アプリによる道路通報 住民協働の輪を拡げて安心、快適な道路に

東京都は今年度から、スマートフォンアプリを活用した「道路通報システム」を都道全域で本格導入した。都民が道路の損傷や不具合に気づいた際に、その場でアプリを使って投稿し、都に通報できる。アプリを通じて住民協働の輪を拡げ、きめ細かい道路管理を行い、安心、快適な道路の提供を目指す。

東京都 建設局道路管理部 道路情報推進担当課長 菅谷正志氏(左)、モデレータをつとめた事業構想大学院大学 教授
(株)Psychic VR Lab取締役 COOの渡邊信彦氏

今年4月1日から島しょ部を
含む都道全域で本格導入

東京都が本格導入したスマートフォンアプリ「My City Report(MCR)」を活用した「道路通報システム」は、「大学研究者による事業提案制度」の提案を受けて導入された。この制度は都内の大学研究者による研究成果を活かし、都が行政課題を解決していくものだ。2018年度に東京大学の研究者による提案を基に、導入の検討が始まった。そして、2019~2021年度の試行期間を経て、今年4月1日から島しょ部を含む都道全域で本格導入されることになった。

「アプリで、例えば、歩道のがたつくブロックや消えた街灯などを見つけた際に写真を撮影して投稿すると、それが位置情報と共に都に伝わります。投稿者はその後の都の対応状況をアプリで確認することができます」。東京都建設局道路管理部道路情報推進担当課長の菅谷正志氏は、こう説明する。

東京都は、システムの試行期間に投稿できるエリアを順次拡大しながら、投稿の内容やシステムの使いやすさに関する検証を重ねた。試行の結果、有効性を確認できたことから本格導入に至った。試行には都内の11区市も参加した。また、4月1日からは、10区市もシステムを本格導入している。

「こまったレポート」や
「かいけつレポート」を投稿

東京都が管理する都道は約2200km。車道の点検は都の職員等が道路の巡回点検車に乗って行っている。また、歩道は職員が徒歩で点検し、それぞれ不具合などを見つけたら補修している。一方、都民からの通報や連絡は電話やメール、窓口で受け付けてきたが、今回の「道路通報システム」の導入によって、アプリでも通報できるようになった。

アプリでの投稿は24時間いつでも可能で、「こまったレポート(道路または標識)」と「かいけつレポート」という2種類のレポートを投稿できる。「こまったレポート」は、道路照明の不点灯や道路のひび割れ・穴、歩道タイルのがたつき、カーブミラーや道路標識の破損・不具合など「こまった」ことを見つけた際に投稿できる。一方、「かいけつレポート」は、投稿者が道路の「こまった」ことを自分たちで解決した場合に投稿できる。例えば、道路の落ち葉やゴミを、自分たちで清掃した場合などが想定されている。東京都は、「かいけつレポート」も積極的に活用していただき、住民協働の輪を拡げていきたいと考えている。

図 スマートフォンアプリ投稿手順

レポートを投稿するためには、まずスマートフォンでアプリをダウンロードし、「MCR」のアイコンをタッチしてアプリを開く。次に画面下にあるオレンジ色の「レポートマーク」をタッチすると地図画面になり、現在地がGPSにより「+マーク」で表示される。都道の不具合箇所を投稿するので、マークを都道の位置に合わせてから、「レポート分野選択へ進む」をタッチする。

次に「こまったレポート(道路)」、「こまったレポート(標識)」、「かいけつレポート」の3つから、いずれかを選択して投稿するレポートの分野を決める。

分野が決まったら、投稿する写真の登録を行う。 その場で写真を撮影する場合は画面に表示される「カメラボタン」をタッチして撮影する。既に保存済みの写真で投稿する場合は、画面の「アルバムボタン」を選択する。

最後に、レポートのタイトルや損傷・不具合の状況説明を記入して「投稿」をタッチすると、投稿が完了する。なお、緊急の対応が必要な「こまった」ことを見つけた場合は、レポートの種類を選択する際に表示される管理者の緊急連絡先に電話連絡することもできる。

投稿した内容は都が確認し、必要に応じて補修等の対応を行う。投稿に対する都の対応状況を確認する場合は、まず、アプリの「マイページ」のボタンを押す。すると、投稿した写真が表示されるため、その写真をタッチし、画面をスクロールして下方を表示する。補修が完了している場合には、それを示すコメントが表示される。その際、補修が完了した部分を、写真を見て確認することができる。

TwitterやYouTubeも使い
アプリの広報活動を展開

「道路通報システム」の試行期間における利用者は1633人で、投稿件数は試行に参加した区市道の投稿も含めて1605件、うち都道の投稿は398件だった(いずれも2022年2月末時点)。平日の昼間に対して夜間や土日・祝日の投稿が非常に多く、全体の約7割を占めた。また、投稿内容は車道や歩道に関するものが多く、中でも歩道に関する投稿は全体の約6割を占めていた。

利用者に対するアンケートへの回答では、「良い仕組みだ」という声が多く寄せられた。また、都民アンケートでは「スマートフォンで簡単に通報できる仕組みがあれば通報したいか」という質問に対し、約8割の方が「はい」と回答していた。都の職員からも、「電話での受付に対し、アプリによる投稿は写真と位置情報が提供されるので、状況の把握がスムーズに行える」と評価する声が上がっている。

多くの都民にアプリを活用してもらうため、都ではポスターの掲示やリーフレットの配置、動画の作成・配信のほか、都の広報誌やホームページ、TwitterやYouTubeなどによる広報活動を行っている。その際、QRコードを使ってアプリを簡単にダウンロードできるようにしたり、アプリの使用方法に関する説明文をわかりやすくするなどの工夫をしている。

「都は今後さらに多くの方々にアプリを利用していただき、住民協働の輪を拡げ、きめ細かい道路管理を行うことで、安全、安心、快適な道路を提供していきます」と菅谷氏は話した。