つくば市のスーパーシティ構想 先端技術とサービスで社会課題を克服

2022年3月10日に行われた国家戦略特別区域諮問会議において、つくば市はスーパーシティ型国家戦略特別区域として区域指定された。現在、つくば市にはどのような課題があり、スーパーシティとなることでそれらをどのように解決しようとしているのか。つくば市長の五十嵐立青氏に今後の構想を聞いた。

五十嵐 立青(つくば市長)

2030年頃までの実現を目指す
つくば市のスーパーシティ構想

――「つくばスーパーサイエンスシティ構想」ができるまでの経緯について、お聞かせください。

つくば市では、先端的な科学技術で市民が抱える課題を解決したいとの思いで、国際戦略総合特区、モビリティロボット実験特区、自立走行ロボットの公道走行を行うつくばチャレンジや、文科省の地域イノベーションエコシステムをはじめ多くの取組を、10年以上前から大学や研究機関と連携して進めてきました。

しかし、実証実験ではうまくいくものの、日常の中で市民が利用できるように社会実装まで進めることは、法令や制度の整備、ビジネス化などで大きな壁を感じていました。

こうした中、先端技術を迅速に社会実装し、地域課題を解決しつつ、丸ごと未来都市を創出することをコンセプトとしたスーパーシティ型国家戦略特区が創設されました。私はこれこそが必要な制度だと直感し、提案を決めました。大学や研究機関の科学的な知見を取り入れながら、企業や市民とともに先端的サービスを組成し、同時に規制改革を行いながら社会実装することで社会課題の克服に挑戦する、このヴィジョンを「つくばスーパーサイエンスシティ構想」と名付けました。

先端的サービスは、規制改革などの活用の目途が立ち、市民の合意が得られたものから実装していく予定で、構想は2030年頃までに実現することを目標としていますが、できる限り前倒しして進めていきたいと考えています。

――スーパーシティへ取り組む背景にはどのような地域課題がありますか。

つくば市は、大都市圏と地方都市における3つの問題から派生する課題を持っています。

図1 つくば市の課題

出典:つくば市

1つ目は、都市と郊外の生活利便性の格差です。つくば市は可住地が総面積の85%にあたる241.55km²、市内道路の総延長が約3700㎞、自動車の交通分担率が約60%です。生活に必要な諸機能が都市に集中し、郊外に住む高齢者は医療機関の受診や日用品の買物等に自動車を運転することが常態化しています。可住地の広さに対し、十分な公共交通を整備できないなどの理由から、都市と郊外とに生活利便性の格差が生じ、特に交通弱者の不利益は顕著となっています。

2つ目は、多文化共生の不備による多様な市民への対応の不足です。つくば市特有の多様性があり、人口約25万人のうち、約9400人の外国人が居住しています。さらに、市内の研究機関には約1万9000人が勤務し、大学や大学院には約1万8000人を超える学生が在学しています。つくばエクスプレス沿線の開発等により、子育て世代の転入も進み、毎年3500人程度人口が増加する一方、高齢化率55%を超える地区があるなど高齢化も進んでいます。しかし、行政には人的及び財政的なリソースに限りがあり、多様な市民のニーズに応えきれていません。

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