風化を許さず、教訓を胸に刻み、「創造的復興」へ!赤澤経済産業大臣インタビュー
(※本記事は経済産業省が運営するウェブメディア「METI Journal オンライン」に2026年4月7日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)
東日本大震災の発生から15年を迎えるのを機に、復興が進む福島の今を見つめ未来を展望してきた「15年、福島のいま」──。最終回は経済産業省の赤澤亮正大臣に、復興への思いや今後の政策展開への意気込みなどを聞いた。
「防災は私のライフワーク」
──東日本大震災から15年を迎えるに際しての所感、今後の決意をおうかがいします。
震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故から、15年が経ちました。最愛のご家族やご親族、ご友人を失われた皆様の悲しみと苦しみに思いを致しますと、今本当に胸が締め付けられる思いであり、哀惜の念に堪えません。ここに謹んで、亡くなられた皆様に、衷心より哀悼の誠を捧げるとともに、今もなお悲しみと闘っておられる皆様に心からお見舞いを申し上げます。
福島の復興と東京電力福島第一原子力発電所の安全かつ着実な廃炉は、経済産業省の最重要課題です。また、防災は私のライフワークであり、国家の生命線に関わる課題と考え、心血を注いで取り組んでまいりました。
なりわい再建が進み、新産業の芽も
経済産業大臣への着任後、すぐに福島県に足を運び、知事や被災自治体の首長の皆様とお会いをし、原子力災害についてお詫びを申し上げるとともに、福島復興に最後まで責任を持って取り組んでいく決意をお伝えしたところです。
15年を振り返ると、福島復興の取り組みは着実に進展していると受け止めています。廃炉については、燃料デブリの試験的取出しに2度成功し、大規模取出しに向けた工程が一部具体化されるなど、重要な前進が見られています。ALPS処理水の海洋放出も安全かつ着実に実施されており、モニタリング結果や国際原子力機関(IAEA)による評価から安全であることが確認されています。
加えて、避難指示解除の取り組みや、なりわい再建が進み、新産業の芽も着実に育っています。
安全性の向上に終わりはない
一方で、復興はいまだ途上です。経済産業省として、福島の現状や震災・事故の記憶と教訓、復興に向けた想いを後世へ継承し続ける姿勢をあらためて胸に刻み、次の段階へ進めます。
脱炭素電源の確保が国力を左右するという状況の中、エネルギーの安全保障の観点からも、原子力は再生可能エネルギーと同様、必要な電源です。柏崎刈羽原子力発電所6号機が再稼働したことは大きな節目ですが、原子力を利用する上で、「安全神話」に陥って悲惨な事故を1度起こしているという痛切な反省を、一時たりとも忘れてはいけません。引き続き、安全性の確保と地域の皆様のご理解を大前提に、常に緊張感を持って取り組んでまいります。
これまでの延長線ではなく、創造的復興に取り組む
──これからのキーワードは何でしょうか。
2026年4月からは、第3期復興・創生期間が始まります。次の5年間は、福島復興の実現に向けた正念場であり、これまでの取り組みの延長線ではなく、創造的復興を成し遂げていくことが求められます。このためには、大変優れた製造業の現場という我が国の強みを活かし、AIを使って現場のデータを活用することで、ピンチをチャンスに変える観点が重要です。これこそが創造的復興の姿と考えています。
具体的には、▽廃炉の安全かつ着実な実施 ▽ALPS処理水の海洋放出における安全確保、輸入規制への対応、風評対策、なりわい継続支援 ▽避難指示解除と生活機能の回復 ▽なりわい再建、再エネ・水素、ロボット・ドローン、宇宙等の新産業創出──を柱とし、官民で力を合わせて取り組みます。
特に、「ビックデータ×AI」の時代においては、廃炉や新産業創出を進めるにあたって、早期にAIの社会実装を目指して基盤データをしっかり作り上げていくための取り組みを進めることが重要であり、こうした取り組みを通じて福島をAIトランスフォーメーションの始まりの地としていきます。
また、震災や事故の記憶と現場で培われた知恵を次世代へ継承する取り組みを強化し、省内外の若手が「現場知」と政策の実装力を磨ける機会も増やしていきます。
国としても前面に立って廃炉に対応
──東京電力福島第一原発の廃炉の取り組みはまだまだ長い時間を要します。どのように進めますか。
東京電力福島第一原子力発電所の廃炉は世界にも前例のない困難な取り組みです。今後、燃料デブリの取り出しなど、廃炉の根幹となる最も困難な作業段階に入っていく中、周辺環境や現場作業員の安全を最優先に、技術開発への支援や地元企業の参入拡大など、長期にわたる廃炉作業において、「地域との共生」に向けた取り組みを進めます。
特に、技術開発への支援については、今年度から、フィジカルAIを搭載したロボットの廃炉現場への導入に向けた実証を開始する予定です。こうした廃炉ロボットなどを現場に実装することは、日本の強みである現場力を活かして、「福島から世界へ」を合い言葉に、世界をリードしていくことに繋がると考えています。
