スマートシティ構築のカギ 「データ流通プラットフォーム」の役割
スマートシティでは、多様なデータを連携・利活用するためのデータ流通プラットフォーム(都市OS)の構築が重要となる。マクニカはエクスポリスと連携し、小規模自治体でも導入しやすいプラットフォームの普及を目指している。エクスポリスの松井CEOとマクニカ担当者に話を聞いた。
データ流通が生み出す価値とは
── 松井先生は研究者として数多くのスマートシティプロジェクトに携わった後、スマートシティ向けデータ流通プラットフォームを手掛けるエクスポリスを起業しました。
マクニカとエクスポリスが実現するデータ流通プラットフォーム
松井 日本では東日本大震災と電力危機を契機にスマートシティが注目されるようになり、東京や横浜などの大都市を中心に取り組みが始められましたが、私は地方都市こそスマート化が必要ではと考えていました。地方都市はデジタル化の基盤が整備されておらず、せっかくのイノベーティブでクリエイティブな発想が埋もれてしまっています。街を盛り上げたい、暮らしの課題を解決したいという想いを叶えられる「スモールスマートシティ」を地方に増やすためにも、どんな規模の自治体でも使用できるデータ流通プラットフォーム(都市OS)が必要と考え、研究者を続けながら起業しました。
── データ流通プラットフォームは、スマートシティ推進においてなぜ重要なのでしょうか。
松井 地域をスマート化するためのサービスを創出したり、AIで地域の未来を予測するためには、リアルタイムデータの収集と分析が最も重要です。これまで自治体は統計などの静的データをもとに政策や行政サービスを立案していましたが、動的なリアルタイムデータを活用すれば、例えば人流データを捉えながら道路の整備計画や観光振興策を立案するなどのEBPM(データと根拠に基づいた政策立案)が可能になります。
スマートフォンの普及やセンシング技術の進化でリアルタイムデータは取得しやすくなり、民間では交通アプリやマーケティングへの活用が進んでいますが、行政では、多様な自治体が導入しやすいデータ流通プラットフォームが不在でした。
小出 複雑化する都市課題を解決するためには、交通や防災、ヘルスケアなどの分野をまたいだデータ利活用によるサービス創出が求められ、データ流通のハブとなるプラットフォームの存在が不可欠です。その際は、広域的な課題の解決も見据え、市町村の壁を超えたデータ連携が可能なプラットフォームを選択するべきです。そして、ただデータを貯めるだけでなく、行政や民間事業者などもデータを活用できる仕組みも必要です。
スモールスタートに最適
デジタル行政官の育成も支援
── エクスポリスが開発するデータ流通プラットフォームの特徴を教えて下さい。
松井 弊社の「Expolis Cloud Platform」は、課題解決のためのアプリの開発や導入を支援するデータ流通のインターフェイス、そのアプリの共有のための地域課題流通マーケットプレイス、現在・今後の地域課題を分析する「地域課題抽出ツール」などを提供しています。特徴はスモールスタートができることです。これまでは大規模な予算をかけてそれぞれの自治体独自のデータ流通プラットフォームを構築するケースが多く、小規模自治体での導入は困難でした。弊社のプラットフォームは、特定分野からデータの流通と活用を始め、徐々に領域を広げていくことができます。小規模自治体でもデジタル化に対する課題感さえあれば導入可能です。
小出 全国で人口10万人以上の自治体は200~300程度に過ぎず、残りは何千・何万人規模です。どんな自治体でも低コストで導入できることがExpolis Cloud Platformの魅力です。また、国内外のスマートシティを研究してきた松井先生が、課題発見・導入検討におけるコンサルティング段階から自治体に伴走してくれることも特徴だと思います。
松井 もうひとつ重視しているのが人材育成です。地域課題解決の担い手一人ひとりがデータ流通プラットフォームを使いこなし、課題抽出から解決策の適用、共有までを行うことが大切だと考えています。そのためExpolis Cloud Platformはオンライン学習コンテンツの配布を通じて、ツールを使いこなせるデジタル行政官の育成を支援しています。
── Expolis Cloud Platformは自治体でどのように活用されていますか。
松井 広島県呉市ではデータ活用による地域課題解決の促進を目指して「データプラットフォームくれ」を公開しました。市内の18地点の滞在人口、通行人口といった賑わいを示すデータや、気象データ、図書館データなど、多種多様なデータをAPIを用いて提供し、それらのデータを活用したユースケースも公開しています。また、埼玉県さいたま市と横瀬町では、Expolis Cloud Platformと他の都市OSを連携させ、APIやデータフォーマットが異なる環境でもデータ流通やサービス共有が可能なことを実証しました。このほか、IT基盤を活用した地域課題解決を行うためのSTEAM教育コンテンツを自治体等に提供しています。
── マクニカはエクスポリスと協業し、自治体のスマートシティ推進支援を展開しています。
小出 データ流通プラットフォームは導入して終わりではなく、継続的にリアルタイムデータを収集する仕組みの構築も大切です。弊社はリアルな現実空間のデータセンシング技術に強みを有しており、街を走行する様々なモビリティからリアルタイムな動的データを収集できる「Macnica Mobility Data Platform(MMDP)」を提供しています。MMDPからの動的データをExpolis Cloud Platformに流通させることで、さらに高度なサービス開発が可能になると考えています。モビリティ・自動運転に限らず、ヘルスケアやエネルギーなど、弊社の幅広い事業領域を活かして地域課題解決のためのサービスを開発する方針です。
── 最後に、自治体の皆さんへのメッセージをお願いします。
松井 人口減少で自治体のマンパワーが不足する今、IoTやAIを活用したサービスの導入が地方でも求められており、データ流通プラットフォームの役割は大きくなっています。漠然とした課題や困りごとの段階でも結構ですので、未来に投資したい、街をデジタル化したいという気持ちをお持ちであれば、ぜひご相談ください
小出 多様な地域課題の解決には、多様な技術の活用が必要です。弊社は技術商社としての知見を活かしつつ、データ収集からデータ流通、サービス創出までを一気通貫で支援し課題解決と地域活性化に貢献して参ります。
お問い合わせ先
株式会社マクニカ
スマートシティ&モビリティ事業部
メール:auto-solution@macnica.co.jp
URL:https://www.macnica.co.jp/business/maas/
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