「出版はゴールではなくスタート」――編集力と構想力で著者の思いを形にする
アスカ・エフ・プロダクツは、ビジネス書や語学書の明日香出版社のグループ会社である。同社では主にブランディング出版やなど自費出版制作を担っており、単なる本づくりにとどまらない価値を提供している。同社が掲げる信念は「出版をより身近に」である。編集制作においては著者の真の思いを引き出しつつ半年間にわたり伴走し、出版後の活用支援まで行っている。一人ひとりの価値を見据えながら、1冊の書籍を制作していく同社の構想に迫る。
本は著者と社会をつなぐ公的な接点
同社の信念は、読み手に伝わる本づくりで著者の思いを形にすることである。
「著者の思いが正しく成文化できているか、読者に正確に伝わるかという視点を必ず持つようにしています。単に著者が言いたいことだけ書くというのでは読者は関心を持ちません。また、企業においては、顧客を増やしたい、良い人に入社してほしいといった経営・広報戦略として出版をすることも多く、その本が企業の目指す構想に向けて役に立っているのか、という視点も常に持ちながら編集をしています。」
さらに同社は、本の「公共性」も重視している。
「本は一度作れば国会図書館に全て登録され、社会に発信される『公』的な存在となります。これは企業の理念やサービスの社会的な接点とも捉えられ、他方、後で削除ができない、公的信用の原点としても捉えられます。当社は、社会性・公共性の観点から、誤字脱字の校正はもちろん、適切な文章構成になっているか、誹謗中傷や無断引用がないか等の確認も細かく行っています。」
「なぜ出版したいのか」を突き詰める
同社が著者との関係で最も重視するのは、出版の目的を明確にすることだという。
「編集をするうえで重要なのは、『なぜ出版したいと思ったのか』です。出版の動機やそこから見える理想を知らないと原稿の筋道が立てられません。著者には、マーケティング効果や信用の獲得、さらに理念の共有など、さまざまな目的があり、『なぜ出版したいと思ったのか』以外に、『読者は誰なのか』、『本書を読めば何を得られるのか』これらの要素を明確にしてから原稿を書いてもらうように薦めています。」
読んだ人にどうなってほしくて、この本を書こうと思っているのか。ここがぶれてしまうと、ただの自慢話になってしまったり、美化された理想像が書いてある本になってしまったりなど、読み手に良い印象を与えることが難しくなってしまうという。
さらにこの視点を引き出すために、編集側の工夫も行っているそうだ。
「多くの著者は執筆当初、単に『儲けたい』『有名になりたい』などの思いが強いです。しかし、入り口はそうだったとしても、根本的にはより強く読者に届けたいという意思や主張があります。著者の真意を汲み、原稿の中から著者の訴求点を引き出していくことこそが、当社の強みであると考えています。」
編集の7割は「見えない構想」にある
同社の編集における最大の特徴は「文脈づくり」にあるという。
「一番意識するのは、いかに『文脈』を作るか、という点です。伝えたいことが著者の方にあって、それを箇条書きで書いていくことはできても、それをどういう文脈で、どういうストーリーで伝えるかによって伝わり方は全く変わってきます。それを作るのが企画であり、まさに編集の技だと考えています。」
編集作業の大半は「見えない部分」にあるということだ。
原稿を預かってから動く部分は、編集作業全体の後半3割程度。同社は、その前段階で、そもそもどういった企画を読者が求めるか、著者は誰に何を伝え、それを通して著者に何を求めるか、といった全体像=構想を策定する方が圧倒的に重要な要素と捉えて居る。
一冊と一人 人生に寄り添う姿勢
同社の特徴は、著者一人ひとりに寄り添うカスタマイズした対応にある。
「過去に出版したある著者の場合、どんな思いで頑張っておられるとか、どんな思いで子育てと両立してきたや、苦労したこと、楽しかったことを含めて、著者の思いが読者にちゃんと伝わるよう、本文だけでなく、表紙のデザインにもこだわりました。著者は海の近くに生まれたとのことで、海面をイメージしたでこぼこの用紙を選びました。さらに、本文イラストもイラストレーターの方に原稿を読んでもらい、オリジナルで画を起こしました。」
このような著者に寄り添った編集で、多くの著者が満足に読者へと、その思いを伝えられているという。
そして、こうした過程で得た人間的なつながりは出版後も続く。こうして生まれる人間関係によって著者から新たな著者の紹介が生まれ、連鎖していくという。
出版はゴールではなくスタート
同社では本の完成をゴールではなくスタートと位置づけている。
「ブランディング出版は完成後、それを武器にして、自分たちの売りを拡げていきます。完成後にさらに、出版記念セミナーやパーティー開催、要約パンフレットの作成など、アクションを起こして初めて目的を達成できます。本の完成時がスタートという気持ちが重要だと考え、当社も支援をしています。」
商業出版では製作費こそ要さないが、著者の書きたい内容がそのまま著わされない可能性がある。編集者の意向に合わせた原稿を求められ、依頼内容に関係ないと思われる箇所は変更される。著者が自社をPRしたいならやはり、ブランディング出版を検討するべきではないかと、同社は強調する。
外部専門家との連携で広がる未来構想
外部専門家とのネットワークも広がっているという。例えば、デザイナー、映像制作者、士業、研究者、マーケッター、コンサルタントのような専門家と通じることで、著者が期待するブランディングの支援の域が広がるのだ。
「当社の社名にある『エフ』は『Future』を意味しています。出版を情報発信と捉え、どのような時代でも対応してゆくことを目指してつけられています。現在もブランディング出版など自費出版を中心にその他の市場にも進出していますが、「著者が出版を通じて読者や社会とつながる世界をつくる」という信念のもとに、今後もそのネットワークを活用した社会との接点構築の事業を展開・拡大していきたいと考えています。」
事業や著者との繋がりを通じて、新たな価値を創出し続けるアスカ・エフ・プロダクツ。その構想は、まさに事業を通じた社会課題解決の一つのモデルといえるだろう。
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