2020年5月号

第2期・地方創生戦略 実行のポイント

地銀の商社化で新事業に挑戦

石田 晋也(金融庁監督局 参事官)

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地域商社は、地方創生政策において地場産品の販売促進や新たな販路開拓、商品開発、地域に根差した新事業の開発などで、主要な役割が期待されている。昨年10月の地銀の「5%ルール」緩和により、どのような変化が生まれるのだろうか。金融庁監督局 参事官の石田晋也氏に話を聞いた。

石田 晋也 金融庁監督局 参事官

「5%ルール」緩和で
銀行が商社機能も発揮

昨年10月、事業再生や地域活性化事業及び事業承継への銀行の議決権保有制限(5%ルール)などを見直す「銀行法施行規則」が改正された。この改正で、地域銀行は投資専門子会社を通じて「地域商社」に認可不要で40%未満までの出資が可能になった。また、銀行業高度化等会社については、認可は必要だが、100%まで直接出資が可能となった。(図)

図 5%ルールの緩和の概要

出典:金融庁資料

 

金融庁監督局 参事官の石田晋也氏は次のように話す。

「銀行は、優秀な人材と豊富な情報、幅広いネットワークを持っています。そうした資源を活用して、地域全体にもっと貢献してもらいたいという要望は何年も前からありました。これまで少しずつ規制緩和をしてきましたが、今回はさらに一歩踏み込み、銀行自身が子会社を作り、地域商社や事業再生事業など、これまで以上に地域活性化に貢献していただける内容になっています」。

昨年12月には、この改正を受けて山形銀行が地域商社事業を営む全国初の全額出資子会社「TRY(トライ)パートナーズ」を設立して話題になった。2019年末時点で、11の地域銀行が地域商社を設置した。「従来にはない、面白い取り組みをしている銀行も出てきました」と石田氏。山口銀行の「地域商社やまぐち」は、地酒などの名産品を"やまぐち三ツ星セレクション"としてブランド化している。「特産品の商品価値があがれば、それは融資元の銀行にとってもありがたいということでしょうね」。

現在の地域商社では、地域の特産品をブランド化する事業が主流だが、先程あげたTRYパートナーズは独自路線を走っている。山形大学と共同して、蓄電池・バイオ分野の新技術・新産業の育成を進めて、地域企業が製品化した完成品の販路開拓などを行っている。「銀行には自分の地域の得意分野や特色を生かして、今までなかったものを作ってもらいたいですね」。

北海道銀行の北海道総合商事もそうだ。ロシア地方政府と連携して、現地での温室野菜栽培の建設や栽培指導、現地需要に合う道産野菜の選定・輸出等を行っている。

金融検査マニュアル廃止
原点回帰「地域を育てる銀行」へ

銀行は預金を扱う性格上、厳格な規制のもとで事業を行ってきた。石田氏は言う。「1990年代から2000年代前半は、銀行が事業内容を見て地元企業を応援するというよりも、不良債権回収の可能性に重点をおかねばならない、そういう不幸な時代でした」。そこからさらに地域経済は疲弊し、今は地域銀行の存続が危ぶまれている。

「銀行には、地域を育てる銀行になってもらいたいと思っています。そうなることが、銀行の新たな活路にもなるはずです」。銀行による地方創生事業を活性化するため、金融庁はこの2月、厳格な資産査定基準「金融検査マニュアル」の廃止に踏み切った。

「これで銀行は担保のことばかり気にしなくてもよくなりました」と話す石田氏は、これまで機会があるごとに、担保ではなく事業性評価を議論して融資や人材などの企業支援を行うように強く銀行に訴えてきた。ある時、ベテラン行員からこんなことを言われたという。「昔の行員は自分が担当する企業を潰さないように、いろいろな手立てを尽くしていました」と。その話を聞いて、石田氏は東日本大震災の支援機構に出向していた時のことを思い出した。「経験豊富なベテラン行員の方々を見ていると、この会社は、時間はかかっても、やるべきことをやっていれば必ず芽は出ると経験的にわかっているのだなと感じることが何度もありました。ある意味"地域を育てる銀行"というのは原点回帰と言えるのかもしれません」。

最近はそうした目利きの行員を育成する動きが銀行に出てきた。

「これから銀行の事務処理はITやAIでどんどん機械化されていくでしょう。そうなると、機械にできない部分を担う人材を育てる必要があります。取引先のことがよくわかっていて、地域の産業に対する知識が豊富で、多様な情報を持つ。そうした人材を育成できない銀行は、いずれやっていけなくなるでしょうね」。

自治体と金融機関の連携で
地方創生は新局面へ

新しいムーブメントも出てきた。

「よんなな会」がそうだ。47都道府県の地方公務員と中央省庁で働く官僚をつなぎ、日本全体にネットワークを構築することを目的として、著名人の講演や相互交流のイベントを定期的に開催している。昨年1月に実施した関西初の「よんなな会」には、400人の公務員のほかに学生も100人参加。金融機関職員も7人参加した。

さらにそこから、この活動に金融機関の職員が加われば、地方創生の新しい力になるのではないかということで、新たに金融機関職員が集う「ちいきん会」が立ち上がった。よんなな会や銀行、信用金庫などが事務局として、昨年3月に、金融機関と公務員が出会うイベント「第1回 ちいきん会」を実施し220人が集まった。

「自治体も銀行も役職抜きで交流してネットワークを形成し、具体的な活動に結び付けようという集まりです。これが非常に活況で驚きました」と、石田氏。公務員や銀行には、社会や地域のための役に立ちたいという志を持っている人が多いのかもしれないと感じた。他地域の人や異業種の人との交流は、知見が広がり、地域課題の解決に有効なヒントも得られるはずだ。

「金融庁も今、いろいろな事業会社に人を出向させています。知見を広げなければ、自分の狭い知識や経験から施策を考えることになりますからね。そういう意味でもこうした会は有意義です。ぜひ、自治体と金融機関には協力体制をつくっていただき、地方創生の新しいチャレンジをしてもらいたいと思います」。

(取材日:2020年3月11日)

スーパーシティ構想など新政策により地方創生を強化/片山 さつき(前内閣府特命担当大臣)
https://www.projectdesign.jp/202005/point-of-localstrategy-2nd/007723.php

第2期の新政策の流れを理解する 人材の確保・育成に重点/海堀 安喜(内閣府 地方創生推進事務局長 内閣審議官)
https://www.projectdesign.jp/202005/point-of-localstrategy-2nd/007779.php

地域商社・企業の人材支援/田川 和幸(内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部 事務局次長)
https://www.projectdesign.jp/202005/point-of-localstrategy-2nd/007806.php

 

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