中小自治体の「スモールスタート」に伴走 マクニカのスマートシティ構築支援

公道における自動運転バスの実用化支援など、スマートモビリティ領域で豊富な実績を持つマクニカが、自治体のスマートシティ構築支援を本格化している。センサーによるデータ取得からデータ流通基盤づくり、サービス創出までを一気通貫で提供し、持続可能なまちづくりを支援する。

スマートモビリティで多数の実績

1972年に電子部品商社として産声を上げたマクニカ。半導体や電子デバイス、ネットワーク、サイバーセキュリティ商品などに技術的付加価値を加えて提供する「技術商社」というポジションを確立し、2021年度の売上高は7680億円に達する。

同社は創業50周年を迎えた昨年、新たなパーパスとして「変化の先頭に立ち、最先端のその先にある技と知を探索し、未来を描き“今”を創る。」と定めた。イノベーション戦略事業本部スマートシティ&モビリティ事業部長の可知剛氏は「弊社の特徴は従業員の3分の1がエンジニアであることです。最先端の技術を世界中から目利きして集め、付加価値を付け、お客様が活用しやすいように実装できることが強みです。この強みを、社会課題の解決にも積極的に活かそうという姿勢を新しいパーパスに込めました」と話す。

可知 剛 マクニカ イノベーション戦略事業本部
スマートシティ&モビリティ事業部長

イノベーション戦略事業本部では社会課題にリンクした様々な事業を開発し、半導体とネットワークに続く第3の経営の柱を生み出すことを目指している。安心安全で快適な暮らしを創るためのスマートシティ・スマートモビリティも事業テーマのひとつだ。

マクニカはスマートモビリティ領域で業界随一の実績を持つ(茨城県境町の自動運転バス)

マクニカは約10年前から自動車メーカーの自動運転車両の開発支援に取り組み、その知見を活かして自治体へのスマートモビリティサービスの実用化支援も進めてきた。代表的な事例が、茨城県境町における自動運転バスの社会実装だ。町は2020年11月から3台の自動運転バスを町内施設を接続する定時・定路線で運行しており、マクニカは自動運転車両・システムの提供や保守・メンテナンスなどの運行支援を行ってきた。これは、自治体が自動運転バスを公道で実用化した国内初の取り組みである。

「数十の自治体でスマートモビリティの実証を行ってきましたが、交通はあくまでも地域課題の一つに過ぎず、ヘルスケア・環境・産業・教育・防災などで幅広い課題を抱えています。解決のためのキーワードがスマートシティです。そこで私達もモビリティだけでなく、デジタルを活用したまちづくりに事業領域を広げています」

図 マクニカ・イノベーション戦略事業本部の事業テーマ

出典:マクニカ資料

地域への“実装”をサポート
中小自治体に最適な都市OSを提供

マクニカのスマートシティ構築支援の特徴のひとつが、サービスの提供だけに留まらないソフト面のサポートだ。「例えばスマートモビリティならば、自動運転バス用の保険やリースプログラムを外部企業と共同開発していますし、地元企業の活性化にも繋がるよう、バス会社や自動車整備工場へのメンテナンストレーニングの提供なども行っています」。技術商社として培った各界との豊富なネットワークを活かし、地域への“実装”を支援していく。

スマートシティの構築では、リアルタイムなまちのデータを収集するセンサーと、これらデータを流通させ分野横断的なデータ利活用を実現する都市OS(データ連携基盤)の整備が欠かせない。「弊社は実世界をサイバー空間に再現するセンシング技術から、取得したデータの都市OS上での連携、地域課題解決につながるサービスの創出までをトータルで支援できます」。マクニカでは、世界中の最先端の技術を活用して、用途に応じた最適なセンサーを構成・実装し、リアルタイムに変化する大容量かつ高精細な情報を欠損なく収集・伝送・蓄積することで、それぞれの地域の実情に合わせた有用なデータの流通を実現する。

都市OSは、東京電機大学発ベンチャーのエクスポリスと業務提携し、「Expolis Cloud Platform」を提供している。この都市OSは、データ流通をスモールスタートで始められるプラットフォームであることが特徴だ。モジュール式に機能を追加できる構造のため、まずは地域が求める機能のみを実装し、徐々に複合的な機能を拡張することで、様々なスケールの地域に適応できる。

都市OSは導入コストが高額になることも珍しくないが、安価で拡張性に優れたExpolis Cloud Platformは、特に中小規模の自治体に導入しやすいといえる。

全国各地の取り組み事例を紹介

現在マクニカは全国の様々な自治体と連携して、モビリティに限らず、ヘルスケアや教育、防災など幅広い領域でスマートシティ実現に向けたデータ利活用サービスの創出を進めている。

神奈川県では、自治体の支援のもと、湘南鎌倉総合病院や湘南ヘルスイノベーションパークと連携してヘルスケアMaaSの実証実験を進めている。病院への自動運転シャトルバス内でバイタルセンシング技術を用いて乗客(患者)の心拍数や血圧、体温などを計測すると共に、病院とリモート接続したデジタル問診を実施し、病院の生産性の向上に繋げるプロジェクトだ。

三重県四日市市では、中央通り賑わい創出社会実験における自動運転バスを活用した「まちなかモビリティ」実証実験に参画。マクニカは周遊する自動運転バスの実装、運行支援、効果検証を提供。さらに、複数車両を遠隔地からリアルタイムに監視することのできる遠隔運行管理システムを提供する。

Expolis Cloud Platformではデータ連携にとどまらず、アプリケーションにおいてもデータ利活用に向けた事例を増やしている。例えば、広島県呉市では地域から収集したデータを小中学校におけるSTEAM教育に役立てるユニークな試みを始めている。この他にも、社会インフラ保守点検の自動化や、衛星データを活用した防災および一次産業の効率化支援、健康管理デバイスと都市OSを接続したフレイル予防など、取り組み事例は数多い。

「多くの自治体は、スマートシティ構築に向けて何から着手して良いかわからない、具体的なサービスのアイデアに乏しい、技術的な知見が少なく実装方法が不透明だといった課題を抱えています。私達は自治体とワーキンググループを組織し、構想段階からスマートシティ化に伴走します。5~10年後の地域の未来に危機感を持って持続可能なまちづくりを目指す“志”ある自治体の支援に取り組んでいきます」

本連載では全4回に渡って、マクニカと自治体が連携したスマートシティ構築への取り組みを紹介し、これから日本に求められる持続可能なまちづくりの姿を明らかにしていく。

 

お問い合わせ先


株式会社マクニカ
スマートシティ&モビリティ事業部
メール:auto-solution@macnica.co.jp
URL:https://www.macnica.co.jp/business/maas/

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