2020年5月号

第2期・地方創生戦略 実行のポイント

地域商社・企業の人材支援

田川 和幸(内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部 事務局次長)

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第2期地方創生戦略のポイントのひとつは、地域での民間の力を活かすことである。地域資源を活用した地域商社はその中核であり、地域金融機関には、地域商社への参画とともに、地域企業への専門人材のマッチングなど積極的な役割が期待される。内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部 事務局次長の田川和幸氏に話を聞いた。

内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部
事務局次長 田川 和幸 氏

地域商社の進化系
「地域総合商社」の時代へ

地域商社は、まだ広く知られていない地域の特産品や工芸品などを発掘して磨き上げ、域外への販路開拓などを行うところが多いが、栃木県のファーマーズ・フォレストの「道の駅うつのみやろまんちっく村」のように、ブランド化した特産品の販売に加えて、農場体験や宿泊施設などを組み合わせて、年間140万人が訪れる観光スポットに成長して、年間20億円を売り上げる事業体も出てきた。同社は最近、沖縄にも進出し、沖縄ハブ空港から海外販路開拓への挑戦を始めたという。

内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局次長の田川和幸氏は、「最近は観光や地域の自然環境と結びつけた地域全体のブランディングを行う地域商社が増えてきました。そのような意味で、地域商社は『地域総合商社』としての機能を持つようになったと言えるでしょう。なかでもファーマーズ・フォレストは、地域を超えていく新しい事例だと思います」と話し、特徴的な地域商社の事例を紹介してくれた。

岡山市の漂流岡山は、中山間地の農業活性化を流通・販売面で支援するコンパクト型地域商社だ。漂流岡山と農家が定額全量買い取り契約を結び、地元スーパーへの販売を前提にした需要計画に基づいて農家に農産物を生産してもらう仕組みを構築した。この仕組みによって、農家は安定して収入が得られるようになり、それが若い世代の就農にも結び付いている。

香川県三豊市の瀬戸内うどんカンパニーは、「瀬戸内」や「讃岐うどん」をキーワードに、「体験」「出会い」「滞在」をパッケージ化した体験型宿泊施設を運営する。「瀬戸内の自然の景観と、地域の食文化の讃岐うどんを学ぶということを上手に組み合わせた新しいモデルケースだと思います」と田川氏。海外メディアにもよく取り上げられ、海外からの集客を実現した。

人材面をはじめ、
地域商社の課題解決を支援

現在、地方創生交付金で支援を行っている地域商社は、全国146自治体に156ある。その多くは小さな道の駅を中心としたもので、商品開発力不足、マーケティングなどの担い手不足、人手不足といった課題を抱えている。

「まち・ひと・しごと創生本部では、地域商社の立ち上げ・商品開発・ブランディング・市場展開に対する支援を、地方創生交付金と各省の支援策を絡めながら行っています」と、田川氏。

フェーズごとの具体的な支援メニューは次のとおりだ。

地域商社の「組成・立ち上げ」では、地域商社事業に取り組む起業家や自治体を、地方創生給付金、起業支援金(わくわく地方生活実現パッケージ)、銀行の出資制限(5%ルール)緩和、日本政策金融公庫による融資などで支援。

「開発・ブランディング」では、地域資源を消費者目線で磨き上げる商品開発や販路開拓、設備投資、プロデューサー人材派遣などを、地域未来投資促進事業、JAPANブランド育成支援事業、プロフェッショナル人材事業などで支援する。

「市場展開」では、商品開発をはじめとするビジネスプロデュース、海外市場開拓などに対して、JAPANブランド育成支援等事業、農水省の輸出促進の取組などで支援している。

第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、地域金融機関による地域商社事業のさらなる促進に向けた積極的な関与を促している。すでに多くの地域銀行が地域商社を立ち上げているが、田川氏は、「その中で課題も見えてきました」と話す。銀行業務と地域商社の仕事はまったく違うため、職員が銀行から出向する等の形で地域商社事業に携わる場合、わからないことが多いという声が聞こえてきたのだ。

「地域商社における銀行の位置づけを見直し、彼らが持つ、金融機能・コンサルタント力・ネットワークをどのように活用していくのか、あらためて考える必要があると思っています」。

地域商社の類型

出典:内閣官房資料

 

マッチング後も企業に伴走
先導的人材マッチング事業

域外からの人材確保支援策に、「プロフェッショナル人材事業」と「先導的人材マッチング事業」がある。

「 プロフェッショナル人材事業」は、45道府県にプロフェッショナル人材拠点を置き、そこが中堅中小企業を中心とした地域企業から人材ニーズを切り出し、民間人材会社につなぎ人材マッチングを支援する事業。成約実績は8千件を超える(令和2年2月末時点)。拠点の人員は、地元企業や自治体のマネジメント経験者で、単純に企業から人材ニーズを聞き出すだけでなく、その企業の成長に本当に必要な人材はどのような人材なのか等、ニーズを明確化し、必要であればアドバイスもおこなっている。

第2期で注力するのが「先導的人材マッチング事業」だ。地域企業の経営幹部や、経営課題の解決に必要な「専門人材」をマッチングする。これまで道府県が行っていた役割について、地域金融機関等においても担うことに期待する。

プロフェッショナル人材事業では、マッチングした後、その企業に伴走し成長を支援し続けることに限界があった。そこで先導的人材マッチング事業では、企業の究極の伴走者である地域金融機関等にその役割を担ってもらう。

田川氏は、「地域企業のトップと普段から面識のある地域金融機関等なら、人材ニーズだけでなく、人材を起点にして、企業の成長への設備投資や事業継承なども含めたより深いニーズを掘り起こすことができるでしょう。

この事業で地域金融機関等の方々に人材面でも地域経済を強くしてもらいたいです」と語る。

その一方で田川氏は、地域企業の意識改革も必要だと感じている。「人材育成は投資です。優秀な人材は相応の対価を支払わなければ確保することが難しいと考えます。この事業には、地域金融機関等に地域企業の意識改革を進めていただきたいという背景もあります」。

さらに地域金融機関等にとっても、この事業が「企業の事業性評価をもとに伴走して企業の成長を支える」というビジネスモデルにシフトするきっかけになることを期待している。

「これらの支援策には東京一極集中を是正するという側面もありますが、それ以上に我々は地域の活力を向上させることをめざしています。この5年間で各地域での地方創生の取組はかなり進みましたが、成果が認知されるまでには時間がかかります。今後も地道に取り組んでいきたいと思います」。

 



スーパーシティ構想など新政策により地方創生を強化/片山 さつき(前内閣府特命担当大臣)
https://www.projectdesign.jp/202005/point-of-localstrategy-2nd/007723.php

第2期の新政策の流れを理解する 人材の確保・育成に重点/海堀 安喜(内閣府 地方創生推進事務局長 内閣審議官)
https://www.projectdesign.jp/202005/point-of-localstrategy-2nd/007779.php

地銀の商社化で新事業に挑戦/石田 晋也(金融庁監督局 参事官)
https://www.projectdesign.jp/202005/point-of-localstrategy-2nd/007780.php

 

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