ベルシステム24が描く自治体DXの未来 総合BPOパートナーとして実現する『誰一人取り残されない』行政サービス

 1982年の創業以来、コンタクトセンター事業の草分けとして成長を続けてきたベルシステム24。現在では数多くの自治体との取引実績を持ち、自治体DXの「総合BPOパートナー」として新たな価値創造に挑んでいる。「誰一人取り残されない」デジタル社会の実現に向けて、ベルシステム24はどのような構想を描いているのか。同社の行政サービス部門であるCX第2事業本部 第6事業部の前田英伺事業部長と、高木壮マネージャーに、自治体支援の理想像と取り組みを聞いた。

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右:前田 英伺 氏 
(株式会社ベルシステム24 CX第2事業本部 第6事業部 事業部長
左:高木 壮 氏 
(株式会社ベルシステム24 CX第2事業本部 第6事業部  第3グループ マネージャー)

ベルシステム24が構想する 自治体DXの理想形

 政府が2021年に策定した「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」において掲げる「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」。このビジョンは、年齢、障がいの有無、地理的制約、経済的事情にかかわらず、すべての国民がデジタル技術の恩恵を享受できる社会の構築を目指すものだ。デジタル庁の設置とともに本格化したこの国家戦略に対し、ベルシステム24は民間企業として独自のアプローチを提示している。
 同社の行政サービス支援構想は、住民サービスの質的向上を実現すると同時に、職員が政策立案などの本質的業務に注力できる環境を整備することだと前田氏は語る。「限られた人的リソースと財政の中で、いかにサービスを高度化し、かつ公平に提供していくか。この実現こそが我々の使命です」。
 同社は自治体の総合窓口業務から税務、国保・社会保障、子育て支援まで、多岐にわたる領域をカバーしている。全ての取り組みに共通するのは、多様な住民一人ひとりのニーズに寄り添い、最適なコミュニケーション手段を提供する。
 ベルシステム24の行政サービス支援構想を具現化した事例として、藤沢市との協働がある。「藤沢市様は『デジタル市役所』実現のトップランナーです。2023年10月から、従来別々だった代表電話交換とコールセンターを統合し、市民の皆様の問い合わせをワンストップで完結させる革新的な仕組みを構築しました」と前田氏はその成果を力強く説く。さらに、藤沢市では年間3,750時間もの業務時間削減を達成。創出された時間を職員が本来業務に充てることで、行政サービスの質的転換が進んでいる。藤沢市コンタクトセンターの概要

藤沢市コンタクトセンターの概要

自治体特有のニーズにこたえるテクノロジー活用 AIと有人のハイブリットで正確性を確保

 多くの自治体との協働で培った豊富なノウハウとナレッジを基に、ベルシステム24は自治体特有のニーズに対応するソリューションを開発・展開している。
 行政サービスにおいて最も重視されるのが「情報の正確性」だ。この要請に応えるため、ベルシステム24は伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)と協業し、自治体向け生成AI応答サービスの提供を始めた。「我々のシステムは自治体の公式ホームページのみを情報源とし、万が一不適切な回答が生成された場合には即座に有人対応へ切り替わる。この『生成AI+ヒューマンバックアップ』の仕組みこそが、安心と信頼を担保するのです」と前田氏は技術の特徴を説明する。さらに、多言語対応機能により、増加する外国人住民へのサービス向上も実現している。
 業務プロセスの最適化においては、ServiceNowをはじめとする先進的なデジタルプラットフォームを活用。コンタクトセンターや窓口で蓄積される膨大な対話記録をBIツールで解析し、住民ニーズの変化やトレンドを可視化している。これらのインサイトを政策立案に反映させることで、エビデンスに基づいた施策展開が可能となる。
 自治体特有のニーズを理解できる人材育成に関しても抜かりない。同社では、行政団体向けの専任部門を設置し、自治体業務のエキスパートを体系的に育成している。「自治体には、独特の文化と手続きがあります。これらを深く理解し、尊重しながら、革新的なソリューションを提供できる人材を育てています」と、高木氏は人材の専門性についても自信を持つ。


自治体向け生成 AI 応答サービスの概要

自治体向け生成 AI 応答サービスの概要

共創・包括型サービスでデジタルディバイドの解消へ

 自治体間ではDXの進捗状況に差があり、その結果として行政サービスを受ける住民の利便性にも差が生じている。こうした課題に対し、ベルシステム24は広域自治体を単位としたシェアードサービスモデルを提案している。すでに複数の広域自治体から相談が寄せられ、共同利用可能なプラットフォームの構築が進んでいるという。「格差をなくし、あらゆる自治体が高品質なサービスを提供できる未来を目指しています」と高木氏は展望を示す。
 「例えば給付金事業を都道府県単位でパッケージ化し、統一されたシステムとオペレーションで運用すれば、業務の標準化と予算の最適化が可能になります。小規模自治体でも大都市と同等のサービスを提供できるようになるのです」と前田氏は具体的な効果を説明する。システムが標準化されれば、職員がジョブローテーションしても、操作方法が共通化されているため、業務を途切れることなく継続できる。
 DXに関するノウハウが不足している自治体に対しては、職員研修も行っている。「入庁3〜5年目の若手職員を対象に、RPAやBPRの研修を実施しています。彼らが将来の業務改善をリードし、組織全体に変革を広げていくことを期待しています」と高木氏はその狙いについて語った。

持続可能な行政サービスの実現へ向けた今後の展望

 ベルシステム24が目指すのは、自治体における「書かせない・行かせない・待たせない」ワンストップ窓口の実現だ。これにより、地方自治体窓口の「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」への貢献を目指している。
 高木氏は、行政サービス支援の展望についてこう語る。「展望として、テクノロジーを用いてコンタクトセンターを段階的に進化させていく予定です。まず個人情報を扱わない問い合わせ対応から始め、次にプッシュ型の情報配信、さらに生成AIを活用した高度な自動応答へと発展させる計画です。アナログとデジタルを組み合わせ、全ての住民に最適なサービスを提供していきます」。
 政府が推進する「プッシュ型」情報配信の支援にも、同社は積極的に取り組む方針だ。「お子さんが生まれたばかりの家庭には育児支援の情報を、給付金対象世帯には申請案内を。住民一人ひとりの属性に応じて、必要な情報を自治体から能動的に届けるのです」と高木氏は説明する。とりわけ、本当に支援を必要としている人ほど制度を調べる余裕がなく、サービスにたどり着けないという現状があり、その解決は喫緊の課題となっている。
 中長期的には、BPOサービスの枠を超えた新たな価値創造も視野に入れる。コンタクトセンター領域にとどまらず、マーケティングBPOなどデータ分析を核としたサービスを展開し、事業構造の変革を進める。
 「人口が減少する中、限られたリソースで高品質なサービスを維持・向上させるには、テクノロジー活用、人材育成、そして官民の共創が不可欠です。我々はその架け橋となり、日本の自治体DXをリードしていきます」。高木氏は、自治体支援の展望についてこう語る。
 「DXが進んでも、対面や電話でのコミュニケーションがゼロになることはありません。デジタルとアナログの両輪で、全ての人が取り残されないデジタル社会を実現する。それが、コミュニケーションを生業とする私たちの使命です」。前田氏の言葉に、ベルシステム24が描く行政サービスの未来像が凝縮されている。

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前田 英伺(まえだ・ひでつぐ)氏
株式会社ベルシステム24 CX第2事業本部 第6事業部 事業部長
確定⑤09121012_0T6A0024
高木 壮(たかぎ・そう)氏
株式会社ベルシステム24 CX第2事業本部 第6事業部 第3グループ マネージャー

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