自治体DX推進計画と京都府の取り組み 地域の最適解を探る

総務省が2020年12月に策定した「自治体DX推進計画」では、国が主導的な役割を果たしつつ、自治体全体のDX推進を図る方針が示された。京都府は、府内の市町村と共にICT利用を進め、常にその時々の最適な在り方を模索している。

2020年12月に閣議決定された国の「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」では、デジタル庁(仮称)設置の考え方が示された。そこでは地方共通のデジタル基盤に必要な、全国規模のクラウド移行に向けた標準化・共通化に関する企画、総合調整などが、その業務に含まれるとしている。

また、同日に閣議決定された「デジタル・ガバメント実行計画」では、国・地方デジタル化指針として、国・地方の情報システムの共通基盤となる「(仮称)Gov-Cloud」整備などが挙げられた。さらに地方公共団体におけるデジタル・ガバメントの推進として、国が支援しながら、自治体の業務システムの標準化・共通化を加速させることなどが盛り込まれた。

原田 智 京都府 CIO兼CISO情報政策統括監

国の主導で2026年3月
までに自治体のDXを推進

一方、総務省では2020年11月から、「地方自治体のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進に係る検討会」を開催。そこでの議論を踏まえ、昨年12月には「自治体デジタル・トランスフォーメーション推進計画」を策定した。この計画では、国が主導的な役割を果たしつつ、2026年3月までに、自治体全体で足並みを揃えてDX推進を図るとした。現在、検討会で具体的な手順がまとめられており、今年夏頃には手順書が提示される予定だ。

「自治体の情報システムについては現在、人的、財政的、システム的にも限界が差し迫っています。他方で自治体の業務は拡大し、迅速な対応を求められています。ECサイトのような便利なサービスを提供するには、情報基盤を整える必要がありますし、マイナンバーの利活用促進も必要になるでしょう」。

対応方針

•RPAの効果は、対象業務の規模(ロット)に比例して拡大
•RPAの効果は、対象業務の数に比例して拡大
•RPAは、対象者が広範な業務より、限定的な業務に好適
•RPAの効率化効果持続には、ドキュメントの整理が必要
•RPAは、5年スパンの費用対効果を検証して導入判断

RPAは導入、運用に相応のコストがかかる。費用対効果も勘案して、ツールを選択している
出典:京都府

 

総務省の検討会構成員で京都府CIO兼CISO情報政策統括監の原田智氏はこう語る。現在は自治体でも、スマートフォンによる様々な申請手続きが普及しつつある。一方、民間ではクレジットカードや携帯電話を使った手続きの簡素化や効率化が進んでいる。このような中、行政手続きのさらなるオンライン化や簡素化、効率化は避けられない課題となる見込みだ。

人口減少社会への対応で
不可欠なDX推進や業務改革

国内では少子高齢化や人口減少に伴い、今後、労働力の絶対量が不足していく見込みだ。そして自治体では従来の半分程度の職員数でも責務を果たせるよう、人工知能(AI)やロボティクスなどを活用し、スマート自治体に転換していくことが求められる。

「仮定の話として、職員を半減するには、住民サービス部門は3分の1も減らせないため、間接部門は3分の2削減しなければならない計算になります。他方で住民の方々の行政への期待値は、年々上昇しています。住民サービスを維持、向上し、人口減少社会に対応していくには、デジタル化の促進、業務改革が不可欠です」。

労働力不足に関しては、絶対量の不足より先に、望む能力やスキルを持った人材の確保が困難になることが予想される。「現在は、複雑な自治体の業務が、不明確なルールであっても高い水準で執行されています。しかし、それに必要な人材を確保できなくなると、業務改革を行い、誰がやっても生産性が向上する業務フローに転換していくことが必要でしょう」。

自治体のDX推進や業務システムの標準化・共通化ではセキュリティ対策も重要で、国はこれに関する様々な取り組みも提示している。例えば、今後はマイナンバー系の様々なシステムを統合する方針が示されているが、そこではインターネットでの外部とのやり取りが生じる。また、特定通信として、マイナンバー系統の情報のやり取りも必要になる。こうした中、今後はセキュリティを確実にした上でインターネットと接続することが、ますます重要になる見込みだ。

「DX時代のセキュリティ対策は、住民の方々から十全な対策を行っていると認められることが重要です。三層分離、境界型、ゼロトラスト各々に得手、不得手があるので、上手く組み合わせて、よりセキュリティを高めていく必要があるでしょう」。

2020年3月に「京都府スマート
社会推進計画」を策定

京都府では2004年から府内の市町村と共に、国が推進する自治体のDXと同様の趣旨で取り組みを続けてきた。そこではネットワーク基盤やシステムの共同化、それをベースにした業務の共同化が進められている。そしてネットワークの基盤上にクラウド基盤を用意し、対応している。昨年3月には、「京都府スマート社会推進計画」も策定した。

「RPA(Robotic Process Automation)」の導入は、闇雲に進めている訳ではありません。業務を自動化する際には、エクセルでできるものはエクセルで、マクロやVBA(VisualBasic for Applications)でできるものはそれらを使います。それらでは対応できないものについて、RPAを使用することとしています。RPA導入の試行を行った結果は十分満足できるものでしたが、それは事前にBPRをしっかり行ったからだと考えています」。

他方で、実際にRPAを導入する際には、一時的とはいえ現場職員の負担も生じることから、現場とのコンセンサスが難しいという課題もある。RPAが使われる業務としては、ネットワークのセグメント間でデータのやり取りするものが多い傾向がある。

「私たちはRPAを、しっかり費用対効果を検討した上で導入するべきだと考えています。RPAは、ロットや対象業務の数に比例して効果が拡大します。また、どちらかというと利用者が広範な業務よりも、限定的な業務の方が向いていると思います。さらにRPAは業務改革のツールであること、5年スパンで費用対効果を十分検証し、必要なものを入れていくという考え方が妥当だと思います」。

今後はクラウド活用によって、RPAの利活用は広がっていく見込みだ。RPAの導入は、クラウド利用に伴う現場の課題解決にもつながる。RPAでクラウド、ネット上のサービスとの連携を自動処理し、作業の手間を削減することができる。また、クラウドでは対応できない現場や地域のニーズ、時間が限られた要望への対応も可能になりそうだ。