外食産業を支えるケンコーマヨネーズ 「サラダ料理で世界一」の企業に
業務用の調味料や総菜の製造・販売を続けてきたケンコーマヨネーズは2024年、中長期経営計画「KENKO Vision 2035」を策定。同時に理念体系を再定義した。企業理念などを見直し、「サラダ料理で世界一になる」というビジョンの実現を目指している。現在はその第1フェーズで、事業構造の改革に取り組む。

島本 国一(ケンコーマヨネーズ 代表取締役社長)
業務用食品メーカーとして
食文化を作りながら成長
ケンコーマヨネーズは1958年に神戸市で創業し、1961年には業務用サラダ向け「ケンコーマヨネーズAS」の製造・販売を開始。その後は業務用食品メーカーとして多彩な商品を開発・販売し、新しい食文化を築きながら成長してきた。
「1977年には業界初のロングライフサラダを発売し、従来は1~2日で食べ切らないといけなかったポテトサラダなどの総菜を、冷蔵で未開封なら15~30日間日持ちするようにしました。現在は技術も進み最長で90日間の日持ちが可能です。当社の商品はレストランやカフェなどプロのお客様にお使いいただいており、業務用として通用する商品力やメニュー提案力が、私たちの一番の強みです」。
「FDF Plus®ポテトサラダ」は冷蔵未開封で賞味期間90日。食品ロス削減に貢献する
ケンコーマヨネーズ代表取締役社長の島本国一氏は、こう語る。現在は、①サラダや総菜、マヨネーズ・ドレッシング類、タマゴ加工品の開発・製造ノウハウを持つ「メーカー機能」、②フレッシュ総菜の製造ノウハウを持ち、メニュー開発も手がける子会社の「総菜機能」、③百貨店やショッピングモールを中心にショップを展開しSNSで商品情報を発信するサラダカフェの「ショップ機能」という3つを軸にビジネスを展開している。
昨年は2024~2035年度の12年間を対象とする中長期経営計画「KENKO Vision 2035」を策定し、企業理念(ミッション+パーパス)とビジョンを再構築。新しい企業理念では、守るべきものを「心身(こころ・からだ・いのち)と環境」とし、使命を「食を通じて世の中に貢献する。」とした。そしてビジョンは、「サラダ料理で世界一になる」とした。
サラダ料理は色彩が華やかで、様々な食のシーンで人の心を豊かにする。さらに、体を健やかにして命を守る役割もあり、サラダ料理の実践は企業理念の実践につながるという。「将来は『サラダ料理といえばケンコーマヨネーズ』といわれるところまでサラダ料理を広め、サラダ料理で世界一になることを目指しています」と島本氏は言う。
将来の成長に向けて海外事業や
EC、新規事業開発を強化
2024年度の上期の業績は売上高・営業利益とも過去最高を更新したが、市場環境や経営環境は厳しく、今後もその状態が続く見込みだという。「油やタマゴ、ジャガイモなど原材料の価格が高止まりし、箱や袋などの資材やエネルギー、物流のコストも上がっています。また、物価の上昇も続いています」。
このような中で策定した「KENKO Vision 2035」は、従来のような3ヵ年の中期経営計画ではなく、長期視点での計画とした。その基本戦略は①成長戦略、②スマート化、③人材投資、④サステナビリティと社会的責任という4つだ。現在は4年間の第1フェーズで、事業構造の改革に取り組んでいる。
「それぞれの基本戦略に、推進役の取締役がいます。私は成長戦略を担当しており、2035年には連結売上高で1250億円以上、連結営業利益で75億円以上を目指しています。また、営業利益率を向上させ、6%以上にするのが目標です」。
営業利益率向上のため、既存商品の統廃合を進めている。今年4月からは、商品数を約200品目整理することを決めた。これによって売るべき商品が明確になり、販売担当者は顧客に提案しやすくなる。また、工場では生産を集約でき、管理コストも削減できる。
そして今後の商品開発は市場のニーズを重視した発想で行い、顧客の要望に沿った商品で売上や利益を伸ばす方針だ。さらに海外事業やEC事業、新規事業開発を強化し、事業環境の変化にも対応できる経営基盤を整え、事業ポートフォリオを見直し、強化する。
「現在は調味料や加工食品の事業と総菜関連事業、サラダカフェのショップ事業の3つですが、これを拡大する方針です。海外事業では輸出販売が伸びており、今後は輸出商品のラインナップを増やし、新たな海外拠点も設けることも検討しています」。
宮城県では「元茎わかめ」の
アップサイクルで地域と連携
「KENKO Vision 2035」の基本戦略の1つである人材投資では、人材育成の充実化や育成システムの構築、働き方改革を通じた社員のモチベーション・満足度向上、ダイバーシティへの対応を基本方針としている。
2024年夏には従業員に対する「エンゲージメント調査」を行い、その結果を踏まえて対策を打ち、エンゲージメントスコアの向上を図っている。また、昨年から取締役が従業員と5~10人程度のグループを作り、「KENKO Vision 2035」の進捗について説明し、より従業員に浸透させる場も設けている。
「これらの取り組みを通じて、従業員には自分たちの仕事が『KENKO Vision 2035』につながっていることを再認識してもらうと共に、チャレンジできる風土づくりに努めています。また、工場で働く方々には工場で作った商品の実際の導入事例を見てもらい、試食会も行っています。そうすることで、お客様の姿が見えるようになり、品質への意識が高まります。パフォーマンス向上にもつながるはずです」。
全国に支店や工場を持つケンコーマヨネーズでは、地域との連携も大切にしている。例えば、宮城県女川町に本社を置き、鮮魚販売や水産食料品製造を行う企業の鮮冷と、宮城県漁業協同組合と協力し、「元茎わかめ」のアップサイクルを進めている。

未利用食品資源を活用した宮城県産元茎わかめのドレッシング
元茎わかめはワカメの根本(メカブ)と茎わかめの間の部位だが、硬い食感と独特な風味から、従来はほとんど食用として利用されてこなかった。そこでケンコーマヨネーズの加工技術を使い、素材本来の風味を活かした、やみつきになる味わいのサラダや総菜、ドレッシングを開発した。他にも、ホタテの貝ひものアップサイクルにも取り組んでいる。また、子会社のダイエットクックサプライは、地元・広島県の規格外食材を活用した商品開発を行っている。
これらの活動も、「食を通じて世の中に貢献する。」という企業理念の実践だ。限りある資源や環境を大切にして持続的な社会の実現に貢献し、信用・信頼され、存続し続ける会社を目指す。
※「サラダ料理」はケンコーマヨネーズの登録商標

- 島本 国一(しまもと・くにかず)
- ケンコーマヨネーズ 代表取締役社長