銭湯から広がった建築と絵の世界 ゆっくりと歩み伝える人と空間の物語

「アイソメトリック」という建築図法を用いて建物の内部をリアルに描く、塩谷歩波。その作品には、建物自体の魅力はもちろん、そこに息づく温もりまでも描き留められている。建築家として社会人生活をスタートしてから今日に至るまで、塩谷は、その輝かしい活躍とは裏腹に、魂を削るような道のりを歩んできた。

文・油井なおみ

 

塩谷 歩波(画家・文筆家)

建築から得た学びと
予期せぬ不調からの運命の出会い

2016年、SNSで投稿をはじめたイラストシリーズ『銭湯図解』。その唯一無二の作品は、瞬く間に話題となり、2019年には人気番組『情熱大陸』(毎日放送)に登場。2022年には自身をモデルにしたドラマも制作された。

以来、第一線で活躍を続ける塩谷歩波は、その裏側で生きる術を見失うほど懊悩する日々と対峙してきた。

幼い頃は、「絵を描くのが本当に大好き」な子どもだった。だが、小学6年生のときに、「すごく絵のうまい子が転入して来て、自分の絵に自信が持てなくなった」。そこから、絵を描くことからも遠ざかってしまったという。

だが、塩谷が中学に入学した頃、母親がインディアコーディネーターの専門学校に入学。学校の課題で、部屋の内観図を描く姿を見るようになった。

「素敵だなと思って建築パースの描き方を教わったんです。母と考えながら描く時間が楽しみになりました」

自然と興味は建築に向かい、大学は建築学科に入学。

「母校の早稲田大学は芸術的な視点を持っていて、建築学科でも珍しいんですが、かなり絵を描かせてもらったんです。私の入った研究室の先生も『塩谷君は絵をメインでやった方がいいよ』と言ってくれて。大学4年間で、絵のことをとことんやりました」

自分の絵を肯定できるようになったのも大学時代だった。

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