運送原価の上昇実感9割、転嫁は3割弱

運送管理システム「ロジックス」を提供するアセンド株式会社(東京都新宿区、代表取締役社長・日下瑞貴)は、5社共同で実施した「運送会社の原価活用・コスト上昇対応に関する実態調査」の分析レポートを公開した。有効回答は198社。直近1年で運送原価が5%以上上がったと感じる事業者は89.9%に達し、10%以上と答えた事業者も50.5%を占めた。ところが、その上昇分を運賃へ半分以上反映できた事業者は54社、全体の27.3%にとどまる。

原価計算が交渉の武器になっていない

背景にあるのは、原価を計算していても運賃交渉に結び付いていないという業界共通の課題である。公益社団法人全日本トラック協会が2024年3月にまとめた「経営分析報告書」(令和4年度決算版)では、集計対象2,532者の貨物運送事業の営業損益率が0.0%だった。

一方、国土交通省物流・自動車局が2025年7月11日に公表した「標準的運賃に係る実態調査結果」(令和6年度)によると、原価計算を実施した事業者は84%に上る。それでも中小企業庁の「価格交渉促進月間(2025年9月)フォローアップ調査結果」では、発注側の業種別に集計した価格転嫁率でトラック運送が30業種中の最下位となり、34.7%と全体平均の53.5%を大きく下回った。計算はしているのに、交渉の武器になっていない。

今回の調査は、その落差がどこで生まれるのかを掘り下げたものである。まず浮かび上がったのは、原価を集める段階と使う段階の差だった。原価を全社的に記録・集計まで進めている事業者は60.1%に達する一方、集めた数字を分析や改善につなげられている事業者は27.3%と、およそ4社に1社にとどまる。数字をためること自体は多くの会社ができており、つまずきはその先の工程にある。

規模ではなく粒度と活用が分ける

では、価格転嫁の成否は何で決まるのか。運賃に半分以上反映できた事業者の割合を車両台数別に見ると22.0~32.4%の範囲に収まり、最も高い層と最も低い層の差は10.4ポイントだった。これに対し、原価管理がどこまで進んでいるかで分けると差は21.0ポイントと約2倍に広がり、原価を活用できている層だけが40.7%と突出した。会社の大きさよりも、原価をどう扱っているかが効いている。

分析の細かさでも同じ傾向が出た。原価計算をコース別・案件別まで行う事業者は35.2%が半分以上を反映できたのに対し、全社単位や営業所単位にとどまる事業者は16.1%だった。差は2倍以上で、荷主やコースごとに採算をつかんでいることが交渉の裏づけになっている。

取り組みの幅にも違いが表れた。価格転嫁に向けた取り組みで最も多いのは運賃交渉で、実施率は91.4%、最も効果が出た施策としても63.7%が挙げた。そのうえで、原価を活用できている層は運賃交渉を含めて平均3.96個の施策を組み合わせており、記録にとどまる層の平均2.6個のおよそ1.5倍にあたる。原価が見えるほど交渉以外の選択肢も増えるという関係がうかがえる。

調査はアセンド株式会社、株式会社船井総研サプライチェーンコンサルティング、株式会社シーアールイー、都築電気株式会社、株式会社Azoopの5社が主体となった。実運行を行うトラック運送事業者に属する方を対象に、Googleフォームを使ったWebアンケートで実施し、回答期間は2026年6月9日から6月30日まで、有効回答は198社である。