自治体システム統一を2025年度に実現 デジタル庁が仕掛ける標準化
全国の自治体が使用している業務基幹システムの統一は、公共サービスのデジタル化推進を担うデジタル庁の重要ミッション。全市町村が、クラウド上の標準準拠システムを使うようにするのが目標だ。
2021年9月に活動を開始したデジタル庁。デジタルガバメントの実現に向け、様々なプロジェクトが進行している。中でも多くの国民にとって関係があるのが、地方自治体の業務プロセスのデジタル化、情報システムの統一標準化だ。
標準仕様への準拠を義務化
これまで、都道府県や市区町村ではそれぞれ独自の情報システムを採用し、業務を遂行してきた。「これを統一化、標準化していかないと、国民向けのサービスとして適切なものが提供できない、という危機感のもと、プロジェクトを進めています」と、デジタル庁統括官の篠原俊博氏はいう。
これまで利用されてきた自治体独自のシステムやアプリケーションは、様々なカスタマイズが積み重なっており、ソフトウェアの設計もモジュール化されていない。このため、修正や追加の必要が生じても、柔軟な対応ができない。これは、変化の多い時代に多様な市民に向けたサービスを提供しなければならない自治体にとっては致命的だ。さらに、ある自治体の業務に特化したシステムは、他の自治体と共有することができないので、調達コストがかさむ。組織間でデータを共有し、シームレスな市民サービスを提供することも困難だ。
「これらの問題を解決するために、標準仕様やデータ要件の標準への準拠などを義務化しました。基幹業務システムはカスタマイズさせないという強い意志を自治体と共有したものといえます」と篠原氏は説明する。
これに加えて、基幹業務システムのインフラも、クラウドを前提としたものへと変えていく方針だ。保守や運用を外部組織に任せるマネージドサービスを利用できるようにしたり、クラウドの利点を業務上で徹底的に活用できるようにするクラウドネイティブ化を進めていく。ガバメントクラウドの目指すところとしては、複数の事業者が標準仕様に準拠して開発したアプリを、自治体が選択できるようにし、また自治体が基幹業務をオンラインでできるようにすること、等がある。なお情報セキュリティについては、「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」の改定が2020年12月になされている。この新しいガイドラインでは、クラウドサービスを利用する際の注意点や、リモートアクセスのセキュリティについてもカバーされている。
実現の目標は2025年度末
自治体の業務プロセス・情報システム標準化の具体的な内容としては、まずは中核市規模の自治体を想定して標準仕様を作成する計画だ。これを踏まえて、大小さまざまな規模の自治体を想定してバージョンアップする。税・健康保険・年金といった自治体が担当している17の事務業務に加え、印鑑登録や乳幼児医療、ひとり親医療制度など法律に基づかない事務も対象にする考え。
このような、自治体の業務システムの統一・標準化に向けたスケジュールは2020年12月発表の「デジタルガバメント実行計画」ですでに発表されている。2022年度には、ガバメントクラウド上でのサービス提供を前提に、標準準拠システム開発が始まることになっている。そして、2025年度末までには、すべての市町村がガバメントクラウド上に構築する標準準拠システムを利用できるようにする。
「そのために、都道府県は市町村のポートフォリオマネジメントの役割を、市町村は実際にプロジェクトを推進する組織として、統一・標準化の取り組みを進めていただきたい」と篠原氏は話した。