努力で「亀」もうさぎに追いつける 新国立劇場バレエ団ダンサーの哲学

日本唯一の国立劇場付属のバレエ団である新国立劇場バレエ団で、プリンシパルとして活躍する奥村康祐。その踊りの技術の高さ、美しさはもちろんのこと、繊細な演技力も高く評価され、2022年には芸術選奨文部科学大臣賞を受賞したが、「才能には恵まれなかった」と語る。自らを「亀」と評しながら、今、日本を代表するバレエダンサーとして観客を魅了し、バレエ界を牽引していく。

文・油井なおみ

 

奥村 康祐(バレエダンサー、新国立劇場バレエ団プリンシパル)
新国立劇場バレエ団『コッペリア』フランツ 撮影:瀬戸秀美

うさぎよりやれば亀も同じ場所に
いけると信じてここまできた

しなやかな肉体を以て表現する華麗な舞、オーケストラが奏でる豊潤な音色、そして煌めく衣裳と舞台。束の間、その夢のような世界に現実を忘れる。

総合芸術の頂点として、世界中で敬愛され続けているバレエ。日本ではまだ“お稽古事”というイメージが根強くあるが、その芸術価値への認知も高まり、年々、国内公演数、観客者数ともに増やしている。また、ここ数年は、国際バレエコンクールで、日本人が上位入賞するニュースも後を絶たない。

国内のバレエ人口自体は、コロナ禍や少子高齢化、他ジャンルのダンスの台頭などの影響もあってか、ピーク時から減少してはいるが、男子の生徒数の割合は増加傾向にある(『バレエ教育に関する全国調査2021』昭和音楽大学バレエ研究所調べ)。

奥村康祐がバレエを始めたのは、5歳。最初は、母が創立したバレエ学校の支部教室に通う妹の付き添いだった。

「教室の下が本屋さんで、僕はそこに行くのが楽しみで、妹のお稽古の間、ずっとそこにいました。ただ、発表会の前などはなかなかレッスンが終わらなくて。仕方なく待っている間に振り付けを覚えてしまい、僕が妹に教えていたらしいんです。だったら、一緒に習えば、ということで始めました。送迎を担っていた祖母の子守りも楽になるということで(笑)。ものすごくやりたくて始めたわけではないかもしれませんが、小さい頃は楽しかった思い出しかないですね」

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