実務家教員の知という2つの問題系 相互関係を理解する必要

2つの問題系

今回は、実務家教員の知についての論点を整理していきたい。実務家教員の知は、2つの問題系からなる。1つは、実務家教員とはどのような存在なのかという問題系である。つまり、実務家教員そのものに関する問題に関連する。もう1つは、実務家教員が扱う知に関する問題系である。実務家教員がどのような知を教えているのか、そして実務家教員はどのような知を創造しているのかに関わる。筆者は、この2つの問題系が密接に関係しあっていると考えている。今後の実務家教員の養成、普及、活用のためには、これらの問題系を理解する必要がある。

実務家教員の知は、実際の教育現場において学生に知識やスキルを伝える役割を果たす個人たちの知識体系のことを示す。この原稿では、実務家教員の知についての洞察を得るために、2つの密接に関連する問題系に焦点を当てて考えることが必要であることを述べる。

この最初の問題系は、実務家教員とはどのような存在なのかという点を明らかにするものだ。これは実務家教員そのものに関連する問題であり、教育機関や組織内で実際に教育業務を担当する人々の能力や役割、あるいは社会的背景についての問題である。実務家教員の資格や経験、専門性はどのように評価され、どのように育成されるべきかについての議論も含まれる。また、実務家教員としてのキャリアパスや役割の変遷に関しても考察しなければならない論点である。これにより、実務家教員の背景や特性が、彼らが持つ知識や教育アプローチにどのように影響を与えるかが明らかになるだろう。

2つ目の問題系は、実務家教員が扱う知に関するものである。実務家教員が学生に提供する知識やスキルは、その教育分野や実務経験に基づいているはずである。彼らは実際の業務で培った実務的な知識や技術を教育研究の場に持ち込み、学生たちに実践的な洞察を提供する。さらに、実務家教員は新たな知識やアプローチを創造する役割も果たしており、教育現場において理論と実務を結びつける架け橋としての役割を果たしている。したがって、実務家教員が扱う知は、単なる教科内容だけでなく、実践的な経験や洞察も含まれる。これらの知識体系は、新たな知の形態であり、筆者の呼ぶところの「実践の理論」である。

相互関係を理解する

ここでの論点は、これらの2つの問題系が密接に関係しているということだ。実務家教員がどのような存在であるか、すなわち彼らの背景や経験が、彼らが提供する知識に影響を与える一方、彼らが扱う知識やスキルが実務家教員の役割やアイデンティティを形成していると言える。実務家教員が実務経験から得た知識を教育に活かすことで、理論と実践を結びつける手助けをしており、学生たちにより実践的な教育を提供している。逆に、彼らが教育を通じて新たな知識やアプローチを創造することで、自身の実務経験や専門知識をより深く理解し、発展させている。

結論として、実務家教員の知に関する研究は、彼らの役割と知識の相互関係を理解する上で極めて重要である。今後の教育養成プログラムや実務家教員の支援策の構築においては、これらの問題系が緊密に結びついていることを考慮し、実務家教員の知をより深く理解することが求められるのである。