四日市市事例に見る 中心市街地×次世代モビリティの可能性

三重県最大の人口を有する四日市市では、中心市街地のスマートシティ化を目指すため、「四日市スマートリージョン・コア実行計画」を策定して、次世代モビリティの実装やMaaS創出に産官学連携で取り組んでいる。四日市市とマクニカの担当者に取り組みを聞いた。

四日市市における自動運転バス実証実験の模様

中心市街地をスマート化

── 中心市街地のスマート化への取組について、その経緯や目標を教えてください。

中川 四日市市においては、バスタ整備と中央通り再編を進めています。近鉄四日市駅とJR四日市駅を繋ぐ「都市再生整備計画 リージョン・コアYOKKAICHI地区」では、居心地が良く歩きたくなる魅力的なまちなかの形成を目標としており、中央通り再編計画「ニワミチよっかいち中央通り再編基本計画」を策定し、移動だけでなく滞留・活動の機能を取り入れたウォーカブルなまちの整備を目指しています。

これまでも「四日市市総合計画」などでスマートシティ推進を掲げてきたところですが、中央通り再編やバスタ整備という新たな都市軸の整備を契機として、中心市街地において集中的にスマート化を推進するべく、2022年3月に「四日市スマートリージョン・コア実行計画」を策定しました。本計画では「都市と新たな賑わいの創出」を目標としています。

現在は、産学官で組織する四日市スマートリージョン・コア推進協議会を設置し、産官が保有するデータを集約し利活用するためのデータ連携基盤の整備を検討するデータプラットフォームワーキンググループ(WG)と、自動運転等の次世代モビリティの導入やMaaSの創出を目指すモビリティWGで具体的な検討を進めています。

── マクニカは四日市スマートリージョン・コア推進協議会でどのような役割を担うのでしょうか。

福田 弊社はモビリティWGの代表企業を務めており、ウォーカブル・ネットワークおよび交通結節拠点の整備を目的として、次世代モビリティの導入やMaaSの創出、バスタのスマート化、データの利活用等について、関連企業等と取り組みを進めています。すでに中央通りで実証を行っており、2020年度は自動運転乗用車を活用した技術実証を行い、2021年度はNAVYA社ARMAを活用した自動運転バスの技術実証と自社開発FMSを活用したモビリティ群管理を検証しました。そして2022年度は自動運転定常運行に向けたインフラ協調の取り組みや、市役所内に遠隔監視室を設けて遠隔監視を行うだけでなく、予約システムを活用した乗降者管理等、自動運転レベル4の社会実装を見据えて検証を進めています。

マクニカの遠隔運行管理システム

“楽しい移動”で市街地を活性化

── 次世代モビリティの実装およびMaaSの重要性をどのように捉えていますか。

藤田 四日市スマートリージョン・コア実行計画では、駅からバス停留所への乗り換えの円滑化を図ると共に、中央通り周辺の移動に適した次世代モビリティを導入し、公共交通の利用促進と市民が歩きやすい環境づくりを目指します。自動運転車両やパーソナルモビリティの実装は移動時間を楽しむことに繋がりますし、様々な移動手段をシームレスに繋ぐMaaSの構築も利便性向上のために大切だと考えています。

福田 中心市街地における次世代モビリティの導入には、2つの付加価値があると思います。1つ目は、移動手段の多様化です。年齢や属性、嗜好に合わせて好きな移動手段を選べることが、まちなかでの移動のあるべき姿だと思います。2つ目は“楽しい移動”の実現です。市民や観光客が「まちに来ると楽しい」と思える移動を提供すれば、賑わいの創出と回遊性の向上を実現できるはずです。例えば四日市市では、自動運転バスの車内に大型モニターを設置して周辺施設やイベントの案内を配信したり、公共交通を活用するとクーポンや地域通貨が獲得できる仕組みを検討しています。交通利便性が高く、歩きたくなるまちづくりに貢献できればと考えています。

都市マネジメントの高度化へ

── スマートシティ推進ではデータ流通・利活用の仕組みづくりも重要ですね。

福田 次世代モビリティの導入と共に、利便性向上だけではなく、地域の特長を生かした四日市版MaaSの創出にも取り組みます。具体的には、様々な移動手段と商業施設や飲食店、観光スポット等をつなぎ、検索・予約・決済を統合的に利用できる仕組みの提供を検討しています。MaaSを通じて利用者の行動や嗜好に関するデータを蓄積することで、潜在ニーズの発掘と新たなサービス創出の可能性があると考えています。

さらに、移動・交通に限らない幅広いデータを都市OS上に統合し分析することで、市民や来訪者の課題解決につながる新たなサービス創出も期待できます。そのため弊社もデータプラットフォームWGに参加し、サービス設計の議論を進めています。エネルギーやウェルネスなどに関する幅広いサービスが開発できると考えています。

中川 四日市スマートリージョン・コア実行計画では、ハードインフラとソフトインフラ、サービスの3つの取組分野を設定しています。ハードでは、中央通り再編に伴いAIカメラや環境センサーなどのセンシング機器を新たに整備します。ソフトではデータプラットフォームや3D都市モデルなどを整備する方針です。これらハード・ソフトのインフラを活用することで、民間・行政の新たなサービスが創出されることを期待しています。

スマートシティとは、計画、整備、管理・運営等といったマネジメントを高度化させることで地域が抱える課題を解決し、新たな価値を創出し続ける都市や地域のことです。都市のマネジメントを高度化させるためには、データ連携基盤であるデータプラットフォームの活用は必須であり、市が持つ行政のオープンデータだけでなく、民間事業者の皆様が持つ各種データとの連携を行っていく必要があります。

── 今後のスマートシティ構築に向けた意気込みをお聞かせください。

中川 人口減少・少子高齢化社会が直面する課題を解決するためには、スマートシティ化による都市マネジメントの高度化が必要です。マクニカをはじめとした専門的な知見を持つ企業・大学等と連携し、新たなサービスの創造に繋がるよう、着実に取り組んでいきます。/p>

福田 まずは四日市市中央通りにおける次世代モビリティの実装とMaaSの事業化を着実に推進します。また、弊社はモビリティ以外にもエネルギーやヘルスケアなどの分野でスマート化ソリューションを提供しており、四日市市でも幅広くスマート化に貢献したいと考えています。将来的には、四日市市での成果を市全域や三重県内の様々な自治体に対して提供し、県全域の課題解決への貢献を目指します。

左から、マクニカ スマートシティ&モビリティ事業部 スマートモビリティ事業推進部 部長 福田泰之氏、四日市市 政策推進部 政策推進監 中川哲哉氏、同 都市計画課 公共交通推進室 室長 藤田貴氏、同 都市計画課 課長 鈴木淳氏

 

お問い合わせ先


株式会社マクニカ
スマートシティ&モビリティ事業部
メール:auto-solution@macnica.co.jp
URL:https://www.macnica.co.jp/business/maas/

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