こうした視点も持ちながら、引き続き、東京電力には高い緊張感を持って安全かつ着実に廃炉作業に取り組むよう求めつつ、国としても前面に立って対応してまいります。
地域に持続的な稼ぐ力を根付かせる
──次の5年間で被災者の帰還や暮らしの再建、「福島イノベーション・コースト構想」をどのように進めますか。
2020年代をかけて、帰還の意向がある全ての皆様が安全・安心に戻れる環境を整えることとしています。除染・インフラ整備を始めとした生活機能の再構築に向け、関係機関と連携して取り組んでまいります。なりわいの再建を土台に、地域に持続的な稼ぐ力を根付かせます。現場主義で対話を重ね、政策と実装を結び付ける進め方を徹底してまいります。
福島を「実証の聖地」として磨く
あわせて、福島イノベーション・コースト構想を産業復興の柱と位置付け、福島国際研究教育機構(F-REI)とも連携しながら、福島を「実証の聖地」として磨き、「廃炉」「ロボットとドローン」「エネルギーと環境とリサイクル」「農林水産業」「医療関連」「航空宇宙」の六つの重点分野を軸に取り組みを加速します。
私の持論ですが、「ビッグデータ×AI」の時代において、超高齢社会で災害大国であるという我が国の特徴をチャンスとして捉え、介護サービスを提供するロボットや災害現場から人を探し出し救助するロボット、さらには高線量の現場を動き回り、デブリを採取するヘビ型ロボットなどを開発し、我が国が世界で最初に実装していきます。これは、国民に安心と安全を提供するのみならず、我が国の経済成長の推進力になると考えています。
現場主義の対話を重ね、政策と実装をつなぐ、それが次の5年の進め方です。
全員参加で進めれば、復興は必ず加速できる
──経済産業省では現在、「全省的プロジェクト」を進めていますが、このプロジェクトにかける大臣の意気込みと、期待を教えてください。
このプロジェクトは、福島復興は経産省の最重要課題であり、これを踏まえ、省を挙げて、局横断で福島復興に一層力を入れて取り組むべく昨年度から新たに始めたものです。
各部局の強みを生かし、災害ロボティクス、知財戦略検討、ドローンの社会実装や、福島を軸とした東北全体での産業復興など、福島をひいては日本全国をよくするために自分たちに何ができるかを、我が事として形にしていきます。
局の壁を越え、各部局が自らの強みを持ち寄って、福島の現場で成果に結び付けることを期待します。加えて、経済産業省の政策立案の過程において、自然と福島の強みが組み込まれるような意識も醸成していきたいと思います。
例えば、製造産業局が中心となり、ユーザーである消防庁やF-REIと連携し、現場で真に求められるニーズに沿って災害ロボの開発を推進しています。
前号まで(Vol1・Vol2)で、こうした横断プロジェクトの既に形になっている取り組みと現在進行形の挑戦を具体的にご紹介させていただきました。全員参加で進めれば、復興は必ず加速できると確信しています。
経済産業省の玄関には「その提案は世界に誇れるか」「その取組は国民に誇れるか」「その行動は自分に誇れるか」と掲げられています。今後とも、初志貫徹し、職員一人ひとりが福島復興にどう貢献できるかを絶えず自問し、その誇れる提案・取り組み・行動を福島の地から生み出していく、このような姿勢で日々職務にあたってもらいたいと考えています。
正確な情報に触れ、現地を訪れて
──最後に、次世代を担う読者・企業・研究者へのメッセージをお願いします。
福島の歩みは確かな前進を続けています。廃炉・避難指示解除・なりわい再建・新産業創出を一つずつ積み上げてきた成果を土台に、創造的復興へ踏み出します。まずは正確な情報に触れてください。そして現地を訪れてみてください。
その上で、福島イノベーション・コースト構想の担い手となる、企業や研究者の皆さまには、福島を実装のフィールドとして選び、そこで連携して新たなイノベーションを創出し、日本全国に広げていくことで、福島をイノベーションの先駆けの地としていただきたい。若い世代には、現場で学び、アイデアを形にする経験を積んでいただきたい。
「挑戦するなら/腕を磨くなら/仲間を探すなら、福島浜通り」。そういった価値観を広げ、そのための環境を整えるためにも、国が前面に立ち、最後まで責任を果たす。この約束の下、皆さまと、福島ひいては日本の未来を力強く築いていきます。
教訓忘れず、事前防災に万全を
そしてこの機会に、是非皆様と共有したいと思いますが、災害時、人の心理が避難行動に影響することが知られています。平時には「まだ大丈夫」とストレスを和らげる正常性バイアスが、地震や津波などの災害時には、「自分は大丈夫」と致命的な判断の遅れを招きます。
天災は忘れる間もなくやってくるものであり、事前防災が重要です。皆様におかれましては、震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故の経験と教訓を忘れることなく、社員や家族の命を守るために、正常性バイアスに打ち勝ち、事前防災に万全を期していただきたいと思います。政府としてもしっかりと取り組んでまいります。
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