2019年4月号

スマートシティ 未来のまちづくり

地域密着のソリューション企業へ ICT活用で地域課題を解決

矢野 信二(NTT東日本 代表取締役副社長 ビジネスイノベーション本部長)

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電話や光ブロードバンドサービスの企業から、AIやIoTなど先端技術を活用した地域課題解決をサポートするソリューション企業へ――。自治体との連携を深めながら、地域密着ICT企業への転換を遂げているNTT東日本の取り組みについて、矢野信二副社長に話を聞いた。

聞き手・田中里沙 事業構想大学院大学 学長

 

NTT東日本 代表取締役副社長 ビジネスイノベーション本部長

地域に寄り添い、課題を解決

――NTT東日本は、ICTを活用した地域課題の解決に力を入れています。そうした取り組みの背景にある、NTT東日本の強みについてお聞かせください。

矢野 当社は、一般的に電話や光ブロードバンド、データ通信サービスを提供する会社というイメージがありますが、近年、そこから一歩踏み込んで、地域やお客さまの抱える様々な課題を解決するICTソリューション企業を目指した取り組みを強化しています。

昨今話題となっている「スマートシティ」の礎となる先進的なICT技術を地域に実装するためには、通信インフラやクラウド、センサー・カメラなどの機器といった情報基盤が不可欠ですが、NTT地域会社は、長年にわたり全国に張り巡らせた通信ネットワーク、何千もの通信ビルという資産を有しており、故障・災害の際には最寄りの保守拠点から迅速に現場に駆けつけ、対応します。このような設備、拠点を持っていることが大きな強みであると考えています。

もう1つの強みは、地域に根ざし様々な技術を持ったICT人材を有していることです。当社には29の支店があり、営業所や保守センタを含めると約250の拠点に人材を配置し、それぞれの地域でお世話になっています。

こうした各拠点に展開している設備・アセットや人材が、地域やお客さまの課題にきめ細かく応えるための基盤であり、当社ならではの強みだと思っています。

――地域課題の解決をサポートするにあたり、留意しているポイントはありますか。

矢野 地域はそれぞれ多様性を持っていて、その課題も多種多様です。したがって均一的なソリューションでは解決が困難だと考えています。

我々が大切だと考えている視点は、まず「このサービスを使ってください」というプロダクトアウト型ではなく、お客さまに寄り添って、どういう姿を目指すのかを共に検討することです。

次に、ICTの技術はネットワークや機器を含め多岐にわたっていますが、それらを最適に組み合わせて、課題解決に向けた構築をトータルで行うことがポイントだと思います。

第3に、構築後の運用がとりわけ重要です。環境の変化に応じて、システムのアップデートを適宜行ったり、使い方のサポート、そして故障時の一元対応などを専門家がきめ細かく行うといった点は、地域に拠点を持つ我々がお役に立てる領域だと考えています。

 

様々な領域で効率化・活性化

――具体的には、どのようなソリューションを提供されているのですか。

矢野 現在多くの分野でICTの導入が進んでおり、その結果、オフィス内に様々な機器やネットワークが混在し、社会全体でICT人材が不足していることとあいまって、運用が複雑で大変になっているとお聞きします。

そのようなお困りごとの対策として、当社は、当社・他社のサービス・機器を問わずお客さまになり代わって一元的にICTの運用を行う「ダイヤモンドサポート」サービスを昨年から導入しています。コールセンターでICT機器のコンサルティングをしながら、故障が起きた際の修理手配・取次ぎまで対応する点がご評価をいただいているところです。

スマートシティの具現化に向けては、まずは自治体の働き方改革、教育の情報化、防災や地域産業の活性化の領域でお役に立ちたいと考えています。

例えば、自治体職員の皆様の業務負担を軽減するためにR P A ( ロボティック・プロセス・オートメーション)等を活用した定型業務自動化のお手伝いをはじめました。

また、住民や顧客からの電話受付業務のアウトソースなどもお引き受けしています。自社で取り組んでいるDX(デジタルによる変革)などのノウハウ、知見を基にコールセンターの業務運営を担い、問い合わせが多い事項を文章化してAIで分析し、自動音声で答えたり、蓄積した情報を住民サービスの改善に活かしたりといった仕組みを導入することができます。

多くの自治体において財政が厳しくなる中、行政サービスを維持・向上するためには、自治体間の横連携、シェアリングすることもこれからの解決策だと考えています。当社は、複数自治体が当社データセンターで基盤ネットワークを共用し、情報システムを共同利用するプラットフォームを提供するなど、コスト効率化に向けた庁内システム・行政サービスの最適化もお手伝いしています。

――ICTは人材不足の解決においても、希望を与えますね。

矢野 今、私たちは地域の産業振興についても取り組んでいます。多くの地場企業が後継者難、人材不足に悩んでいますが、当社はIoTで生産現場を見える化したり、AIで不良品を自動識別したりするなどの取り組みを自治体や地域の皆様と一緒に行っています。機械ができることは機械に任せる。そうすれば、人は付加価値の高い業務に時間を割くことができ、また、データを機械に蓄積することでノウハウの共有や継承も可能になります。

IoTによるスマート化は、農業でも役立ちます。例えば福島県では、果樹の凍害・霜害を防ぐためにセンシングを活用した解決策を導入した事例があります。以前は人が定期的に巡回して霜が出ているかをチェックしていましたが、センサーを使って温度計測を自動化したところ、降霜時期に約60人を要していた人手が3人で済むようになりました。

今後は見える化の次のステップとして、自動で温度調節をしたり、肥料をまいたりといった制御の自動化を進めながら、データを活用してより品質の高い生産物を安定的に作ることで、若い世代の就農促進やサプライチェーンを通じた需給のマッチングなど新しい農業の実現につなげていければと考えています。

IoTセンシングの技術を活用し、農業の効率化、農作物の品質向上をサポートしている

産官学の連携にも力を入れる

――NTT東日本はいち早くスマートシティへの対応を進めていますが、今後、どういった取り組みに力を入れていきますか。

矢野 スマートシティでは、環境エネルギー、医療健康、運輸交通、産業振興、インフラ老朽化対策など広範囲で様々なレベルでの課題解決が含まれます。社会課題を次世代に先送りしないためにも、国や自治体、大学、民間企業や地元のプレイヤー等が連携し、スピード感を持って課題解決に取り組むことが望まれています。

すでに様々な事業者やプレイヤーにより多くのサービスが生まれており、それらを共通のプラットフォームを通じて提供できれば、迅速性も利便性も高まります。当社はその共通プラットフォームを様々な事業者の皆様と協力しながら構築し、安全なネットワークで地域の皆様がご利用しやすい環境作りに貢献したいと考えています。

私たちがスマートシティで最終的に目指すことの1つは、国連サミットで採択されたSDGs達成への貢献です。SDGsは17の目標で構成されていますが、例えば2つ目に掲げられている「飢餓をゼロに」や12番目の「食品ロスをなくす」などは前述の農業分野での取り組みによってその達成に貢献できると考えています。

「サスティナブルな地域」を実現するために、NTT東日本は「地域とともに歩むICTソリューション企業」として、地域の皆様を全力でサポートし、様々な課題解決に力を注いでいきます。

矢野信二・NTT東日本 代表取締役副社長と田中里沙・事業構想大学院大学 学長

 

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