レシート画像を10円で買い取る 高校生社長の狙いは「情報銀行」

仮想通貨や個人間決済サービスを手掛けるフィンテック企業として活動を開始したワンファイナンシャル。6月には、レシートを1枚10円で買い取るアプリを公開、利用者が殺到したためサービスを一時停止した。個人が自分の情報を預け、運用益を得る「情報銀行」の基盤を構築し、事業のさらなる拡大につなげる。

山内 奏人(ワンファイナンシャル CEO)

ワンファイナンシャルは、同社CEOの山内奏人氏が2016年5月に設立した企業だ。設立当初は「ウォルト」の社名で、ビットコイン・ウォレットを提供。ビットコインによるプリペイドカードへのチャージを可能にする連携を国内で初めて実現するという実績を残している。他にも個人間送金アプリなどフィンテック関連のサービスを立ち上げるなどし、金融ITの業界では注目されるスタートアップだった。

同社の事業が社会の大きな関心を集めたのは、2018年6月12日に公開したアプリ「ONE」によってだ。これは、アップル社のスマホで撮影したレシートの画像を1枚10円で買い取るサービス。財布の中の不用品が換金できると話題になり、利用者が殺到したため、15時間ほどでサービスを一時停止した。

画像買取アプリ「ONE」。現在はiPhoneにのみ対応

レシートから購入者にアプローチ

6月以降は、レシート買取のサービスのビジネスモデルを再構築しつつ、様々な品物や書類の画像を買い取るサービスを立ち上げている。名刺やヘアケア製品、高級ブランド時計、動物病院の診療明細などを撮影した画像を買い取るものだ。代金は、アプリ内のウォレットに振り込まれ、金融機関の口座から出金できる。

同事業では、将来的に買い手が付くことが期待される画像データは、ワンファイナンシャルで買い取っている。東京大学の学生の学生証や、電気・ガスの料金明細、給与明細などだ。電気料金の利用明細は、電力小売自由化で新規参入した企業には魅力的なデータであると考えられる。給与明細も、大量のデータを集積できれば、給与水準を把握する基礎になる。

他社とのコラボレーションでは、DMM AUTOや、ペット関連ビジネスのTYLなど数社で既に実績がある。2018年8月に発表したぴあデジタルコミュニケーションズ、鈴廣蒲鉾本店とのコラボレーションでは、ONEによりかまぼこ・練り物の購買履歴が記載されているレシートを買い取るとともに、かまぼこのPRサイトに誘導した。これと併せて、小田原市にある鈴廣のかまぼこ工場見学ツアーや、自宅でかまぼこを作るキットを抽選でプレゼントするキャンペーンを実施。かまぼこを購入している人に対象を絞ってアプローチできることもあり、多くの応募を集めたという。 

この連携事例から、観光地などの魅力発信にもONEが使えるという手応えを得られた。山内氏は、今後は自治体とのコラボレーションも進めていきたい考えだ。

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