デジタル統括本部を新設 横浜市に見る大規模自治体のDX

横浜市は2021年4月に「デジタル統括本部」を新設し、共創・市民創発型のDXを推進していく。デジタル統括本部本部長の下田氏が、DXのビジョンや大都市の強みを生かしたDXの姿について語った。

下田 康晴 横浜市 デジタル統括本部 本部長

デジタル統括本部を新設
DXの恩恵を全ての市民に

横浜市は人口378万人を擁する日本最大の基礎自治体だ。人口減少社会の到来と超高齢化の進行に伴い、多数の課題も抱えている。2065年までの50年間で人口は約70万人減少する一方、高齢者人口の割合は1.5倍に増加する見込みで、特に75歳以上の人口は全国の中で最も増加する見込みである。現在7923億円の市税収入は2065年度に最大1390億円減少する一方で社会保障経費は最大で2320億円増加する見込みだ。「課題が増え、人口は減るという状況で、都市の生産性を高めていくことが重要になっています」と横浜市デジタル統括本部本部長の下田康晴氏は語る。

デジタル統括本部は、横浜市のDX推進の司令塔として今年4月に設置された。特定目的達成の全区局への総合調整権の行使などの権限を持ち、機動的かつ効率的な組織であることが特徴である。

デジタル化によって利便性や効率性が向上する一方で、デジタルデバイトやプライバシーの侵害、セキュリティの脅威、経済格差の拡大などのデジタル化の負の影響も発生している。「デジタル化が不可逆的に進む中で、市民と地域がデジタル化の恩恵の最大の受け手になれるよう、人やまちに優しいデジタル化をデザインすることが我々のミッションだと考えています」

3つのレイヤーでDX推進
共創・市民創発を重視

デジタル統括本部は今後、行政・地域活動・都市と3つのレイヤーでのDXを推進していく方針だ。

行政のDXは、サービスや働き方、組織を変革し、スマホ普及・市民ニーズの変化等に対応した次世代の行政をデザインする。地域活動のDXでは、デジタルを活用した地域コミュニティを創造し、地域力を高めるリアルとデジタルのハイブリット型のベストミックスをデザインする。そして都市のDXでは、都市の利便性や魅力を高めるデジタル活用をデザインし、最先端かつ脱炭素のデジタルインフラを装備する。

「一番大切なのは、地域活動のDXだと思っています。私は3月まで旭区長を担当していましたが、コロナ禍によって地域活動やイベント、広報伝達がストップしたり、補助金の申請や支給に支障が出たりと、地域の『つながり・やりとり』が遮断されたと痛感しました。デジタルを活用した新しい仕組みを構築し、区役所と地域の担い手をエンパワメントすること、地域住民にあらゆる状況下でもサービスを届けることが重要です」

大都市は人口が多いため意見集約や広報伝達が難しいといったデメリットを持つが、一方で、人材・企業・大学などのリソースやデータ量が豊富にあることや、実証フィールドを持つこと、市場規模に優れることなどのメリットもある。「これらの大都市の強みを武器にした、共創DXや市民創発DXが大切だと思っています。人材や企業、大学など多彩で豊富なリソースを活かしてサービスの受け手と作り手の境界を取り払うチャレンジをぜひ進めていきたいと思います」

横浜市ではユーザオリエンテッド、アジャイルアプローチ、オープンイノベーションという3つの姿勢を大切にしながら、都市OSや5G、3D都市モデルなど新しいデジタルインフラも活用した街づくりにも取り組んでいく。

 

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