・地域通信振興課で課長補佐をつとめる甚田桂氏が語った。

少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少や、複雑・多様化する行政ニーズへの対応などを背景に、自治体による地域のICT推進が進められている。総務省の地域通信振興課では、自治体のICTによる地域活性化・地域課題の解決のため、⑴ローカル5Gの開発実証、⑵スマートシティの実現、⑶自治体DX推進など各種施策を実施している。

まず1つ目は超高速、超低遅延、多数同時接続という5Gの性能を活かしたローカル5Gの開発実証だ。ローカル5Gの特徴は、地域企業や自治体などが使用用途に応じて柔軟に利用領域を設定できる点と、地域で完結する通信網のため、他の地域の災害による通信障害の影響が小さく安定的な運用が可能な点で、幅広い分野での利用が期待されている。

具体的な利用シーンで5Gを開発・実証

課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証プロジェクトの概念図。地域の企業など様々な主体が、それぞれのニーズに応じて5Gの活用を検討する

 

総務省では地域課題解決型ローカル5Gの実現に向けて、防災・産業・医療・交通など様々な領域での実証実験の事業を推進しており、2020年度から2021年度で全国計45件の地域事業を採択した。各事業では、建設現場で遠隔で建機を制御し安全性を向上させたり、河川の監視をセンサーで行い目視よりも安全・正確な作業を実現したり、農業地帯でトラクターを無線で制御して農業の生産性を向上させるなど、事例を積み上げている(上図)。

2つ目はスマートシティの実現だ。国は2025年にスマートシティ100地域の実装を目指し、全省庁横断で関連事業を立ち上げ、スマートシティを推進するための国内基盤の整備と産官学連携事業による民間開発投資を加速させている。具体的な地域サービスとしてはICTを活用したeラーニングや地域の見守り・安全、防災情報のデータ化、自動運転の実装など各分野にわたる。さらに国が直轄する事業として、スマートシティより一歩進んだまちづくりであるスーパーシティを選定する予定だ。これは移動・医療・エネルギーなど5領域以上をカバーする取り組みで、従来規制に対する特例措置などを法律上の手続きの上で進めることを国が後押しする。総務省では、分野横断的なデータ連携基盤の導入を促進する事業を2017年から毎年実施しており、全国のスマートシティの実現に重要な地域間のデータ連携基盤の仕組みづくりを行っている。

3つめは自治体DX推進だ。人口減少や複雑化する地域課題に対して、人的・予算的な制約条件が厳しくなる自治体には業務効率化が必須だ。そうした課題を解決する手段として総務省ではAI・RPA導入ガイドブックの策定からその実装の支援、さらに自治体の基幹的な業務プロセスにAI・RPAを活用した場合の実証なども行っている。

また、DXに関する課題を外部人材の力で解決する「地域情報化アドバイザー派遣事業」では、DX有識者212名が自治体に対して現地とオンラインの両方で助言を行っている。支援事例では、庁舎移転を控えて端末とシステムの構成に悩む自治体に、実際に同じ事例を経験した元自治体職員が助言するなど、自治体ならではの課題にも対応している。