青森県おいらせ町が日本ストライカーのオートショックAED導入

青森県東南部に位置する上北郡おいらせ町は公共施設に配置するAED(自動体外式除細動器)の更新にあたり、自動で電気ショックを与える「オートショックAED」を採用した。決め手は「従来型より操作が容易で、他の救命対応に当たることができ、救助者の心理的負担も少なくできる」ことだったという。

おいらせ町財政管財課主任主査の川口優香子氏

2022年度から
講習会を毎年実施

心臓突然死の大半は心室細動の状態がしばらく続いてから完全に心停止に至る。心室細動とは心臓の筋肉がばらばらに動いてポンプ機能を失い、血液を送り出せない状態を指すが、電気ショックを与え、再び心筋全体を動かすことで本来のポンプの機能を回復させ血流を回復させることができる。電気ショックは従来、医師だけが行うことのできる治療だったが、2004年に厚生労働省から通知が出され、非医療従事者、つまり一般の人でもAEDを使って電気ショックを与えられるようになり、空港や駅、スポーツクラブ、学校、公共施設、企業などで設置が進んでいる。

おいらせ町では町内などでAEDの導入を進め、2014年以降は2~3年に1回、消防の協力を得て職員向けに講習会を開催するなどして救命対策を進めてきた。同時に、高齢者が、市のスポーツ施設で運動中に倒れたり、公民館で囲碁をしている最中に倒れたりするケースが実際に生じ、AEDが必要な場面が増えつつあったという。「施設の管理者だけでなく、施設の利用者も含め、誰もが救命に当たれるようにと考え、2022年度から講習会を毎年実施しています」と同町財政管財課主任主査の川口優香子氏は語る。

職員向けの講習会の様子

現場の声をもとに
オートショックAED導入

これまで町内や公共施設に設置するAEDは、その施設を担当している課でそれぞれ購入・更新をしていたが、今般、耐用年数を迎えるAEDが多くあったことから町の財政管財課で一括して購入することを決めた。その際、従来のセミオート型に加え、オートショック型を選択肢に加えることにした。

AEDは心電図を取り、データを自動で分析したうえで必要な時だけ電気ショックを行うように音声で指示を与えてくれる。セミオート型は指示に基づいて救助者がボタンを自分で押す必要があるが、オートショック型は機器が自動でショックを与える仕組みだ。国内では日本ストライカーが2021年7月に製造販売承認を取得して販売がスタートしたが、欧米の多くの国ではすでにオートショック型が浸透している。

おいらせ町では採用に当たって、公共施設などの担当者にヒアリングを実施し、セミオート型とオートショック型のどちらにするか検討を進めていった。その結果、各施設の状況によって切り分ける必要があると判断し、オートショック型は町が施設の管理を外部に委託し、少人数で運営している施設で導入することを決めた。

簡易な操作で
救助者の負担少なく

その理由について川口氏は「人が倒れた場合、AEDだけではなく胸骨圧迫(心臓マッサージ)が必要になりますが、限られた人数ですべてを行うことは容易ではありませんから、AEDについてはステップの少ないシンプルな機器が良いと考えました」と語る。

また、施設の管理・運営に携わっている人のなかにはシルバー人材センターに登録している高齢者が多いことも考慮した。

「オートショック型はショックボタンを自分で押さなくてもよいので電気ショックまでの救助者の動作が一つ減るだけでなく、今回導入したタイプはAEDのフタを開ければ自動的に電源が入ります。今まで使用していたAEDは、はじめにフタを開けて、その後に電源ボタンを押す必要があるタイプのAEDだったため、そこでの手間も一つ減りました。意識を失っている人への対処だけでも精神的に不安を感じている状況のなかで、いくつかの手順を減らせることは高齢者がAEDを扱う上での心理的ハードルを下げることにつながると思っています」

ボタンを押すことへの
ためらいをなくす

これまで町が開いた講習会では参加者から「電気ショックという行為を、自らボタンを押して行うことそのものに対して恐怖を覚える」という声も聞かれた。仮に講習会でうまくできたとしても、実際にその状況に直面したときは恐怖心が先に立ち、ボタンを押すことをためらう可能性もあることから「オートショック型に変えることで、そういったストレスを減らすことができれば」と語る。

講習会の頻度を増やし、今般オートショックAEDの導入を周知したことでより救命に対する意識が高まっていることを実感しているという川口氏。 「現場に直面して初めて感じる恐怖心や不安があり、それらを払しょくできる環境整備こそが救命意識の向上にも繋がります。今後も現場の声に耳を傾けながら、必要な職場、施設に対してはオートショック型への切り替えを進めていきたいと思っています」

「1人でも多くの命を救いたい」という思いが原動力――日本ストライカー

日本国内の心臓突然死は年間約6〜8万人に上る。AEDを使用した場合では、使用していない場合と比べて、1か月後の生存率救命率は約5.2倍となる()。ある調査では一般市民から「操作方法が不安」「ボタンを押すのに勇気がいる」といった声があがり、救助者の中には「本当に良かったのか」という不安からストレス障害を発症する事例もあった。

そういった背景をふまえて開発されたのがオートショックAEDだ。AEDの操作に関しては、救助者は電源を入れて(今回導入されたAEDはフタを開ければ自動で電源が入るタイプ)電極パッドを装着すればよく、あとは機器が自動でショックの必要性を判断して電気ショックを施す。音声ガイダンスや本体パネルのイラストガイドも操作の助けになる。また、電池残量などは機器のセルフチェックで確認するため保守管理の負担が軽く、今回導入したAEDは耐用・保証年数が8年と長いのでトータルコストを抑えられる。

日本ストライカー社では「1人でも多くの命を救うために、119番通報と胸骨圧迫を行うとともに、勇気をもってAEDを使用してほしい」と呼び掛けている。

※出典:総務省消防庁『令和4年版 救急救助の現況』
https://www.fdma.go.jp/publication/rescue/items/kkkg_r04_01_kyukyu.pdf

 

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日本ストライカー株式会社
東京都文京区後楽2-6-1
  飯田橋ファーストタワー
URL:https://stryker-aed.com

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