2020年5月号

第2期・地方創生戦略 実行のポイント

スーパーシティ構想など新政策により地方創生を強化

片山 さつき(前内閣府特命担当大臣(地方創生担当)、参議院議員)

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2020年4月、第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」がスタートした。前地方創生・規制改革担当大臣で、銀行の5%ルール出資規制の緩和や、スーパーシティ法案提出などに精力的に取り組む、片山さつき参議院議員に話を聞いた。

前内閣府特命担当大臣(地方創生担当)参議院議員 片山 さつき氏

「まち・ひと・しごと創生総合戦略」第2期がスタート

2015年度から5か年計画で取組を進めてきた「まち・ひと・しごと創生総合戦略」は、2020年度に第2期をスタートした。第1期では、地方の中堅・中小企業への7000件超のプロフェッショナル人材のマッチング(成約)による雇用状況の改善、1000ヵ所を超える中間山間地域生活を支える「小さな拠点」の創出など、数々の地方創生の成果をあげた。

だが、その一方で、地方の人口減少と東京圏への人口の一極集中の是正までには至っていない。

第2期総合戦略では、東京一極集中の是正と持続的な活力ある地域社会の実現という、第1期の方向性は引き継ぎ、「多様な人材の活躍推進」、「Society5.0や地方創生SDGsなど新しい時代の流れを力にする」、という2つの横断的目標が追加された。(図1)

図1 第2期「総合戦略」の政策体系

出典:内閣官房、第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」

 

前内閣府特命担当大臣・地方創生担当として、第1期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を担当した片山さつき参議院議員は、「第1期では、東京圏への一極集中を是正し、活力ある地方を実現するため、地方への移住・定着の促進に力を入れてきました。しかし、移住はそう簡単に進むものではありません。第1期の成果とともに反省をいかし、第2期では地方移住の裾野を拡大して地方とのつながりを強化する施策を追加しています」と話し、第2期総合戦略のポイントとして、①関係人口の創出・拡大。②企業版ふるさと納税の拡充。③「スーパーシティ」構想を挙げた。

地方金融機関による
人材マッチング事業を支援

関係人口の創出・拡大の「関係人口」とは、その地域に行き来がある、あるいは地域内にルーツがあるなど、特定の地域に何らかの関わりがある人たちを指す。そうした人々とその地域とが、継続的に深くつながる事業を創出・発掘するなど、関係人口も意識した地域活性化に取り組む地方公共団体を支援していく。

また、全国のプロフェッショナル人材戦略拠点の体制を強化して、地域企業に対して、副業・兼業を含めた多様な形での人材マッチングを行うほか、受け入れ地域へのアドバイスや、都市部住民と地域ニーズのマッチングを行う中間支援組織の活動を支援する。

具体的には、プロフェッショナル人材戦略拠点の人員を500人体制に倍増。地方での副業・兼業等に必要な移動費を3年間で最大150万円支援。さらに、全国で1000の市町村に移住・関係人口総合センターを設置する。

「プロフェッショナル人材育成事業は、2019年8月時点で成約件数が7千件を超え、地域企業の方々に大変喜ばれています。第2期では、それをさらに進化させた先導的人材マッチングモデルとして、地元企業の経営課題や人材ニーズに詳しい地域金融機関に人材マッチング事業を行ってもらいます」。

マッチングが成約すると、成果に連動してインセンティブを与える仕組みで、10億円の予算がついた。

「すでに50以上の地域金融機関が名乗りをあげていて、現在行われている一次募集と、夏までに行われる二次募集で予算を全部使い切りそうなほど出足は好調です。地域の拠点となる企業に良い人材を入れることでどのような地方創生ができるのか。できあがったパターンを検証し"稼ぐ地域づくり"の実現に何が足りないのかを見るだけでも非常に意味のある取り組みだと思います」。(図2)

図2 先導的人材マッチングモデル事業にエントリーした地域金融機関(第1期)

出典:内閣府資料

 

一方、現在42都道府県、1140市町村が取り組んでいる移住・定着は、対象者や対象企業を拡大して促進を図る。主な変更点は次のとおりだ。(図3)

