KDDIが提案する位置情報データ活用 根拠ある施策立案を推進

KDDIは、位置情報データの活用により、時間ごとの人の動きを地図上に可視化するツールを自治体に提供。自治体においてはこれらのデータを分析し、施策に活用する事例が増えている。位置情報データを活用した自治体の事例、5G時代をふまえたツールの更なる可能性の広がりについて語った。

山本 隆広 KDDI サービス統括本部データマネジメント部 部長

多くの自治体がツールを採用

KDDIは、変化する人の動向を、位置情報を使って把握する、位置情報ビッグデータ分析ツールを提供している。「特定エリアにおいて人の動きを見る際に、それが居住者なのか、勤務者なのか、来街者なのかまでを推定することができます。人の出入りの傾向を知ることで、自治体での施策立案に生かされています」と同社サービス統括本部データマネジメント部部長の山本隆広氏はその特長を説明する。

図 位置情報ビッグデータ分析の用途

新型コロナウイルス感染症対策から街づくり、防災へと利用の用途が広がっている
出典::KDDI調べ 全国自治体へのKDDI位置情報ビッグデータツール無償提供後のアンケート

2020年度に全国の自治体にこのツールを無償提供したところ、47都道府県20政令都市や人口10万人以上の自治体を中心に、多くの自治体がこれを活用した。その活用範囲も、新型コロナウイルス感染症対策からまちづくり、観光、経済、防災まで多岐に及んだという。

データの提供に当たっては、顧客からの同意を得たうえで秘匿処理を行い、個人を特定できないようにしてプライバシーに配慮している。GPS情報については、KDDIの提供するアプリを通じて取得。データは最短数分、最小10mという細かい粒度のメッシュで情報を取得することが可能だ。

「細かな粒度で頻度高くGPS情報を取得することで、移動手段や道路の通行量も分析が可能になります」と山本氏は活用の具体例を提示。これに、携帯電話サービスの契約情報から性別・年代などの属性情報を組み合わせて、さまざまな分析に生かすことができるという。

コロナ禍前後の変化を把握し、
施策に活用

KDDIでは、GPSデータと属性データを活用し、商圏や来訪者の分析を、地図上で表示できる「KDDI Location Analyzer(KLA)」というツールを提供している。プログラミングを行わなくても、ウェブからの操作により分析可能で、分析地、例えば駅などへの主要導線分析、通行人口分析、滞在人口分析来訪者居住地の分析、来訪者の属性分析が可能だ。KLAについても2020年度、21年度と自治体へ期間限定で無償提供を行ったところ、多くの自治体が利用したという。

愛媛県庁では、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、県民への行動自粛を呼びかけるに当たって具体的な人流データを把握するのにKLAを役立てた。松山市の繁華街など、飲食店の多い地域の夜間の滞在人口を位置情報で分析。時系列で人流を可視化したグラフを知事の記者会見や県のホームページ上で公開することでデータに基づいて行動変容を促した。

また、御殿場市役所は2021年、新型コロナウイルス感染拡大後初の富士山開山に伴い、位置情報を用いて富士山の混雑傾向を時系列、時間帯別、曜日別で推定。そのデータをホームページ上に掲載することで、登山者に対し密を避けた登山計画を呼びかけている。

5Gのインフラを活用し、
位置情報データ活用が進化

KDDIでは現在、新たな通信インフラとして5Gのネットワークづくりを進めている。そのインフラを使って、近未来の社会づくりであるSocie ty5.0を5Gで加速するという意味を込めて「KDDI Accelerate 5.0」と名前をつけ、サービスを提供していこうとしている。山本氏はSociety5.0について、「フィジカル空間のデータを収集し、サイバー空間でのお客様のデータと組み合わせて分析したうえで、さらにそれをフィジカル空間である、リアルの社会、生活、ビジネスに活用する、ことが提唱されています」とその概要を説明した。

5Gを中心にSociety5.0の具現化を進めていくために、KDDIではネットワーク、セキュリティ、IoT、プラットフォーム、AI(人工知能)、XR(現実世界と仮想世界を融合する技術の総称)、ロボティクスの7つのテクノロジーを組み合わせながら、ツールをさらに進化させていく考えだ。

「5Gというネットワークレイヤーを基層に、各種テクノロジーによるプラットフォームレイヤーで未来社会づくりの基盤を構築し、DX(デジタルトランスフォーメーション)などのビジネスレイヤーに落とし込むことで、自治体の施策を支えていきたい」と山本氏は話す。

最後に山本氏は、ビッグデータが実際のまちづくりに実装されている事例として、長野県伊那市スマートドローンの取り組みを紹介した。買い物に行くことが難しい高齢者に対し、ケーブルテレビで注文した日用品をドローンに積載して地域の公民館まで配送する仕組み。国内初のドローン配送サービスとして毎日運航が行われている。スマートドローンの活用法としてはこのほかインフラ点検。災害時監視などに展開できるという。

国内初の自治体運営によるドローン配送事業、伊那市支え合い買物サービス「ゆうあいマーケット」
で荷物を運ぶ配送用ドローン

山本氏は「ウィズコロナの時代を迎え、社会の大きな変化を把握するにはデータの活用がますます重要になってきています。しかもデータを分析するだけでなくこれを活用し施策として実装していくことがさらに求められるようになっています。KDDIでは分析サービスのご提供から、実際のまちづくりに活用いただけるソリューションまで、さまざまな形で自治体、企業の活動をサポートし、より良い社会づくりに貢献していきたい」と述べ、講演を締めくくった。

 

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