NTT西日本グループ 地域活性化と住民のくらし発展を両立

福井県・三国湊エリアで地域活性化と住民生活の向上を両立する「サステナブル・ツーリズム」に取り組むNTT西日本。地域企業と連携して、観光まちづくりを推進する新会社を設立し、ICTを活用した誘客や周遊サポートを強みに、宿泊・レストラン・アクティビティといった観光ビジネスを展開する。

北陸新幹線の延伸を機会に
観光ビジネスで三国湊を活性化

福井県坂井市三国町に位置する三国湊は、かつて北前船の寄港地として栄えた情緒ある湊町だ。廻船問屋の商家など、歴史や文化を感じる観光コンテンツが豊富に存在するものの、近年は都市部への人口流出に伴う空き家問題が発生している。また、宿泊施設や飲食店が少なく、宿泊を伴う滞在につながらないという課題も抱えている。そこでNTT西日本は観光を通じた三国湊の地域活性化に向けて、地場企業などとともに「Actibaseふくい」という観光まちづくりを行う会社を立ち上げ、観光まちづくりを推進している。

「三国湊は、以前から坂井市や地元まちづくり団体などが中心となって、空き家の保存・改修・活用に取り組むなど、元々課題認識の強い地域です。また、北陸新幹線の敦賀延伸を100年に一度のチャンスと捉え、『観光を軸とした施策によって、かつての賑わいを取り戻そう』という高い熱量を持っています。魅力的な観光コンテンツ、観光振興に向けた機会、地元の熱量という三拍子が揃った当該エリアで新たな観光サービスを展開し、本事業を起点として、地域の重層的な課題解決をめざすこととなりました」とNTT西日本福井支店長の高畠勝之氏は話す。

右から、NTT西日本福井支店長の高畠勝之氏、Actibaseふくい代表取締役社長の樋口佳久氏、
地域創生Coデザイン研究所担当部長の杉原薫子氏

三国湊観光まちづくりのコンセプトは、国内外の富裕層をメインターゲットに、地域と連携して「江戸・明治時代の湊町」の歴史・文化体験を提供し、三国湊エリアの原風景を蘇らせることにある。具体的には、ICTを活用したインバウンドの誘客と、旅行中の周遊サポートを実施する計画、観光流通プラットフォームや多言語翻訳、周遊レコメンドなどのサービス導入を検討している。

「事業の想定イメージとしては、まず観光を起点に、地域創生への思いとさまざまな分野で強みを持つ多様な企業と連携し、各社の知見を投じながら各種整備を進め、三国湊の魅力を最大化していきます。それと並行し、NTT西日本グループが10の重点分野を通じて地域社会のスマート化に貢献する『Smart 10x』のサービス群を通じ、各種ステークホルダーと連携しながら地域課題を発掘し解決することで、雇用創出や関係人口が拡大され、安心安全かつ豊かな暮らしが実現されることをめざします」(高畠氏)

地域活性化の当事者として
地域企業と共同で会社を設立

本事業では、10社に及ぶパートナー企業からの出資を得て、2022年10月にまちづくりの主体となる観光事業会社、Actibaseふくいを共同で設立した。高畠氏は「合意形成に向けて、NTT西日本が株式の大半を占める会社をつくるのではなく、パートナー各社にまちづくりのコンセプトに共鳴していただき、地域活性化の当事者として共に取り組んでいく体制を構築するためにお声掛けしました」と振り返る。Actibaseふくい代表取締役社長の樋口佳久氏は「出資していただく以上、我々の本気度や事業の成長性を理解していただくことも大切なので、高畠支店長と共に地域企業を訪問しました。今回出資いただいた企業は地域創生への課題意識を強くお持ちだったせいか、出資の決断は非常にスピーディーでした」と話す。

本事業では、Actibaseふくいは町家を利用した宿泊と、地域食材を活用したレストランを中心に、付加価値の高いアクティビティ、町並みや通りなどの関連環境整備まで、観光まちづくりの設計構築を担う。誘客プロモーションでは、NTTビジネスソリューションズにて実施。三国湊での優良事例やデータを提供することで、NTT西日本グループのSmart 10xにおけるスマートツーリズム&モビリティ分野のサービスの展開・拡大に貢献する考えだ。

Actibaseふくいでは町並みに合わせたNTT西日本局舎の外観整備(左)や、
福井県および三国湊の食材を活用した町家レストラン(右)の運営などを行う

「県内外を問わず、地域に入り込む企業がどんどん増えていくのが理想です。取り組みを見える化し発信することで、『うちにはこんなサービスがあるので、三国湊で実証してみたい』と名乗りを上げる企業が数多く出てくることを期待しています」と樋口氏。

一方、NTT西日本と共同事業を推進する地域創生Coデザイン研究所は、地域活性化に必要な課題探索から社会実装のサイクルを面的にサポートする。さらに、福井エリアで得られた観光を起点としたまちづくりの知見を、他地域に水平展開していくことも想定している。

「観光事業を成功させるためには、大きく2つのポイントがあります。1つは、観光客の行動データなどを収集し、周遊ルートの最適化やタビアト販売など、顧客接点を増やすこと。もう1つは、それらのデータを活かしたレベニューマネジメントなどの観光地経営の効率化、住民幸福度に関するKPIの設定や効果検証を通じて、地域全体のWell-Beingをめざしていくことです。すでに広島県廿日市市宮島地域などで、データを活用した観光地経営に取り組み中ですが、福井での手法を他地域にも展開することで、全国に観光まちづくりを広げていけたらと考えています」と地域創生Coデザイン研究所Coデザイン事業部担当部長の杉原薫子氏は話す。

データの活用で
持続可能な観光を推進

アフターコロナにおける観光のトレンドとして、「サステナブル・ツーリズム(持続可能な観光)」が注目される中、高畠氏は三国湊での取り組みを発信することで、環境意識の高い観光客の呼び込みにつなげたいと強調する。

「観光分野に留まらず、二次交通の充実、人材マッチングによる地域の担い手不足の問題、カーボンニュートラルへの対処など、地域経済と住民生活の向上に寄与するサービスを積極的に展開していきます」

また、三国湊だけでなく、福井県全域のまちづくりに寄与することも同社のめざすところだ。

「福井駅をはじめとする県内新幹線駅周辺の再開発が進んでいますが、駅周辺の経済活動を活性化するためにもデータを最大限に活用する必要があります。人流データなどから周辺エリアのポテンシャルを分析し、どんな施設ができるとどのように人流が変化するかを予測したり、混雑状況や売上を予測する技術も登場していますので、観光データを蓄積・分析していきながら、引き続き県全域の発展に力を注ぎたいと思います」と高畠氏は意気込みを語った。

 

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