トヨタ「Geological Design」という挑戦
年間1千万台の自動車を製造するトヨタ自動車による、資源の完全循環をめざす「Geological Design」は、2024年度グッドデザイン・ベスト100を受賞した。同社構造デザインスタジオのテーマプロデューサー・大學孝一氏に、プロジェクトの構想に至る背景と思想を聞いた。
文・矢島進二(日本デザイン振興会 常務理事)
「車の終わり」を見つめ
トヨタの責任として未来を創る

大學孝一 トヨタ自動車株式会社 構造デザインスタジオ テーマプロデューサー。この肩書きは社内に数名しかいない。
大學氏は1997年にトヨタへ入社以来、車両の構造設計に携わってきた。剛性を向上させながら軽量化を追求する「プラットフォーム」設計が主務であり、長らく「性能と品質」を中心に車づくりを考えていた。そんな大學氏が「環境」という視点に向き合ったのは、比較的最近のことだ。
転機は2024年1月。豊田章男会長が「次の道を発明しよう」と新たなグループビジョンを打ち出した時期に、偶然訪れたグループ企業のリサイクル専門工場で、衝撃の事実を知る。「自動車のガラスはすべて再利用されているものだと思っていました。ところが、自動車用のガラスは高強度で固いため、リサイクルにかかるエネルギーも大きく不純物も多く含んでいる。そのため、ほとんど再利用されていないのです。鋼板も種類がたくさんあって、混ざってしまうともとの素材には戻せないことを知り、衝撃を受けました」。
大學氏は「軽くて性能が良ければいい車」という信念に疑問を抱く。「車の『始まり』には関わってきたが、『終わり』に目を向けていなかった」と気づき、素材の選定から廃棄に至るまで、全ての段階を視野に入れた新たな車づくりの必要性を感じる。「地球に始まり、地球に終わる」ものづくりを。そうした思想から「Geological Design」という名のプロジェクトを立ち上げた。
「トヨタは、おそらく世界で最も多く車をつくっている企業ですので、将来の廃棄物を最も多く生み出している企業とも言えます。その事実から目を背けてはいけないと感じました」。大學氏の言葉には、自動車メーカーの責任と覚悟がにじむ。
「本当に環境にやさしいのは、そもそも車をつくらないことです。しかし、移動によって得られる自由や喜びを、私たちは大切にしています。だからこそ、車をつくる以上、その廃材の循環に真剣に取り組む必要がある。その姿勢をトヨタ自らが示すことに、意味があるのです」
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