ITインフラ最適化に向けた課題と解決策 業務継続性の向上
自治体ではシステム毎の個別環境の増加によるさまざまな課題の解決に向けて、インフラの在り方の見直しが進んでいる。中長期でビジョンを描くことで全体最適化を実現し、また業務継続性の向上も同時に実現した滋賀県大津市と茨城県石岡市に導入の効果などについて聞いた。
滋賀県大津市では2016年度に、全ての基幹業務の運用を汎用機からオープン系システムへと移行した。しかし、当時はホスト処理と並行してマイナンバー制度のパッケージ導入で奔走していたことから、「システムごとの部分最適となり、基盤がサイロ化してしまいました」と大津市政策調整部情報システム課の小須田方氏は言う。
5年かけてIaaS基盤に移行
リソースの運用が柔軟に
また、システム所管課のハードウェア更新のタイミングで様々なベンダーのサーバが乱立し、バックアップ運用も煩雑になっていた。このような中、市では2019年3月に「デジタルイノベーション戦略」を策定し、柱の1つに「民間サービスの活用推進」を掲げた。
この方針に基づき、リソースを所有から利用に変換するための検討を開始。サーバ管理一覧を精査し、5年かけてIaaS基盤移行に必要となるリソースを把握した。また、自庁でのオンプレミス運用時に必要となるファシリティや電気代なども勘案してコストを比較し、主な基幹業務が移行する2024年度以降はIaaS基盤運用の方が安くなる試算となった。
その後は2024年度以降にメインをIaaS基盤にするため、2019年末頃からIaaS運用を開始した。また、IaaS運用に先立ち、本庁側に災害復旧用のDR(disaster recovery)基盤を調達して次期基幹業務サーバの開発環境として利用した。IaaSへの切り替えについては、IPアドレスを変更せずにV2V(Virtual to Virtual)で移行できる環境を整備した。
「IaaS基盤、DR基盤の両方をNutanix Cloud Platformで整備したことで、柔軟なサーバリソース運用が可能になりました。また、IaaS基盤側の障害時には本庁側DR基盤で『縮退運用』が可能になりました」と、小須田氏はその効果について語る。
<p2021年度には、全庁ネットワーク(WAN・LAN)を再構築のなかで、本庁第二別館の機器をキャリア収容局に移設したことで、第二別館の障害・停電時にも本庁や出先拠点で業務を継続できる構成にした。
使いやすいシンプルな画面
スキルによらず誰でも使える
茨城県石岡市では、2010年度から庁内サーバ機器類の統合や仮想化による情報基盤のモダナイゼーションに着手した。「庁内LGWAN(総合行政ネットワーク)系クライアントPCのシンクライアント化を実施しましたが、従来からの三層構成の仕組みだったため、障害発生時の業務継続性や将来的な拡張性に関して大きな課題がありました」と石岡市総務部情報政策課の太田貴之氏は言う。
そこで2018年度に、三層分離に伴うインターネット接続系機器の調達を実施する際は業務継続性・拡張性の担保を主な目的としてHCI(Hyper-Converged Infrastructure)を前提とすることとした。また、それ以降のLGWAN系ハイブリッドシンクライアント基盤等のシステム更改等でも、すべてHCIへの搭載を基本に整備し、信頼性に関してはバックアップサイトにDR用のノードを配置。それによって従来のようなLTO(linear tape-open)に書き出し、遠隔地で保管するといったバックアップを廃止できた。構築・運用に関しては、V2V移行が可能となり仮想基盤の構築にかかわる費用をかなり圧縮できた。
「画面に表示されるGUI(Graphical User Interface)がシンプルなので、ICTスキルが高くない職員でも拡張やDRサイトからの復旧がワンクリックで完了します。また、急遽必要になることもある試験的なサーバ環境が、すぐ構築できる点もメリットです」。太田氏は取り組みの効果について、こう語る。
複数のサイトを考慮した
BCPも可能な体制に
IaaS導入における大津市の最大の狙いは、「サイロ化した基盤の解消」だった。それをNutanix Cloud Plat formに集約したことで、柔軟なリソース運用が可能になったという。「特に職員の調達事務の負担がかなり軽減できたのが、大きなメリットだと感じます」と小須田氏は言う。
これに対し、石岡市のIaaS導入における一番の狙いは、「必要なITリソースをオンデマンドで迅速に準備でき、安定性や投資効果が高く、それをオンプレミスで実現できるIaaS環境」(太田氏)だった。
一方、「インフラの全体最適化」という観点では、石岡市の太田氏は「ある程度、長い時間軸での将来像や事業継続計画(BCP)なども含めたグランドデザインに踏み込んで最適化や統合をすべきと実感しています」と語る。この点について、大津市の小須田氏は「サーバリソースも全体で把握できるような環境を持ち、それによって統合的に運用管理できることが目指すべき形です」と言う。
BCPに関しては、大津市では従来のオンプレミス運用時は本庁舎第二別館だけでの対策だったが、Nutanix Cloud Platform導入によって複数のサイトを考慮した上でのBCPができる体制になったという。一方、石岡市では、1つのツールで統合管理が可能になったことが、BCPでは大きな利点になっているという。さらに、縮退運用ではあるものの、従来よりも幅広い業務や分野での事業継続が可能になった。
今後の方針について石岡市の太田氏は、「行政システムでは安定的な運用が第一と考え、サーバインフラなどでは信頼性、安定性を前提としていきます」と語る。さらに、庁内の働き方改革などにも柔軟に対応できるよう、パブリックとプライベート、今後出てくるガバメントの各クラウド環境をつなぐようなハイブリッドクラウド化も進める予定だ。
一方、大津市では現在、教育委員会や消防局など市の他機関は、それぞれでサーバやネットワークを調達している状態だ。このため、今後は「『オール大津』で基盤を統合」(小須田氏)することを目指し、担当職員の負担軽減や割り勘効果を生み出していく方針だ。
ニュータニックス・ジャパンの小澤周平氏は、自治体が必要としているのは、安心、安全、高い性能を維持したまま止まらない情報基盤を、職員の運用負担を軽減しながら実現することだと指摘する。「このために、ニュータニックスでは情報インフラの所有、利用の形態に関わらず、その時々の最適な基盤を柔軟に利用できる仕組み作りを進めています」と語った。
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