貝印 嚥下しやすい「まとまりマッシュ食」の自動調理器で医療福祉施設と実証実験

刃物メーカーの貝印は2026年8月7日、嚥下機能に配慮した食事形態「まとまりマッシュ食」を調理する自動調理器の試作品を開発し、9月から医療福祉施設で実証実験を開始すると発表した。ふじのくに医療城下町推進機構(ファルマバレーセンター)、小羊学園「つばさ静岡」、アポロメーカーと連携して進める。

「まとまりマッシュ食」は、舌や歯ぐきで押しつぶせる柔らかさを保ちながら、粒感を残しつつ食材がバラバラにならないようまとめ、飲み込みやすくした食事形態を指す。従来、嚥下機能が低下した人向けのペースト食は見た目や食感、味わいの面で課題があり、食事そのものを楽しみにくいとの指摘があった。咀嚼機能を使わない状態が続くことによる口腔・嚥下機能への影響を懸念する声もあったという。

開発の契機となったのは、つばさ静岡の医務部長を務める淺野一恵医師からの相談だった。同施設では手作業での調理が続き現場の負担が大きく、より簡便に調理できる機器が求められており、ファルマバレーセンターの仲介で貝印が開発に参画した。試作機には、貝印のコードレスブレンダー「SELECT100」の電動回転技術を応用し、毎分約1万4000回転のモーターを搭載。刃物製造で培った刃の設計技術と組み合わせ、トロミ剤や水を加えずに食材をまとめられる点が特徴で、素材本来の風味を保つことができる。

「SELECT100®」のコードレスブレンダー

実証実験は9月より、小児系施設や高齢者向け施設を含む複数の医療・福祉施設で実施する。調理品質や操作性、実用性を検証するほか、利用者の食べやすさや満足度、調理担当者の負担も調査し、メニューや運用方法の検討を進める。同プロジェクトは静岡県産業振興財団の「令和7年度 医療機器産業基盤強化推進事業助成金」に採択されている。淺野医師は「食事は栄養を摂るためだけのものではなく、日々の楽しみや生活の質にも関わる大切な時間」とし、簡便な調理の実現が食事の選択肢を広げる一助になるとの見方を示した。

貝印は今後、日本摂食嚥下リハビリテーション学会などでの発表・展示も検討。さらに医療・介護現場から在宅介護までを視野に、新たな食支援の社会実装を目指すとしている。