アサンテ シロアリ防除を通じて「住み続けられるまち」を実現

シロアリ対策で業界1位のアサンテは、確かな技術で住宅などの建築物を保全するとともに、環境や日本の「木の文化」を守ることも目指す。自治体、神社仏閣に無償で技術を提供し、文化財を保護する活動も行っている。

宮内 征 アサンテ 代表取締役

地震による倒壊リスクも抑える
シロアリ防除と建物の補強

シロアリ対策等の床下施工で58万軒以上(2021年3月時点)の施工実績があり、売上実績で業界1位のアサンテは、1970年に三洋消毒社として創業した。1994年には商号をアサンテに変更し、2013年に東証2部上場、2014年に東証1部上場を果たした。

事業の柱はシロアリ防除で、防除とは「駆除」と「予防」の双方を含み、駆除はシロアリ被害がすでにある場合に行い、予防では大きな被害が生じないよう事前に対策を講じる。

「シロアリ防除においては、環境負荷の少ない薬剤を使用しており、防除を一度行って終わりではなく、5年に一度のサイクルで施工が必要になります。当社では現在、売上高の42%をシロアリ防除が占め、他に地震対策が27%、湿気対策が21%となっています。これらのサービスを通じ、住宅の耐久性を向上させ、長寿命化に貢献しています」

アサンテ代表取締役の宮内征氏は、こう語る。シロアリや湿気によって被害が生じた家は耐久性が低下するが、すぐに倒れるわけではなく、地震のような大きな力が外から加わった際に倒壊するリスクを含んでいる。

「1995年の阪神・淡路大震災での家屋の全壊率は、シロアリ被害や腐朽があった建物では93.2%と高く、そうでない建物の約4倍でした。一方、地震対策ではシロアリ防除だけでなく、基礎コンクリートの補修や木材接合部分の補強のような対策も必要です」昨年以降は、新型コロナウイルス感染症の拡大によって事業活動に制約が生じたが、シロアリ防除などのニーズはむしろ高まっているという。

「緊急事態宣言やリモートワークの拡大によって自宅で過ごす時間が増え、家のさまざまな不具合が目に付きやすくなりました。今後リモートワークが浸透すれば、都心を離れて郊外に家を建てる人が増え、ニーズがさらに高まることも予想されます」

『神社仏閣プロジェクト』で
文化財保護にも貢献

アサンテでは「人と技術を育て、人と家と森を守る」という経営理念の下、優秀な人材を育て、確かな技術で顧客の大切な財産である家を守るとともに、環境保全や日本の「木の文化」を守ることも目指している。日本の木造住宅は寿命や耐用年数が約30年と短く、欧米の半分以下となっている。

また、国内の建築物では従来スクラップ&ビルドが主流だったが、建物を取り壊せば廃材が出るほか、新しい部材を作る際にはCO2も発生する。家や建物の寿命を延ばすことは、CO2排出削減や環境保全のためにも重要だ。

「アサンテの事業は、持続可能な開発目標(SDGs)の17のゴールのうち、4つのゴールに該当します。中でも、ゴール11の『住み続けられるまちづくり』を意識しています」

一方、日本には「木の文化」があり、歴史的に重要な建築物も木造が多い。また、コンクリートの建物でも床材や窓枠には木材が使われていることがある。これらの建築物を守り続けるには害虫駆除が欠かせず、アサンテには各地の寺社や官公庁、学校などから相談が寄せられる。

このような中、同社では文化財や神社仏閣の保護・保全を通じ、地域社会に貢献する事業も行っている。例えば、神奈川県横須賀市で記念艦として保存されている戦艦・三笠は、甲板に木材が使用されているため、シロアリ被害を予防する施工をアサンテが行った。

他方で文化財保護では定期的な改修は行われていても、害虫駆除まで手が回らないことも多いという。そこでアサンテの『神社仏閣プロジェクト』では、無償で技術を提供し、各地の文化財を守る活動も行っている。

例えば、福井県敦賀市の氣比神宮・角鹿(つぬが)神社では、2005年にシロアリ防除を実施。角鹿神社は「敦賀」の元になったといわれる「つぬが」の名を持つ由緒ある神社だが、シロアリ被害が床下だけでなく天井まで及んでいた。このため、念入りな施工で被害の進行を防止したほか、施工後は定期点検も実施した。

アサンテがシロアリ防除を実施した福井県敦賀市の氣比神宮・角鹿神社

「予算上難しい自治体の文化財や建物のシロアリ防除もお手伝いできるよう、私たちにお声がけいただきたいです。地味な仕事ですが、環境を考え、まちと文化を守り、快適に過ごせるようにしていくためには重要な施策です」文化財の施工では、見栄えや景観の維持が重要になる。施工は床下から梁までの大掛かりな作業となるが、施工跡が目立たないように処理する技術を磨いているという。また、事前の調査を非破壊で行う必要がある場合には、においでシロアリを探知する「シロアリ探知犬」が活躍する。

ハウスメンテナンス業界を
リードする企業に

アサンテでは人材育成を重視しており、静岡県浜松市と福島県猪苗代町に大型の自社研修施設を所有している。この研修施設においては、社内講師による専門的な社員教育を日常的に実施している。また、アサンテでは農協(JA)と広域なパートナーシップも築いており、全国各地のJAに寄せられる害虫駆除の依頼にも対応している。

業界1位の企業として、人材教育による高い品質や信頼性の維持に努めてきたが、JAの取扱事業者になることは信頼性の補完にもつながる。

アサンテが中期経営計画に掲げる「目指すビジョン」は、持続的・安定的な成長を実現し、ハウスメンテナンス業界をリードする企業になることだ。その成長戦略として第一に、東北から関西までの既存エリア内でさらなる開拓を進めるとともに、関西以西への進出も図る。今年4月には愛媛県に事業所を開設し、今後は九州にも拡大して全国展開を目指す。

第二はサービス分野の拡大で、ハウスメンテナンスサービスのラインナップを増やしていく方針だ。第三はM&Aによる外部経営資源の獲得で、木造住宅のメンテナンスに属する案件を中心に展開していく。昨年7月には、住宅のリフォームや増改築の事業を行うハートフルホーム(北海道札幌市)を完全子会社化し、拠点やサービス品目が増加した。

今後、同社は営業エリアや提供サービスの拡大、外部経営資源の獲得を通じ、将来的には床下だけでなく、家全体の顧客の多様なニーズに対応する企業を目指す。さらに業界をリードする企業として、業界全体の認知度向上への取り組みも進めていく方針だ。

 

宮内 征(みやうち・せい)
アサンテ 代表取締役

 

お問い合わせ


株式会社アサンテ
住所:東京都新宿区新宿1 丁目33 番15 号
TEL:03-3226-5511(大代表)
URL:https://www.asante.co.jp/

この記事に関するお問い合わせは以下のフォームより送信してください。