屋外喫煙所を障がいのある人との「共創」の場に 北斎のふるさとを社会に発信
日本たばこ産業(JT)は、墨田区観光協会主催の「みんな北斎プロジェクト」に参画し、障がいのある人たちとともに葛飾北斎の代表作「冨嶽三十六景」のデザインアートを施した屋外喫煙所を設置した。プロジェクトの取り組みや今後の展開などについて、キーパーソンの二人に語ってもらった。
改正健康増進法の施行で
求められる、喫煙環境整備
――墨田区の観光地としての強みと、「みんな北斎プロジェクト」立ち上げの背景についてお聞かせください。
一般社団法人墨田区観光協会 森山 育子理事長(以下、森山) 墨田区は隅田川などの水辺に恵まれ、花火大会、大相撲、伝統工芸といった多くの江戸文化が色濃く残るまちです。また、昭和の面影が残る古い木造家屋と対照的に、近代的な観光スポットが点在することもすみだの新しい魅力となっています。東京スカイツリーのほかにも、生涯のほとんどを墨田区で過ごした葛飾北斎の作品を展示する「すみだ北斎美術館」、江戸と東京がテーマの「江戸東京博物館」など見どころもたくさんございます。
そうした墨田区の魅力を区内外に広めるため、墨田区がアートを通じた障がい者福祉事業として2016年から始めた事業が「みんな北斎プロジェクト」です。「アートの前では障がいのある人もない人も同じ」をコンセプトに、障がいのある方が創作活動を通じ地域社会に参加できる環境の提供と、墨田区が北斎のふるさとであることの認知拡大を目指してきました。
2020年度の事業終了を契機として、2021年からは墨田区観光協会が引き継ぐ形で今までプロジェクトに携わってきた「すみだクリエイターズクラブ」とともに障がい者支援を継続できないものかと思案していたところ、墨田区内の喫煙環境整備を検討されていた日本たばこ産業様(以下、JT)にご賛同いただき、「PHASE III」として新たなスタートを切ることができました。
――JTでは、喫煙環境整備を通じ地域や社会に貢献されていますが、昨今の喫煙を巡る動向をどのように捉えていますか。
JT 東京支社 東京東部第二支店 川村 豪志支店長(以下、川村) 改正健康増進法と東京都受動喫煙防止条例の全面施行により、2020年4月から事業所や飲食店等の屋内で原則禁煙となった結果、屋外の公共喫煙所を利用する人が増えています。また、屋内喫煙場所の減少に伴い、たばこを吸われる方が一部の公共喫煙所に集中することや、路上喫煙の増加といった喫煙マナーの問題が浮上している状況です。
そうした中、大阪府が2021年3月に報告した「受動喫煙防止対策における飲食店実態調査及び府民への意識調査」において、たばこを吸わない方が「屋外分煙所」の設置を求める声は8割を超え、吸われる方よりも要望が多いとの結果になるなど、たばこを吸われる方だけでなく、吸われない方にとっても公共喫煙所は有効であると考えます。このような状況を踏まえ、JTは引き続き喫煙環境整備と喫煙マナー向上の啓発活動によって、吸われる方と吸われない方がともに快適に過ごせる社会を目指したいと考えています。
壁画デザインで喫煙所を
障がい者の社会参加の舞台に
――JTが「みんな北斎プロジェクト」に参画された経緯をお聞かせください。また、デザインアートを施す喫煙所として、錦糸町駅北口と両国駅を選んだ理由についても教えてください。
川村 墨田区を営業エリアとする東京支社東京東部第二支店では、以前から墨田区と協働して錦糸町駅・両国駅周辺の喫煙環境整備を行うほか、地域社会の一員として地域の清掃活動を実施する等さまざまな形で地域社会への貢献活動に取り組んできました。これらの取り組みをさらに推進するために、墨田区観光協会様にご相談したことが「みんな北斎プロジェクト」を知るきっかけとなりました。
錦糸町駅と両国駅の公共喫煙所を管理運営している墨田区は、2021年度「SDGs未来都市」に選定され、「SDGs未来都市」の中でも特に先導的な取り組みとして毎年度10都市のみ選定される「自治体SDGsモデル事業」にも選ばれています。そうした先進的な自治体である墨田区においても「みんな北斎プロジェクト」もまたSDGsに資する取り組みであったため、墨田区よりご理解ご協力していただくことができました。
また、無機質になりがちな喫煙所の壁面が、たばこを吸われる方・吸われない方の共存のためだけでなく、葛飾北斎、漫画家のしりあがり寿先生、福祉施設の皆さんのキャンパスとなり障がいのある方の表現活動の場や墨田区が葛飾北斎ゆかりの地であることをPRする場の創出になると考えました。
本プロジェクトの発信にあたり、人流の多い錦糸町駅と両国駅はデザインアートを施す喫煙所として最も相応しい場所です。特に錦糸町駅北口の喫煙所は幅約14.5mと墨田区内でも最大級のため、その発信力に大きな期待を寄せています。完成した2つの公共喫煙所は、各々の個性溢れる絵を1枚の絵として融合することで、生命感や躍動感を感じる素晴らしい作品になりました。利用されている方にお話を伺ったところ、「ゆったりできる」「心が温まった」などの声が上がっており、多様性を理解するきっかけとなるアート作品になったと改めて実感しています。
1都道府県に1支社体制で
地域に寄り添い、地域社会に貢献
――「公共スペース×アート」のアプローチが地域に及ぼす影響は大きいと思いますが、本プロジェクトが地域の価値向上にどのように寄与するとお考えですか。
森山 今後は公園や建設現場の仮囲い、自動販売機などにも障がいのある方のアートを施すことで、通行人や観光客が足を止めるスポットに変わり、すみだの活性化につながるものと考えています。多くの企業の皆様やイベントなどで今回のデザインをさまざまな場所でご利用いただき、本プロジェクトの輪が墨田区内に広がって行くことを目標としています。
また、第2弾として今回の喫煙所アートに取り入れられたデザインを墨田区観光協会が制作しているお土産用のボックスのデザインに採用する予定です。そして、江戸時代から「ものづくりのまち」として発展してきた土地柄を活かし、彼らのアート作品と伝統工芸品や製品とコラボした商品を製作し、「すみだ土産」として展開していくことも構想しています。最終的には、売上の一部が福祉施設に還元される仕組みを目指しています。
北斎が時間や場所を超えて地域をつないだように、障がい者と健常者の垣根を超えて多様性のある地域社会となることを期待しています。
――JTでは、地域への価値提供に向けて、どのような取り組みを進めていくお考えですか。また、各地域において喫煙環境整備が課題となる中、全国の自治体に向けてメッセージをお願いします。
川村 単に吸われる方・吸われない方の共存だけでなく、アートによる地域活性化はもちろん、防災やSDGsへの貢献などの様々な地域の課題にも取り組んでいきたいと考えています。また、メーカーである我々だけでできることには限りがあるため、地域社会への貢献に資する取り組みを行う上で、行政や地域との連携が欠かせません。JTでは、2022年4月より1都道府県に1支社体制へと再編されるため、これまで以上に地域と寄り添い、地域との共創に注力してまいります。
お問い合わせ
日本たばこ産業株式会社
分煙、喫煙環境への取組みに関するお問い合わせ:
https://www.jti.co.jp/inquiry/tobacco/tobacco_areas/input.html
JTの分煙の取り組み:
https://www.jti.co.jp/coexistence/bunen/index.html
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