政府の方針から読み解く 2020~2021年の日本社会の動き

国家予算の使い道の方針を示す「骨太の方針」は、翌年の社会の動きを予測するものとして重視されてきた。今回の新型コロナ危機の下では、人々の生命、生活、経済を守ることが国の最も重要な使命だ。「新しい日常」を未来につなげるために、社会のデジタル化を一挙に進める方針を示した。

2020年7月17日、「経済財政運営と改革の基本方針 2020」(骨太の方針2020)が閣議決定された。新型コロナウイルス感染症流行後の社会に向け、「新たな日常」を実現するための様々な政策を提案したものだ。マンネリ化や総花的であるとの批判もあるが、今年から来年にかけて、企業や起業家が新規事業を考える上ではヒントになる情報が多く盛り込まれている(カッコ内は関連記事のページ数)。

骨太の方針2020のポイント

 

デジタル化を一気に進める

骨太の方針2020の目玉は、社会のデジタル化の推進だ(→P20)。「新たな日常」構築の原動力として、デジタル化への集中投資・実装とその環境整備(デジタルニューディール)を掲げた。この1年を集中改革期間として、10年かかる変革を一気に進める方針だ。さらにその先には、多核連携型の国づくりと地域活性化で、東京一極集中の解消を目指す。

中でもデジタル・ガバメントの構築は、最優先政策課題となっている。コロナ危機下で、各種給付金の事務処理に大きな負荷が生じた。これを教訓に、総務省は地方自治体のシステムのクラウド化やデジタル人材不測の解消を中心としたICT化を進める。実施計画は年内に策定し、具体的な数値目標を設定して取組を進める。AI・RPA活用では、自治体の好事例を国が横展開していく予定だ。

さらに、行政手続きのオンライン化や、ワンストップ・ワンスオンリー化などを加速(→P24)。民間の人材・技術・知恵を取り入れること、特定の企業に依存せざるを得ない環境ではなくオープンアーキテクチャを活用することなどにも言及している。国と地方を通じたデジタル基盤は統一し、標準化する。特に、地方自治体の基幹系業務システムの統一・標準化はこの1年で集中的に取組を進める。このため、2020年内に標準を設ける対象事務の特定と工程化を行うという。

デジタル・ガバメントに欠かせないマイナンバーカードの抜本的改革の方針も示した。まず、個人の健康診断や病気・ケガの治療記録「パーソナルヘルスレコード(PHR)」を拡充するために、関係省庁が2021年に必要な法制上の対応を行う。そして、2022年を目途に、生涯にわたる健康データを、一覧性をもって提供できるよう取り組んでいく。さらに、PHRを医療研究などで活用する際の在り方についても検討する。これは、デジタルヘルスに関連した新サービスに取り組む企業には朗報といえそうだ。

マイナンバーカードの公的個人認証を障害者割引の適用に使えるようにすること、e-Taxなど税金関連の書類についても、自動入力できる情報を拡大すること、なども提言した。運転免許証との連携は、海外の事例を踏まえて手続やシステム連携の在り方を含め検討を始める。その他の免許や国家資格、教育などでもマイナンバー制度が活用できるように検討を始めるという(→P29)。

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