『インフラ崩壊 老朽化する日本を救う「省インフラ」』
道路や橋梁、上下水道といったインフラの老朽化が日本各地で深刻な課題となっている。埼玉県八潮市で2025年1月に発生した道路陥没事故は、象徴的な事例だ。日本中のインフラは、確実に限界へと近づいている。本書は、その現実を正面から見据え、破綻を回避するために何を選び、何を手放すべきかを具体的に示した一冊である。
著者は2011年刊行の前著『朽ちるインフラ 忍び寄るもうひとつの危機』において、インフラ老朽化の重大な危機を警告してきたが、その後も事故は止まらない。本書の序章で描かれる「2040年の日本崩壊 衝撃の近未来予測」は、決して扇動的な未来予測ではない。対策を先送りし続けた先に起こり得る近未来像である。
議論の出発点として本書では、「インフラとは何か」が丁寧に定義されている。学校や庁舎、公営住宅といった公共施設、道路・橋・水道・下水道などの土木インフラは、いずれも寿命が有限の素材でできている。時間の経過とともに劣化し、更新や修繕を避けることはできない。にもかかわらず、日本の公共投資は高度経済成長期をピークに減少し、現在では当時の約半分にとどまっている。この投資規模と更新頻度の乖離こそが、老朽化問題の根本にある構造的要因である。
著者はさらに、インフラを一括りにして論じる危うさを指摘する。公共施設と土木インフラでは、その性質も対処法も大きく異なる。公共施設は、必ずしも同じ建物を維持しなくとも、広域化や集約化、民間活用などによって機能を維持する余地がある。一方で、道路や水道といった土木インフラは、量を削減すれば生活基盤そのものが損なわれるため、量を維持しつつ費用を抑える手法が求められる。
そこで提示される概念が「省インフラ」である。インフラの負担を最大限軽減しながら、公共サービスを持続させる方法や技術、仕組みの総称だ。単なる我慢や縮小ではない。広域化、集約化、ICTの活用、維持管理の高度化などを組み合わせれば、半分の予算でも十分に役割を果たし得るという。
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