自治体のキャッシュレス・DX推進 データを政策に活かす未来を

自治体DXセミナー第2弾「DXによる業務プロセスの変革と経営改革」。三井住友カードからは、自治体でも昨今導入の進むキャッシュレス経費精算をテーマに、導入の目的、ポイント、デジタル化後の未来の組織イメージについて紹介した。

三井住友カードは、カードデータをマーケティングに生かすデータ分析支援サービス「Custella(カステラ)」や多様な決済をオールインワンにした決済プラットフォーム「stera(ステラ)」など、カード会社初となるサービスを展開し、新しいキャッシュレスを提案している。

「stera」は1台の端末ですべての決済手段に対応している

三井住友カードの東京営業第5部グループマネージャーの山口佳孝氏は「現金では追跡できない世の中の変化を、カードデータを見ることで掴むことができます」と話す。

山口 佳孝 三井住友カード 東京営業第五部
グループマネージャー

データが浮き彫りにする人の行動

例えば、コロナ禍のいま、カードデータからはECシフトやテイクアウトの増加、非接触決済の増加といった、接触を避ける消費者の行動変化を読み取ることができる。

「自治体・民間を問わず、こうした人々の変化を正確に捉え、対応策や施策を検討する必要性が増しています」。

こうした中、住民の利便性を上げ、業務効率化も実現する自治体のキャッシュレス導入、DX促進は、重要なテーマとなっている。

「キャッシュレスの導入により、サービス向上とコスト削減を実現するだけでなく、将来、データを政策に活用するきっかけとしてほしい」と山口氏。

自治体のキャッシュレス導入については、大きく、住民側へのサービスに対するキャッシュレスと、自治体内部の経費業務関連のキャッシュレスがある。住民側へのキャッシュレスについては、近年、その利便性からキャッシュレスを好む消費者が増え、政府もキャッシュレス推進をサポートする動きを見せている。こうした動きを背景に、税金のECによる決済が先行して普及。各種証明書発行等の窓口業務に関しても、住民の利便性向上や事務処理簡便化の観点から、徐々に導入が拡大している。

直近では福島市、姫路市で、住民票など各種証明書発行の際の手数料支払いに三井住友カードのキャッシュレス決済を導入。警視庁でも、管内警察署、運転免許本部等に同社のキャッシュレス決済とPOSレジ等を導入した。現在、決済ブランドの増加で様々な決済端末が増加しているが、決済プラットフォーム「stera」なら、カードも電子マネーもQRコードも一台で対応可能。また、安価なPOS機能アプリで、窓口申請業務のデジタル化を実現する。省スペースと使いやすさ、導入コスト面での優位性が、「stera」が選ばれる理由だ。

「キャッシュレス決済を導入すれば、DXは当然進みますが、将来的には、その先のカードデータを政策に活用するアクションに結び付けていただきたい」。

キャッシュレス決済に加え、同社のデータ分析支援サービス「Custella」を導入することで、例えば、性別年代別のキャッシュレス決済の増減変化を把握し、カード利用意識の弱い年代への利用促進など、アクションに結びつけていくこともできる。

経費のキャッシュレス化ニーズ

次に、自治体内でのキャッシュレス導入。新型コロナの蔓延で民間企業における経費のキャッシュレス化ニーズが高まっている。リモートワークに完全に切り替えられない理由の1つに、経費決済のデジタル化の未整備があるからだ。リモートを推進する自治体でも、同じ課題があると言える。

こうした中、民間企業では、法人カードや経費精算システムの引き合いが増えている。従来、エクセルで経費内容を作成し印鑑で承認を取ってきた経費精算を、ウェブで申請し承認する仕組みにすれば、コロナ禍後も業務効率化を図ることができる。それだけでは紙の請求書、入力の手間が削減できないため、法人カードをあわせて導入することで、経費精算業務全体の効率化を図っていく。民間企業が法人カードの導入を進める理由はリモート化以外にもある。前払いの発生する広告料に対し、カードの導入で振込作業の手間を削減する。クラウドサービスの提供企業が外資系であるため、外貨での請求に対しカード決済が便利、など。

一方で、自治体でも、複数の公用車のETCカードの請求の一本化や、口座振替による継続的な支払いに対するチェックの効率化を図るために法人カードを導入するケースが増えている。

法人カードを導入する大きな理由の1つにガバナンスの問題もある。経費精算のごまかし、社内規定違反は、意外と多く発生している。これは、民間企業に限ったことではないだろう。法人カードの導入は、経費の改ざん防止など、不正対策にも効果的だ。

自治体の法人カード決済を取り巻く環境としては、総務省は2015年12月に、地方公共団体の財務制度見直しに関する報告書を公表。そこには、「会計担当部署名義のカード決済(パーチェシングカード)の導入は特段問題ないが、個別職員(コーポレートカード)決済は不正防止の工夫が必要」とある。こうした状況下、三井住友カードでは現在、7つの自治体にパーチェシングカードを導入している。

経費精算の完全自動化を目指す

三井住友カードでは経費精算ベンダーであるコンカーと戦略的に業務提携し、カード決済と経費精算の連携で、経費精算の完全自動化を目指した取り組みを進めている。

図 経費精算業務の完全自動化

キャッシュレス導入により自動化を進めることで、経費精算業務を効率化できる

 

直近では、コンカーの経費精算・管理クラウド「Concur Expense」へのデータ連携機能を拡充。三井住友カードのコーポレートカードを使用して決済した際の経費項目のデータ連携項目を増やし、入力せず経費作業を自動化できる仕組みづくりを進める。

「将来的には、三井住友カードの法人カードとコンカー社の経費精算システムを導入すれば、自動的に経費精算が終了する世界を実現していきます。こうした、特定の経費精算ベンダーとの研究開発に近い取り組みは、カード会社としては初となります」。

民間企業では、経費精算の基本的なプロセスはほぼ管理できている。しかしデータの関連づけ、採算管理への活用までは結びついていない現状がある。

「企業や自治体の経費精算の未来の姿は、個人の場合と同様、やはりデータの活用にあります。同じような商品を購入しており、ボリュームディスカウントが適用される商品の特定や、事業採算に影響の出そうな上昇トレンドにあるコストを特定するなど、こうした事例をあぶりだし、経費精算の自動化を事業や施策に活かしていただきたいと考えます」。

 

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>三井住友カード株式会社
MAIL:tanakamas@smbc-card.com
TEL:03-6365-0552 榊原(さかきばら)
(平日10:00-17:00)

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