人と水とを技術でつなぐ 独自技術で社会課題の解決に貢献

創業から70年以上にわたり、水を運ぶパイプを連結する継手を世の中に提供し、生活になくてはならない上・下水道のライフラインを支えてきた前澤化成工業。「水のマエザワ」として地域に密着し、水分野の事業領域を広げることで、生活のライフラインを支え続けている。

田中 理(前澤化成工業 代表取締役兼社長執行役員)

三現主義に基づき
提案開発型企業として地域に貢献

1954年、日本で初めて水道用硬質塩化ビニル継手を開発したのが前澤化成工業の始まり。以降、上・下水道・環境機器関連製品、水処理システムなどを開発・製造・販売。日本における水分野のパイオニアとして、人々の暮らしに欠かせない水の安心・安全を守り、快適な住環境を支えてきた。

水道メーターを安全に収納するボックス(樹脂製)。シンプルな構造で施工が容易かつ、メンテナンスもスムーズなことが特徴

同社社長の田中理氏は「現場に行き、現物を見て、現実を知る。三現主義に基づき、人と水とを技術でつなぐことをモットーに、提案開発型企業として社会に貢献していくのが当社の目指す姿です」と説明する。

上・下水道用の硬質塩化ビニル管や継手、量水器ボックスなどを中心に、戸建住宅分野の管工機材製品をメインに事業を展開する同社。人口減少に伴い戸建住宅の着工が減少し、市場環境は厳しい状況にある。そこで、近年力を入れているのが、「水・環境エンジニアリング」領域。産業排水処理システムや雨水利用、排水利用といった水循環システムを提案から開発、運用、修理までトータルでサポートする。

1954年、日本で初めて無可塑剤成形による水道用硬質塩化ビニル継手を開発。強度や形状などを変更しつつ、現在も販売中。樹脂製で軽量、耐久性・施工性に優れる

2022年10月には、茨城県を起点に上・下水道施設、ポンププラントの排水工事等を展開し、各種公共工事に強みを持つ常陽水道工業を子会社化した。

「関東圏を軸に、M&Aも含めた投資も行いながら事業領域を広げていきたい。食生活やライフスタイルの変化に伴い、出てくる排水の成分は変わっていきます。それを、規制値内の綺麗な水にして流すニーズは今後も非常に高くなっていく。水処理の技術は、これから先も重要な位置づけになっていくだろうと捉えています」。

埼玉県熊谷市に工場と研究所を持つ同社。水処理のパイオニアとして、排水処理に関する様々な新技術の開発に積極的に取り組んでいる。

「研究開発拠点のある北関東を中心に、エリアを広げすぎず、緊急時対応も含めお客さまの要望に迅速に対応する、地域密着型の事業展開を進めています。特に、含油排水処理など食品関連を得意分野とし、その実績を積み重ねて現在に至ります」。

中長期的な目標として、営業利益30億円を目指す同社。設計から施工、メンテナンスまでを一貫して行えるメーカーとして、他メーカーとの優位性を確保していく。

「『水のマエザワ』としての認知を獲得し、施工から維持管理までを担い、地域循環の共生圏を作っていくことに貢献していきたいと思います」。

防災・災害対策関連製品の開発に力
新規事業にも挑む

現在、2026年を最終年とする中期経営計画「SHIFT 2026」のもと、2026年に売上高260億円、ROE4.5%、その先の売上高300億円、ROE5.0%を目標に据え取り組む同社。成長を加速していくべく、その礎の構築に余念がない。

管工機材事業では、既存領域である戸建住宅分野のシェア確保と深化を進めると同時に、新たな領域としてビル設備分野やデザイン性の高いエクステリア分野の製品開発にも挑戦する。また、昨今多発している豪雨などの自然災害による影響を軽減するための防災・災害対策関連製品の開発・拡販にも力を入れる。配管内の逆流を防止する「逆流対策弁」などの排水特殊継手や豪雨時に雨水を貯めて徐々に浸透させる雨水貯留浸透ユニットなど、多岐にわたる製品を開発・提供する。

防災関連の製品の1つ、雨水貯留浸透ユニットは、雨水を一時的に貯め、ゆっくりと地中に放出することで、豪雨時の下水道への負担を減らす

「豪雨や自然災害はいつ起こるか分かりません。災害時の水回りの迅速な復旧のためにも、各製品の即納体制は常に整えています」。

現在手がけている管工機材事業、水・環境エンジニアリング事業、各種プラスチック成形事業の3つの事業セグメントに加え、新規事業の創出にも挑む。樹脂の素材特性(防錆性・絶縁性・軽量化による省エネ化・コスト優位性など)を生かし、住環境の水インフラ領域にとらわれない金属代替に取り組む。

「新しい領域へ取り組むことで、更なる技術力・開発力の向上を図ります。また社会インフラの一翼を担う企業として、新たな社会インフラへの価値提供を模索していきます」。

人材への投資を拡大
海外展開の強化も図る

水・環境エンジニアリング領域を強化するうえで、管工事施工管理技士資格を持つ人材をいかに確保するかは重要な課題。

「社内人材の確保はもちろんのこと、各地域の協力会社と連携した取り組みを行うことで、各地の維持管理の修繕工事等にも対応できる体制づくりを推進しています」。

事業領域の拡大や新規事業への挑戦へ向け、人材の確保・育成・獲得については、長期的な視野で推進している。必要な人材のスキルマトリックスを作成し、それを網羅できるような人材育成を図るため、人材への投資を拡大。リスキリングを推進し、従業員の個の成長を促し、会社に依存しない自律した人材の育成を図る。また、異動を含めたジョブローテーションを活性化。外部人材の積極的登用により、新しい価値観を社内に取り入れることで、オープンイノベーションも促進する。

同社ではまた、海外展開の強化にも努める。上・下水道のインフラ面で発展途上にある国々に対し、環境整備・改善にむけた製品提案と販売、技術支援を通し、各国の発展に貢献していく。

例えば、技術支援を目的としたテクニカルサポート契約を締結しているインドネシアのルチカ社との協業により、現地進出を進めている。

「海外で活躍できる人材の育成に関しては、アライアンスを組んでいる海外企業との交流を図り、現地に実際に赴いての実践的な教育をスタートしたところです」。

創業から70年、管材を中心にビジネスを展開してきた同社。新規事業を推進するには、チャレンジ精神や新分野へ視野を広げられる人材を増やさなければならない。一方で、テクニカルな部分は、より高い専門性、特化されたスキルを持つ必要もある。そうした人材の選抜を、今後推進していく。

高齢化や人口減少の進む地域では今後、下水道の在り方、パイプラインの構造が変わっていくことが予想される。

「下水道の強靭化計画へ向け調査が進んでいますが、限られた予算のなかで全体最適の解を導きだし、最もコストパフォーマンスの高いシステムを構築していく必要があります。分散型社会の形成には、下水道による集中処理だけでなく浄化槽を使う道もあります。我々は、下水道を熟知しながら浄化槽のメーカーでもあります。そうしたノウハウも生かし、各地で最適なシステムを提案したいと思います」。

 

田中 理(たなか・さとる)
前澤化成工業 代表取締役兼社長執行役員