オアシスのチケットが高騰した理由 ダイナミック・プライシングと転売屋、追加販売
(※本記事は『THE CONVERSATION』に2024年9月4日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)
英ロックバンド、オアシスの2025年のコンサートチケットは2024年8月末に販売開始されたが、英国で行われる17回の公演がすでに売り切れた、というニュースは多くのファンが目にしただろう。
筆者が先行販売終了後に調べた際、チケット販売サイトTicketmaster(米国に本社を持つ大手のチケット販売プラットフォーム)には「追加のチケットが発売される可能性がありますので、後ほど再度ご確認ください」と表示されていた。では、どのようにして追加のチケットが発売されるのか。ウェンブリー・スタジアムの収容人数は増やせないし、新たな公演が追加されるのか、それともチケットの一部が最初から販売されていなかったのだろうか。
先行販売受付時、135ポンド(約2万5000円)程度だろうと思い、運良く予約できた多くのファンたちは、「需要が高まった」という理由で350ポンド(約6万7000円)以上に跳ね上がった価格を見て驚いたことだろう。予約受付中に価格が急上昇するとは予想していなかったファンも多くいたに違いない。
Ticketmasterは価格変動を「市場価値」に基づくものだと説明しており、一部ではこの戦略が転売屋を牽制する目的だと考えられている。この騒動を受けて、英国政府は2024年秋に、チケットの価格が需要に応じて変動するこの仕組み「ダイナミック・プライシング」について、関連する他の問題と合わせて詳しく調査・検討することを発表した。
さらに、英国の競争・市場庁(CMA)や欧州委員会もこの問題について調査を進めている。
市場経済では、価格は需要と供給のバランスを保つための重要な役割を果たす。コンサートチケットのような商品は、市場価格を(たとえ不本意であっても)支払う意欲のある消費者のみが購入できるのだ。
企業は利益を最大化するために価格を調整することができる。商品の売れ行きが鈍い場合、価格が高すぎる可能性があり、価格を下げることで売上と利益を増やすことができる。一方、商品が急速に売れ、在庫が不足する場合、企業は価格を引き上げて利益を増やすことができる。
私たちは日常的に変動する価格に慣れてきているとはいえ、購入待ちの列に並んでいる間にこれほど劇的に価格が変動することは珍しいことである。
需要の不確実性とダイナミック・プライシングの関係
需要が不確実な市場では、価格は時間とともに調整される傾向がある。たとえば、航空会社が運航する各フライトには固定の座席数があり、その需要は予測が難しい。そのため、ほとんどの航空会社(やホテル)は自動化されたシステムを使い、需要に応じて価格を調整する「ダイナミック・プライシング(変動価格制)」を採用している。
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