モビリティを起点にデータを蓄積、都市課題の解決を目指す

ガレージ・倉庫やホースの製造から、ホテル、太陽光発電と次々に新たな領域に挑戦する長野の老舗ベンチャー、カクイチ。高齢社会の課題である"モビリティ"を切り口にMaaS事業を立ち上げ、東御市と実証実験に取り組む。目指すは"高齢者がいきいきと元気に生きる社会"だ。

ビッグデータを活用した
低コスト社会の実現

明治19年創業の金物店から始まり、ガレージ・倉庫やホースの製造から、ホテル、太陽光発電へと事業を拡大したカクイチ(長野県長野市)。「やろう。だれもやらないことを」をスローガンに、常に時代の先を見据えてきたカクイチが、新たな事業の柱として考えているのが社会課題に切り込む「エネルギー」「農業・食・健康」「コミュニティ」という3分野だ。

日本は生産人口減少と高齢化が進み、10年後の2030年に65歳以上の高齢者が3人に1人になると予測されているが、カクイチの5代目社長、田中離有氏は「問題は生産人口減少にあるのではなく、社会コストが高止まりすることです」と言い切る。

田中 離有 カクイチ 代表取締役社長

「当社の主業は製造業ですが、すでに大量生産・大量消費は通用しなくなりました。これからはビッグデータを活用し、適切な量を適切なタイミングで提供する仕組みを作ることで、低コスト社会の実現を目指すことが重要だと考えています」

MaaS事業を立ち上げ
自治体の課題解決を実践

カクイチが本社を置く長野県は、高齢者比率が31.2%と日本の10年先を行く。高齢化先進エリアである長野県で、高齢者が元気に過ごせる低コスト社会、つまりはブラウンフィールド型(既存の街区)のスーパーシティを作ることができれば世界のモデルケースになるというのが田中氏の考えだ。

かつて地域の足であったバスは、高齢化や過疎化、マイカーの増加、運転手不足などにより減便・廃止が相次いでいる。さらに、運転免許証の返納問題も重なり、高齢者のモビリティ低下は避けられない状況にある。このままでは「働かない」「お金を使わない」「遊ばない」高齢者が増え、行くのは病院だけという未来は避けられないと田中氏は警鐘を鳴らす。

モビリティを提供すれば、高齢者に行動変容が起こる――。そう仮説を立てた田中氏は、これを検証すべく、東御市の協力を得て「小型コミュニティEVバスの実証実験」を10月からスタートさせる。本来、カクイチは東京オリンピックをサポートするEVバス(電動バス)のプロジェクトに参画していた。開催延期をきっかけに、プロジェクトを複数の交通手段を組み合わせて最適な移動手段を提供する「MaaS(マース)」事業へ転換させようと、東御市に実証実験を持ちかけたのだという。

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