マーケティングデータを活かした戦略づくり 求められる自治体の経済力

少子高齢化や財政逼迫が深刻化するなか、地方自治体には稼ぐ力が求められている。観光やふるさと納税、関係人口の創出を切り口に、地域経済の活性化をサポートする楽天グループ。富士吉田市×楽天の共創で実現した、データによる効果的な自治体経営の事例を紹介する。

富士吉田市は人口4万8780人。富士北麓地域の中心に位置し、市内のいたる所から富士山を眺めることができる、限りなく富士山に近いまち。千年の歴史を持つ機織のまちで、特にネクタイの生産量が多いことで知られている。富士山と桜、五重の塔の写真撮影スポットとして有名な「新倉山浅間公園」をはじめ、「富士急ハイランド」などがある、観光地でもある。

自治体運営から
自治体経営へ

そんな富士吉田市は、ふるさと納税の寄付額で2020年に全国6位、山梨県内では5年連続1位。返礼品をただ送るだけでなく、地域の魅力を伝え、ファンをつくることを軸に、ふるさと納税の「富士吉田スタイル」を構築。税収65億円の同市が、2021年は72億円の寄付を獲得するまでになっている。

図  富士吉田市 寄付金額推移

富士吉田市のふるさと納税寄付金額の推移。2019年にマーケティングの視点を入れることで急激に増加した

出典:富士吉田市

人口減少による税収の減少、少子高齢化による扶助費の増加、公共施設老朽化への再投資などから自治体の財政は厳しい状況だ。ふるさと納税推進室の萩原美奈枝氏は「ふるさと納税は、寄付を集めるための手段ではなく、まちを発展させるための手段であると考えました」と話す。

萩原 美奈枝
  富士吉田市役所 ふるさと納税推進室 部長

自治体職員の感覚で施策を打つのではなく、客観的なデータを活用し、まちの本当の姿を知る。その上で、長期的な視野に立ち、地域資源をいかにまちの経済的な発展へ投資できるかが、まちの活性化につながる。

「まちの経済的な発展への投資という考えに立ち、これまでの自治体運営から自治体経営へ視点を変え、ふるさと納税の財源の使い道を検討しました」と萩原氏はいう。

結果として選ばれたのが、写真スポットとして爆発的人気の新倉山浅間公園の展望デッキの拡充整備、有害鳥獣駆除とジビエによる経済効果を狙ったジビエ加工施設の整備、市内全域を巻き込んだ「富士吉田市まるごとサテライトオフィス構想」など。どれも富士吉田市の課題解決のため、財源をプロジェクト化し未来の投資につなげている。

データに基づく戦略を立案

富士吉田市では「楽天ふるさと納税」のシステムを利用している。同市で納税寄付者が年間25万人を超えるまでになった背後には、楽天のデジタルマーケティングの知見が活きている。

楽天グループでは自治体に対し、(1)地域の戦略と稼ぐ力づくり、(2)データとノウハウの提供によるDX促進、(3)楽天エコシステムの活用による地域課題の解決、の3つの切り口で、地域経済循環モデルの構築をサポートしている。

1つ目の地域の戦略と稼ぐ力づくりにおいては、ふるさと納税、産品購入、宿泊予約などを通じ、納税者や購入者と地域との関係をより強く・深くしていくようなマーケティングを行う。

楽天グループで「楽天ふるさと納税」のジェネラルマネージャーを務める田村裕二氏は「ふるさと納税をした人に旅行に来てもらう。旅行に来た人に地域の産品を購入してもらうなどを繰り返し、その地域への関心を高めファンになってもらう。そして、いずれは定住・移住につなげていく。地域の状況をデータを元に把握し、どの分野をどのように強めていくことが地域の魅力拡大につながるかを戦略的に考えていくことが重要です」と話す。

田村 裕二
  楽天グループ 地域創生事業
ふるさと納税事業部 ジェネラルマネージャー

富士吉田市では、「楽天ふるさと納税」で関係人口を増やすことを掲げ、寄付者に対するマーケティング活動として「楽天トラベル」を活用した。「楽天トラベル」の持つ、富士吉田市を訪れた人々のデータをもとに、同市の観光客となる候補の層を絞り、「思い立ったらすぐ行ける。東京から車で90分」というスローガンで首都圏の男性をイメージしたプロモーションを展開。「楽天トラベル」内の特設ページに「ちょっとディープな富士吉田」をテーマとする特設ページを開設した。2020年10月、2021年12月と2度のプロモーションを行い、予約数8万3905人、予約流通額は9億5000万円を超える金額となった。

「ふるさと納税、トラベル、ECといった楽天の様々な事業が、富士吉田市の掲げる将来像や戦略とうまくマッチし、相乗効果を生み出していると感じます」(萩原氏)。

また田村氏は、「富士吉田市の例では、ふるさと納税の利用者が多く、その寄付者に富士吉田に来ていただきファンになっていただくようなマーケティング活動を行いました。データをもとに考えていくことで、より的確で効率的な戦略を描くことができます。楽天は、その活動をサポートします」と話す。

楽天経済圏の活用が
地域経済活性化の起爆剤に

2つ目の、データとノウハウの提供によるDX促進については、70を超える楽天グループのサービスとデータ活用の知見を活かしている。データに基づく調査・マーケティング検討から、自治体職員向けのデジタル人材育成まで、幅広い分野で自治体の課題解決に向けた地域DXの推進をサポートする。

楽天グループは、1億を超える会員それぞれのIDと70を超えるサービスを有機的に結び付け、楽天経済圏を形成している。

「いち会員につき、1つのIDで管理しているため、複数のサービスを掛け合わせた消費行動の傾向を把握することができます。会員IDごとの行動変容を見ながら、調査、施策立案、効果検証まで一気通貫の事業推進が可能です」と田村氏は語る。

最後の、楽天エコシステムとの連携による地域課題解決においては、43の自治体との包括連携協定を主軸とし、楽天エコシステムとの連携を拡大。データに基づき地域住民のニーズにあったサービス、地域自治体ごとにカスタマイズした楽天サービスを包括的に提供している。デジタルデバイド解消と地域活性を同時に実現する「楽天シニア」、地域事業者と協業した「次世代教育」、キャッシュレスを活用した独自のポイント還元事業、ドローン技術を活用した地域課題ソリューションまで、サービス領域は幅広い。

2022年夏には、地域の自走をサポートする情報サイト「楽天 地域創生ポータル」も公開。

田村氏は「楽天だからこそのソリューションや自治体の導入事例など、楽天の提供する地域創生事業の紹介を発信していく予定です」と新サイトの展望を語った。

 

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楽天グループ株式会社
コマースカンパニー
地域創生事業 共創事業推進部

TEL : 050-5817-3600
MAIL : rev-co-innovation-info@mail.rakuten.com
URL : https://region-empowerment.rakuten.co.jp/

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