ペスカドーラ町田×エプソン販売 社会課題の解決へ、新共創モデルを構築

ペスカドーラ町田とエプソン販売によるプロスポーツチームをハブにした地域共創活動が、注目を集めている。取り組みの経緯や内容について、ペスカドーラ町田を運営するCASCAVEL FUTSAL CLUBEの関野社長とエプソン販売の橋本氏に、事業構想大学院大学の見山特任教授がインタビューを行った。

左より、事業構想大学院大学 特任教授 見山 謙一郎氏、
株式会社CASCAVEL FUTSAL CLUBE 取締役社長 関野 淳太氏、
エプソン販売株式会社 販売推進本部 副本部長 橋本 倫明氏

Fリーグ(日本フットサルリーグ)の強豪・ペスカドーラ町田とエプソン販売が、社会課題の解決に向け、環境・教育・健康をテーマにした共創プロジェクトをスタートした。スポンサーという資金を通じた応援ではなく、共創パートナーとして地域社会に貢献することにより双方の企業価値を向上させ、ファンや興行収入を増やすことにもつなげようとしており、プロスポーツチームと企業の新たな連携のあり方を提示している。

価値の交換モデルから
共創モデルへ転換

── ペスカドーラ町田とエプソン販売の共創プロジェクトがスタートした経緯を教えてください。

関野 ペスカドーラ町田は「競技面を通じてホームタウンに貢献する」ことを掲げ、活動を続けてきました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、観客の受け入れやフットサルスクールで学ぶ子どもたちへの講義もできなくなり、ホームタウンチームとしての存在意義や持続性を改めて考え直さざるを得なくなりました。そのような折、あるご縁からエプソン販売をご紹介いただき、初めは単刀直入にスポンサーをお願いしました。しかし、その後様々な議論を重ねる中で、ペスカドーラ町田が持っているコンテンツをハブにすることで、企業が地域で試みたい取り組みについて、ファン、地域住民、町田市をつなぎ合わせる役割を担えるのではという発想に至り、これを「PESCA LAB(ペスカラボ)」として提案しました。

橋本 エプソンは創業以来、様々な社会課題に目を向け行動を起こしてきました。グループの一員であるエプソン販売としても、北九州市で「KAMIKURU(カミクル)」という地域共創プロジェクトに参画しています。このプロジェクトは、地域の皆様や企業、学校と共創し、使い終わった紙からほとんど水を使わずに再生紙を作成できる当社のPaperLab(乾式オフィス製紙機)を活用して、紙資源を地域で循環させる取り組みになります。そこでペスカドーラ町田とも、スポーツと地域共創を組み合わせることで、新たな化学反応が起こせないかと考えました。「PESCA LAB」というキーワードを聞いた時に、多様な主体と関わることで当社の取り組みの可能性が広がるイメージを持つことができ、やってみようという機運が一気に醸成されました。

関野 エプソン販売から「スポンサーではなく、パートナーとして一緒に何かを創り出すことを通じて支援したい」というお話をいただいたことをきっかけに、資金を出すことで価値を交換する「応援型パートナー」に加えて、共創する「共感型パートナー」を募っていくという発想が生まれました。

紙のリサイクルの循環で
スポーツの応援を彩る

── 具体的には、どのような取り組みを進められていますか。

関野  「環境」「教育」「健康」という3つのテーマで共創することにしました。まずは「環境」の取り組みとして、ホームゲーム会場で配布する「マッチデープログラム」や「選手カード」を、エプソン販売の協力を得て再生紙で作成しました。これまでそれらは光沢紙などを使っていたので、変更によるファンの反応が心配でしたが、「味があっていい」という声を多くいただきました。また、シーズン途中にはコロナ禍のルールで制限されているファンとの交流ツールとして「ペスカハリセン」を考案し、選手がサインを、ファンがメッセージを書くといったコミュニケーションも生まれています。マッチデ―プログラムは試合終了後に回収し、新たな紙に生まれ変わらせています。こうした取り組みに対しても高い評価をいただいています。

コロナ禍の中で、選手とファンの交流ツールになった「ペスカハリセン」(左)。選手がサインを(中)、
ファンがメッセージを(右)書くなどのコミュニケーションが生まれた

── 「環境」というと、紙を減らしてデジタル化する取り組みばかりが表に出がちですが、紙の再利用によって心を届け合い、リサイクルの循環によって応援が彩られているのですね。エプソン販売にとって、この取り組みで得られたことは何ですか。

橋本 当社はこれまでも事業活動を通じて、「環境」をキーワードに様々な仕掛けに取り組んできました。ただ、それがどのような価値を生み出しているのかまでは手応えとして感じられないことが多かったのですが、今回一緒にやらせていただいたことで、来場者の反応が手に取るようにわかり、自信につながりました。その反応を見て、次にどれだけアップデートしていくかを考えることがモチベーションになっています。また、失敗をしても次にどうすればよいかを考えるスパイラル思考も根付きつつあります。

Fリーグで集客ナンバーワン
企業からの問い合わせも増加

── 「PESCA LAB」について、その後の反響はいかがですか。

関野 今般の取り組みも手伝って、Fリーグで集客ナンバーワンを達成することができ、他のスポーツ団体からの問い合わせも増えています。また、「ゼロカーボンシティ宣言」を行っている町田市からも、市の方針と親和性のある取り組みに評価をいただきました。「PESCA LAB」を知って、違う形で共創パートナーになりたいという企業からのお話もいただいています。

── 今後の構想や、意気込みについてお聞かせください。

関野 紙再生の取り組みは、エプソン販売からご提供いただいた再生紙を使っていますが、今後は町田市で排出される紙を使い、地産地消を実現したいと考えています。環境のテーマだけでなく、今後は教育、健康へと共創の活動を広げていきます。昨年の夏休みに、小学生が選手と一緒になって紙の再生をテーマにした講義を受け、自由研究に役立ててもらうプログラムも実施したのですが、あこがれの選手と一緒に学べたからこそ子どもたちの学びの意欲につながったようで、教育をテーマにした共創の可能性を感じています。

橋本 プロスポーツチームと共創して環境活動に取り組むという意外性に、大きな反響を得られたことに喜びを感じています。様々な主体と関わることで多様な取り組みができる手応えを得ることができました。今後もエプソンだけでなく、共創パートナーやお客様と共に、様々な社会課題の解決に関わっていきたいと考えています。

本共創活動の詳細はこちらでもご確認いただけます
https://www.epson.jp/corporate/action1/pescadola/

 

お問い合わせ

エプソン販売株式会社
https://www.epson.jp/

この記事に関するお問い合わせは以下のフォームより送信してください。