図3 地方への移住・定着の促進

出典:内閣官房、第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」

 

移住希望者は、東京23区に在住または通勤している期間が「直近10年間で通算5年以上」に。就業先企業は、これまでの「資本金10億円未満の企業」に加えて、「資本金概ね50億円までの企業で、知事が認める場合」は対象となる。

また、これまでの「本店所在地が東京圏外にある法人」に加え、「東京圏内に本店があっても、東京圏外の勤務地限定型社員」は対象となる。

企業版ふるさと納税
税額控除割合が最大9割に

片山氏が特に注力する事業に「スポーツ・健康まちづくり」がある。

「まちづくりは人がすべて。その点スポーツは人々の健康寿命を伸ばします。スポーツ事業が盛んになれば、スポーツ関連産業がスポーツGDPを引き上げて地域経済の活性化にも貢献するはずですから、まさに一石二鳥です」。

政府は、5年後に「スポーツ・健康まちづくり」に取り組む地方公共団体の割合を20%まで上げたいと考えている。今後は、地域スポーツコミッションの設置支援、総合型スポーツクラブの設置、公園などを活用した自然と体を動かすようなWalkable Cityの実現などを進める。また、スポーツ人材の育成にも力を入れる。(図4)

図4 スポーツ・健康まちづくり(概要)

出典:内閣官房、第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」

 

「世界大会で活躍するような優秀選手がすべて先生になれるわけではありません。30代半ばで燃え尽きてしまう人も少なくないと聞いています。それは非常にもったいないことです。そうした人たちに地域で次世代の選手を育てる指導者として活躍してもらいたいと考えています」。

この「スポーツ・健康まちづくり」の財源として期待されているのが企業版ふるさと納税だ。今年度(2020年度)から税額控除割合が現行の2倍の最大約9割に拡充するほか、寄付期間の制限も緩和、寄附額の下限が10万円に設定されるなど、参画へのハードルがかなり下がった。また、地方公共団体の手続きも個別事業の認定から包括的な認定に緩和された。さらに、国の交付金・補助金とも併用できるようになった。

「これまで企業版ふるさと納税は敷居が高いと思われていたようで、都道府県でもこの制度を使っていないところが6県ありますし、市区町村については1741ある中で、使っているのはわずか388件です。一方で、この制度を活用している自治体はとてもユニークな取組をしています」。

例えば、岐阜県各務原市は「博物館を核とした航空宇宙産業都市魅力向上事業」で、約850万円の寄付を収集。2018年3月に「岐阜かかみがはら航空宇宙博物館(空宙博/そらはく)」をリニューアルオープンした。

岡山県玉野市は造船業が基幹産業だが、市内に工業高校がないため、工業系企業への就職者不足が深刻化していた。そこでこの制度を利用して寄附金約8500万円を集め、私立高校に工業科を新設。地元企業の即戦力となる人材を育成している。

「宇宙博は国営ではないので、企業の貢献がないと現在のクオリティでのリニューアルは難しかったでしょう。オープン後は寄附企業に運営にも協力していただいていて、素晴らしい博物館になっています。玉野市は私立の商業高校に工業科を新設しました。こういう既成概念にとらわれない発想は地元の課題がわかっているからこそできることだと思います」。

玉野市の事例でも三井E&Sホールディングスが玉名事業所内に生徒のための実習施設を設置するなど、寄附企業との間でよい関係が生まれている。

企業版ふるさと納税と比べて利用が増えているのが、学生の地方大学への進学を推進し、東京圏への一極集中を是正する「地方大学・地域産業創生交付金」による「キラリと光る地方大学づくり」だ。今年度の予算は72.5億円。すでに走っている「『くすりのシリコンバレーTOYAMA』創造計画」(富山県)など7事業に、「神戸未来医療構想」(神戸市)と、「小型軽量電動化システムの研究開発による産業創生」(秋田県)が加わった。「この他にも走り出した事業があるので今年度10数件はいくでしょう。これができてきたということは、地方は確実に進歩していくということだと思います」。

