「シナリオ・プランニング」で未来を描き、主体的に行動する

――新井さんとシナリオ・プランニングの出会いをお教えください。

もともとシンクタンクで情報通信分野の要素技術やエネルギー関連技術を通してICTが社会でどう活用されるのかをリサーチしていました。業界の市場予測は右肩上がりのグラフばかりで、盛り上がることはわかるものの、それが社会に与える変化や、変化に対して企業はどう対応すべきかまでは見えません。市場予測では見えない変化を見るために、今でいうユヴァル・ノア・ハラリ氏のような、いわゆるソートリーダーの未来予測を参考にしていたのですが、そうした内容をお客様に伝えても、「なるほど」と言われはしても業務には反映されない。未来を自分ごととして考えられる手段を求めていたときにシナリオ・プランニングを知りました。その後、東日本大震災で世の中が大きく変わる経験をし、想定外や不確実な状況も考慮したうえで自らの対応を考えるという点に興味をもち、本格的に活用を始めました。

――事業構想にも応用できそうな手法ですね。

10~20年後の社会像を描き、そこから逆算して中長期の事業アイデアをつくるという使い方が一般的です。一方、事業を生み出す方には「こういうものを作りたい」「こういうものが必要だ」という、自分の中から湧き出てくる思いやアイデアがあります。シナリオ・プランニングは、検証を重ねたアイデアが10年後、20年後にも求められるのか、あるいは、ニーズがどう変わるのかを考えるためにも使えます。シナリオ・プランニングは奇抜な未来を打ち出すことに重点が置かれることもありますが、新規性や奇抜さはなくても、ロジックだけでなく感情も動くような未来像をつくることが大切です。関係者全員で自社のすべきことを話したくなるような「戦略的な対話」を生むことが重要で、本書では「未来創造OS」「未来創造ダイアローグ」という形で戦略的対話を行うための仕組みと手順を紹介しています。つくって終わりではなく、使えるシナリオをつくるという観点で、実践手法は詳細に記載し、注意すべき点なども全部詰め込みました。

――本誌読者はシナリオ・プランニングをどう実践すればよいでしょうか。

シナリオ・プランニングを通して、多様な視点を得ていただきたいと思います。未来にはさまざまなパターンがあり、それぞれに対し自分たちはどう対応するのか、選択肢を考えることこそシナリオ・プランニングの本質だと考えています。

 

新井 宏征(あらい・ひろゆき)
スタイリッシュ・アイデア 代表取締役、シナリオプランナー協会 代表理事

 

『実践 シナリオ・プランニング
不確実性を「機会」に変える未来創造の技術』

  1. 新井 宏征 著
  2. 定価 本体2700円+税
  3. 日本能率協会マネジメントセンター
  4. 2021年5月刊

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