スーパーシティの成否を握る2つの鍵・住民理解の形成と試されるトップの意志

大胆な規制改革により、まちをまるごと未来都市とするスーパーシティ構想。住民の暮らしや地域の文脈に寄り添いながら、いかに都市課題の解決を図るかがポイントだ。有識者会議の座長を務める竹中平蔵氏は、構想実現のカギは『首長のリーダーシップ』であると指摘する。

竹中 平蔵(東洋大学 教授、慶應義塾大学 名誉教授)

スーパーシティの狙い

コロナ問題で国内が暗い雰囲気に包まれる中、5月末にスーパーシティの法案が国会を通過した。正確には、国家戦略特区法の改正案が認められたのだ。一昨年の秋に提案し議論してきたものだが、先の通常国会でようやく成立に至った。

この法案は、第4次産業革命と言われる大きな経済社会の変革が進む中、より強力で包括的な規制緩和を進めるべく、従来の国家戦略特区を一層強化する内容のものだ。ここで言う第4次産産業革命とは、人工知能(AI)、ロボット、IoT、ビッグ・データ、シェアリング・エコノミーといった要素がさまざまな形で結びついて、経済社会を変えている現実を指す。しかし日本では、従来型の規制が岩盤のように存在し、変革のチャンスを阻害してきた。テクノロジー変化の速度があまりに早いため、利害関係者の意見を調整しながら制度改革や規制緩和を進めることは容易ではなくなっている。その間に、規制の緩いアメリカ、圧倒的な国家主導の中国などに比べて、日本は遅れをとってしまった。

日本における規制緩和の遅れを端的に示す指標がある。アメリカのヘリテージ財団のIndex of Economic Freedom(経済自由度指数)によれば、日本は世界で30位。ちなみにこの指標では、1位シンガポール、2位香港、3位ニュージーランド、17位アメリカ、103位中国とされている。日本は、アジアの中でも11位台湾、24位マレーシア、25位韓国より下位となっている(表)。こうした状況を踏まえ、規制緩和を進める仕組みとして国家戦略特区の制度が作られた。2013年に成立し、現状では東京や大阪など10カ所が指定されている。

表  2020年のIndex of Economic Freedom
(経済自由度指数)

出典:アメリカ・ヘリテージ財団

 

しかし第4次産業革命によって、経済はさらに新しい段階に入った。ビッグ・データと人工知能などを組み合わせて、都市空間全体の運営を行い、生活全体をスマートに行う時代に突入している。それを実現する仕組みとして、筆者らは2018年9月の未来投資会議においてスーパーシティの提案を行い、これを受けて同年12月の特区諮問会議において安倍総理から、「関係府省の知恵を集め、早急にスーパーシティの検討を進めるように」との指示が出された。従来の国家戦略特区の枠組みを、さらに強化せよという主旨だ。このスーパーシティが実現すれば、日本経済全体にとって大きな意義があるが、同時に地方創生の観点からも大きな効果が期待される。

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