災害廃棄物処理の経験を未来へ引き継ぐ 宮城県の事例に学ぶ

自然災害からの復旧・復興には、迅速な災害廃棄物の処理が重要だ。では、万一の場合に備えて自治体は何を準備しておくべきか。東日本大震災の実例を踏まえ、処理対策のポイントを聞いた。

長船 達也(宮城県循環型社会推進課 技術主幹)

岡山、広島、愛媛の3県に甚大な被害をもたらした西日本豪雨。発生した災害廃棄物の推計量は290万トンにも及ぶ。平成30年7月17日、宮城県では西日本豪雨の被災地である岡山県からの派遣要請を受け、東日本大震災でがれき処理を担当した県職員を中心とする5名の支援チームを派遣した。

災害時に発生した膨大な量の災害廃棄物の迅速かつ適切な処理は、早期復旧・復興に直結する。一方で災害廃棄物は一般廃棄物に位置づけられ、その処理は市町村が行うことが原則とされているが、東日本大震災のように市町村の行政機能が失われている状況下での迅速な処理は非常に困難だ。こうしたケースへの対策として、宮城県が行った沿岸部市町の災害廃棄物処理を改めて振り返ってみたい。

地方自治法「事務の委託」に
目して災害廃棄物を受託

宮城県では、東日本大震災の発災直後から市町村に代わって災害廃棄物の処理を行うべく、国と調整を進めていた。震災時、災害廃棄物処理の業務に携わった職員の1人、宮城県循環型社会推進課の長船達也氏は、当時を次のように語る。

「復旧・復興には早期の災害廃棄物の処理が不可欠でしたし、職員一同が現場を見た時から『なんとかしなければ』という一念でした。着目したのは地方自治法第252条の14『事務の委託』という項目です。これを活用し、県による災害廃棄物処理の代行を軸とした『災害廃棄物処理の基本方針』を平成23年3月28日に策定しました」。

ここで、一次仮置き場の管理を市町が行い、県は中間処理施設を兼ね備えた二次仮置き場を用意して集中的に処理を行うという方針を立てた。処理完了の目標は震災から3年後の平成26年3月。宮城県では基本方針の策定後、直ちに現地の状況確認を兼ねて被災沿岸15市町を回って処理代行利用の確認を取り、13市町から災害廃棄物の処理を受託(後に12市町の処理受託となった)。また、5月16日に出た環境省からの処理指針を受け、宮城県では7月に実行計画を策定。地域ブロック単位で処理する方針が正式に決定した。震災直後は宮城県廃棄物対策課が中心となって業務を遂行していたが、9月には長船氏が所属する環境系のほか、土木系や農林水産系の専門職等から人員を補充し、この問題を専門に担当する震災廃棄物対策課を新たに設置して業務を遂行した。

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