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食料・農業・農村基本法が改正を迎え、食料安全保障の強化や環境への配慮、人口減少下での事業の存続が大きな方向性として掲げられた。背景には、農業の持続可能性に関する不安の高まりがある。食料確保のため、国内の一次産業DXの推進、それによる事業者の収入増・生産性向上の実現が不可欠だ。

 

2024年4月19日、日本の農業政策の基本方針を示す食料・農業・農村基本法の改正案が衆議院本会議で賛成多数で可決された。「農政の憲法」と位置付けられる同基本法は、1999年の施行以来、初めての改正となった。改正の方向性として、①食料安全保障の抜本的な強化、②環境と調和のとれた産業への転換、③人口減少下における農業生産の維持・発展、④同農村の地域コミュニティの維持、を挙げている。

国際価格高騰などで高まる
食料安全保障への関心

食料安全保障を前面に打ち出した背景には、世界的に不安定化する農業生産、日本経済のパワーが少子高齢化で縮小することに伴うグローバルな食料の「買い負け」への不安、それに追い打ちをかける円安傾向などがある。

まず農業生産については、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、地球温暖化の進行に伴う主要作物の収量低下や、干ばつの強度・頻度の増大を警告している。2022年にはロシアによるウクライナ侵攻の影響で穀物価格が上昇した。欧州の穀倉地帯であり、小麦、大麦、トウモロコシ、ナタネなどを欧州や中東、アフリカ諸国に供給していたウクライナの農業生産が、紛争の影響で停滞したためだ。世界的な穀物価格はマーケットの影響で変動するが、10年間ほどの平均で比較しても、価格は上昇傾向にある(図1)。2008年に世界的な穀物価格の上昇があり、それ以降は豊作の年と不作の年で価格の変動が大きくなっている。

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