多様な大人に接する場を作り、地域間教育格差を埋める

あしたの寺子屋では、「すべての地域の子どもが生きた教育を受けられる居場所をつくる」をビジョンに掲げ、地方の市町村を中心に多様な大人と関わることができる拠点を設けている。これまでの活動や共創パートナーとして同プログラムに登録した思いについて社長の嶋本氏に聞いた。

聞き手 : 小宮信彦 事業構想大学院大学 特任教授、電通 ソリューション・デザイン局 シニア・イノベーション・ディレクター

嶋本 勇介 あしたの寺子屋 代表取締役社長

小宮 あしたの寺子屋の事業の概要について教えてください。

嶋本 全国に1718ある市町村のうち、人口3万人以下の約1000市町村をメインターゲットに、地域の子どもたちが自分の生きる世界を広げる一歩目を支援する仕組みづくりを行っています。具体的な事業は2つ。1つは、常設の「あしたの寺子屋」で、北海道から鹿児島県まで全国18拠点でパートナー校が開校しています。科目教育をベースにしながら探究学習などへつなげています。もう1つが「あしてらキャンプ」で、夏休みや冬休み期間中の3~10日間で次世代型の教育プログラムを提供しています。

小宮 人口3万人以下の市町村を対象に学校外教育を提供するのはなぜなのでしょうか。

嶋本 地方の市町村では一次産業やサービス業が事業所の多くを占め、周りにいる大人の職業の多様性が低いのが現実です。これは、身近にロールモデルがいないために多様な生き方、仕事の選択肢が少なくなることを意味します。多様な情報に触れる大人の絶対数が少ないために情報格差が生まれ、子どもたちがさまざまな挑戦の機会に触れても自分にとって関係ない、できないと感じ、結果として経験格差、機会格差が生じています。これが私たちの考える教育における地域間格差の正体です。この格差の連鎖を断ち切るために事業を展開しています。

地方の子供たちの
踏み出す一歩目を支援する理由

小宮 そもそもなぜこの事業を始めようと思ったのですか。

嶋本 前職で、さまざまなキャリアの人の話をオンラインで聞けるプログラムを作成し、全国3000人の高校生に使ってもらっていました。ただ、そうしたプログラムに触れられるのは都市部の高学歴層の子どもたちです。地方の子どもたちがそうした教育機会に触れようとしないのは努力が足りないからだと思い込んでいたところがありました。ところがある時、人口5000人の町の中学生に「ぼくらはクラス替えもないし、道の駅でしか域外の人に会わない」と聞き、我に返りました。有志を募って地方の子どもたちの一歩目を支援できる環境づくりをしようと考え、札幌にUターンして起業しました。

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