老朽化した橋が世界で危機に直面――「構造ヘルスモニタリング」が命を救う鍵に
※本記事は『THE CONVERSATION』に2025年7月6日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています。

クイーンズランド州ブリスベン川に架かるストーリーブリッジは、雄大に広がる鉄骨トラス構造とアールデコ調の塔が特徴的な美しい橋です。2025年には「州内で最も優れたランドマーク」として表彰されました。しかし、この橋は単なる観光名所にとどまりません。1日に10万台以上の車両が通行する、州都ブリスベンの重要な交通インフラでもあります。
ところが最近発表された調査報告で、築85年のこの橋に深刻な構造的問題があることが明らかになりました。具体的には、コンクリートの劣化、金属部分の腐食、歩道への過剰な荷重といった問題が指摘されています。
こうした調査結果を受けて、安全確保のために歩道部分が緊急閉鎖されました。同時に、ブリスベン市議会が計画していた橋の修復プロジェクトの重要性と緊急性も浮き彫りになりました。
ストーリーブリッジの事例、そして近年世界各地で起きているより悲惨な崩落事故をきっかけに、老朽化した橋や都市インフラ全体の安全性について、より広範な議論が始まっています。そんな中、注目されているのが「構造ヘルスモニタリング」と呼ばれる、シンプルながらも効果的な予防的対策です。
多発する橋の崩落事故
2022年1月、アメリカ・ペンシルベニア州ピッツバーグにあるファーン・ホロー橋が崩落し、複数の負傷者を出しました。原因は、重要な鋼部材の腐食と破断でした。これは繰り返されていた点検の勧告を無視したこと、そして検査や監視体制の不備が招いたものでした。
3年前には台湾の南方澳大橋が崩落。潮風による塩害でケーブルが劣化し、橋の下にいた6人が命を落としました。
2018年8月には、イタリア・ジェノバのモランディ橋が崩れ、43人が死亡。コンクリートの劣化と鋼材の腐食に、点検や保守の課題が追い打ちをかけました。
さらに2007年8月、アメリカ・ミネアポリスの橋が崩壊し、13人が死亡、145人が負傷しました。原因は設計段階の見落としでしたが、老朽化や交通量の増加、目視検査の限界も事故を悪化させる要因となりました。
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