新型コロナウイルス対策で現実化
「スーパーシティ」構想

「スーパーシティ」構想は、いつでもどこでも必要な移動や物流が可能、キャッシュレスで現金不要、行政手続きの効率化、在宅で医療や介護を受けられる、世界最先端の教育環境を整備、エネルギーや水をコミュニティ内で最適に管理するなど、ビッグデータの解析やAIを活用して10年後の未来社会の生活を加速実現する構想だ。住民参加のもとで住民目線のよりよい未来社会の実現をめざしている。

今年度は、どの都市でも最先端のイノベーションを随時取り込めるように、政府が核となる技術仕様を提案。事業予算3億円で各地域の開発を支援する。

都市間の相互連携を確保するため、基盤整備事業者には、API(システム間の接続仕様)公開ルールの順守を義務化。キャッシュレス、遠隔教育、医療・介護、モビリティなど、社会課題を解決する革新的サービスには地方創生推進交付金も活用して支援する。片山氏はこの構想への理解が進んでいる"手ごたえ"を感じるという。

「トヨタが発表したコネクティッド・シティプロジェクトのテレビCMのおかげもあって『スーパーシティ』の具体的なイメージが浸透してきたようです」。

政府は昨年8月に企業が構想に関連する知見や技術を展示するバーチャルブース「スーパーシティ・オープンラボ」を開設。3月9日時点で85団体が登録している。(図5)

図5 スーパーシティ・オープンラボ(企業マップ)

出典:内閣府地方創生推進事務局「スーパーシティ」構想について

 

また、昨年9月には、「スーパーシティ」構想のアイディアを募る「自治体アイディア公募」を実施。3月2日時点で53の地域・自治体がアイディアを提出している。(図6)

図6 「スーパーシティ」構想 自治体アイデア公募の結果

出典:内閣府地方創生推進事務局「スーパーシティ」構想について

 

「手を挙げた自治体が多かったことで、それまで『スーパーシティ』はわかりにくいと思っていた人たちにも理解しようとする動きが出てきました。未来社会の実現のためには多くの規制改革が必要なので、たしかにわかりにくいですし、一つ一つやっていると膨大な時間がかかります。今回手を挙げる自治体が多かったのは、『スーパーシティ』というワンパッケージにしたことが功を奏したのでしょう」。

さらに片山氏は、「今『スーパーシティ』構想には思わぬ追い風が吹いています」と言う。追い風とは新型コロナウイルス対策だ。接触感染を防ぐために、在宅での医療・介護サービスや、パソコン画面で服薬指導をして薬を宅配で送るサービスが行われ始めた。テレワークを実施する企業も多数出ており、教育分野でも自宅学習用アプリなどが急速に普及し始めている。

「昨年末に閣議決定したGIGAスクール構想の相談案件も自治体から入り始めています。予測できませんでしたが、新型コロナウイルスによって、これまで越えられないと思っていた規制の壁を越えて、Society5.0が現実化していると言えます。また、『スーパーシティ』が防災や防犯と相性が良いことはわかっていましたが、新型コロナウイルスによって、防疫という切り口も考える必要があることがわかりました。例えば、マスクや消毒液の在庫をIoTで管理して、そのデータをAPIに載せれば、必要なところに優先的に配布することができます。ウイルスに苦しんだ分、学ぶこともたくさんありました。今後はそれを検証して構想に役立てていきたいと思います」。

(取材日:2020年3月11日)

第2期の新政策の流れを理解する 人材の確保・育成に重点/海堀 安喜(内閣府 地方創生推進事務局長 内閣審議官)
https://www.projectdesign.jp/202005/point-of-localstrategy-2nd/007779.php

地銀の商社化で新事業に挑戦/石田 晋也(金融庁監督局 参事官)
https://www.projectdesign.jp/202005/point-of-localstrategy-2nd/007780.php

地域商社・企業の人材支援/田川 和幸(内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部 事務局次長)
https://www.projectdesign.jp/202005/point-of-localstrategy-2nd/007806.php

 

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