前橋市 予算執行業務のDXで大幅な効率化

前橋市はコンカーおよびインフォマートと共に予算執行業務のDXに関する実証実験を実施し、学校における物品購入において約7割の業務削減効果を確認した。その背景や取り組み内容、成果などを実証実験担当者らが紹介する。

電子請求書の実証実験で
業務プロセス改革を実現

業務効率化や住民サービスの向上を目的に全国の自治体でDXに向けた取り組みが進められているが、内部事務部門の効率化やコスト削減も重要テーマのひとつだろう。その先進事例として大いに参考になるのが、予算執行業務の自動化に取り組んだ前橋市の事例だ。群馬県前橋市では、2020年9月から2ヶ月間、公立小中学校を対象に、コンカーの請求書管理クラウド「Concur Invoice(コンカーインボイス)」とインフォマートのクラウド請求書サービス「BtoBプラットフォーム 請求書」を組み合わせ、予算執⾏処理の⾃動化に関する実証実験に取り組み、業務プロセス改革などで大きな成果を上げている。

前橋市では、2021年3月に策定した5カ年計画「前橋市DX推進計画」(2021年4月~2026年3月)に基づき、「行政手続のオンライン化」「情報システムの全体最適化」「市役所のDX推進」等の重点事業を推進する中で、総務省の「自治体行政スマートプロジェクト」を通じた複数業務のデジタル化にも着手。今回の実証実験はそのうちの財務会計業務デジタル化の一環であり、業務の自動化、管理のデジタル化、情報システム・業務プロセスの最適化の実現を目指すものだ。

実証実験に至った理由について、前橋市未来創造部情報政策課の森尻翔太氏は「予算執行業務は全ての所属に関係があり、処理すべき予算執行伝票も膨大な数にのぼることから、業務の負荷削減について以前からその必要性を認識していました。そうした中、既存の財務会計システムの更新時期が迫ってきたこともあり、このタイミングで現行の業務プロセスを見直し、見積書の取得から支払いまでの一連の業務を電子化したいと考えるようになりました」と説明する。

森尻 翔太 前橋市 未来創造部 情報政策課

予算執行業務のDXを機に
職員のマインドセットを醸成

前橋市では従来、予算執行業務は取引業者から受領した見積書や請求書を元に、手作業で支出負担行為書や、支出命令書を作成し、紙決裁で回覧する運用が行われてきた。紙と人に依存する煩雑な請求書処理プロセスをデジタル化するにあたり、まず見積書・請求書をインフォマートのBtoBプラットフォームを使ってWeb上で受領する。次に、そのデータをコンカーのConcur Invoiceを使って電子データとして管理し、支出負担行為書や支出命令書を効率的に作成し、電子決裁を回覧する形を検討した。実証実験の対象業務は小中学校における校長専決と、10万円未満の物品購入とした。

インフォマートのクラウド請求書「BtoBプラットフォーム 請求書」とコンカーの請求書管理クラウド「Concur Invoice」を組み合わせた自治体予算執⾏処理の⾃動化フロー

経費・出張管理システムのトッププレイヤーであるコンカーの山田浩志氏は「電子決裁内容は起票前にシステム側で抜け漏れミスだけでなく、不正・違反まで自動でチェックを行っています。承認された結果は全てリアルタイムで可視化され、約200種類の分析データとして抽出することもできます。例えば、取引業者ごとの発注状況を確認し、偏らないようにコントロールすることで、発注機会の公平性を保つことが可能です」と話す。

山田 浩志 コンカー デジタルエコシステム本部 公共事業推進部

実証実験は2段階に分けて実施された。第1段階では現⾏の業務プロセスに合わせてConcur Invoiceを利用した場合の効果を検証し、第2段階ではデジタル化を活⽤した業務プロセスの効率化を検討するため、⾃動チェック等のガバナンス強化を活かし、兼命令で予算執行する運⽤の実現性を検証した。その結果、「ペーパーレス化、手入力や目視の業務負荷軽減、決済のリアルタイム化の実現が確認できました」と山田氏は報告した。

森尻氏は定量的な成果として「学校における物品購入で約7割の業務削減効果が得られました」と述べた上で、「定性的な成果としては、兼命令の導入など様々な業務プロセスの見直しを図れたことは大変貴重な経験でした」と振り返る。

「現状の市役所業務は、マニュアル通りに『正しく処理をする』ことに重きが置かれますが、本来は『正しいことを実行する』ことが重要です。職員にとって身近な予算執行業務をわかりやすく変革し、DXの効果を実際に体験し気づきを得ることで、『正しく処理する』ことに追われる毎⽇から『正しいこと(あるべきサービス)を追い求める姿』へと転換するためのマインドセットが醸成されていくことを期待しています」

全ての行政手続きが
デジタルで完結する市役所へ

予算執行業務の対象範囲を10万円以下の物品購入に限定した前橋市だが、今後は対象範囲の拡大を視野に入れているという。

「少額とはいえ、全庁の予算執行業務の25%を占める10万円以下の物品購入をなんとかしたい、という思いがありました。そのため、まずは比較的シンプルかつボリュームゾーンとなる業務からアジャイル的に取り掛かり、経験を積みながら徐々に対象を拡大していくことを狙いました」と森尻氏。

さらに森尻氏は、これからの前橋市役所を『いつでもどこからでも窓⼝とつながり、必要なときに必要な住⺠サービスが受けられる市役所』にしたいと述べた上で、「住⺠の情報⼊⼒と市役所の内部処理が自動で⾏われ、審査の結果が住民に通知されるまで全ての⼿続がデジタル上で完結することを目指しています」と続けた。

電子請求書サービスで圧倒的なシェアを誇り、各社の業務効率化を実現してきたインフォマート。同社で多数の自治体と電子請求書の実証実験を実施するなど、自治体DXの支援を担当してきた熊川純平氏は、「電子請求書の利用促進には、電子化のメリットを訴求する様々な機会を提供することや、自治体から事業者に電子請求書のご案内をすることが重要です」と話し、事業者向けの説明会や電子請求書の利用案内の送付など、自治体向けに様々な支援をしていることを紹介した。

熊川 純平 インフォマート デジタル・ガバメント事業室

機械にできることは機械に任せれば、ミスなく迅速な予算執行業務が遂行でき、職員はより住民の声を踏まえた政策立案やサービス提供に注力できるようになる。今後、前橋市役所は住民すら気づいていない本当に必要なサービスを、地域との共創によって創発していくことを期待したい。

 

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デジタルガバメント事業室
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Mail:government@infomart.co.jp
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