現場主導で進められ、シン・トセイでも採用 キントーンで自治体DX

デジタルトランスフォーメーション(DX)を通じた業務改善が求められる中、自治体ではサイボウズの業務アプリ開発プラットフォーム「kintone(キントーン)」を利用する動きが広がっている。現場主導で進められる、キントーンを活用した自治体DXのポイントを解説する。

自治体におけるDXを通じた住民サービス向上や、業務改善の重要性は増している。このような中、サイボウズのkintone(キントーン)は公共機関100団体以上で導入実績があり、業務改善や行政手続きのオンライン化、新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)対応など様々な場面で活用されている。

公共機関100団体以上で
導入実績を持つ「キントーン」

限られたリソースでの課題対応が求められる中、自治体職員には悩みも多い。「職員の方々とお話すると『何から手をつけて良いかわからない』、『自分たちだけでDXを進める自信がない』、『十分な予算の確保が難しい』といった様々な悩みが聞かれます」と、サイボウズ営業本部営業戦略部公共グループの山中萌氏は言う。

山中氏自身も前職は公務員で、公務員時代に経験した非効率な業務を変えたいと思い、2020年7月にサイボウズに転職した。山中氏は、自治体DXには様々なハードルが存在していると指摘する。例えば、業務内容の幅が広く様々な業務が発生するため、適切なパッケージソフトがないことも多い。また、小規模業務が多く、独自のシステムを開発するための予算が取れないこともある。

さらに、システム化の予算を確保できた場合でも導入までに多くの時間を要するうえ、一度導入したシステムを改修するにも予算や時間がかかるため、使いにくくてもそのまま使い続ける、というケースは珍しくない。また、自治体内でシステムを内製すると、スキル習得のハードルが高いためにノウハウが属人化しやすい。

ノーコードで現場の職員も
簡単にシステム作成が可能に

このような中、キントーンは、自治体DXが抱える様々な課題への解決策を提供する。「キントーンを使えば、プログラミングの知識がない人でもドラッグ&ドロップのマウス操作で、現場の用途に合ったシステムを素早く作成できます。」と山中氏は言う。

キントーンの画面写真。マウス操作で簡単にアプリを作成できる

キントーンの機能には、主に以下の3つの要素がある。第1にデータベース機能。「データを貯める箱となるアプリを作成し、そこにデータを貯めて情報を一元管理したり、最新の情報を共有できます。 また、貯めたデータはCSV形式で出力したり、簡単にグラフ化できます」。

第2がプロセス管理機能。この機能を使えば、他部署への依頼や自部署内での申請など、誰かにタスクを受け渡しする際、状況を見える化できる。第3に、コミュニケーション機能がある。キントーンではデータに紐づけた形でコメントをすることができるため、この機能を活用すれば、データとそれに関するやり取りを集約できる。特に、職員が引き継ぎを行う際に役立つ機能となっている。

これらの機能以外にも、キントーンには役立つ機能がある。例えば、リマインド機能を使えば、作業の締め切り前に指定した人への通知を出せる。また、アクセス権を設定することで「誰にどのデータを見せるか」という制限をかけることも可能だ。

「自治体で導入する際の大きなメリットとしては、第1に、現場主導で現場が使いやすいシステムを開発できることがあります。そして第2に、急変する環境にもスピーディーに対応できる柔軟なシステムである点が挙げられます」。

システム開発で重要となるのが、業務手順や内容を整理したうえで開発をすることだが、キントーンなら業務内容を把握している現場の職員自身が簡単にシステムを作成できる。さらに、システム作成後も現場のニーズに対応し、より使いやすくするための改良が簡単にできる。

自治体業務では法改正や制度改正に伴い、業務スキームが変更されることが多い。他にも、災害対応や新型コロナウイルス感染症対応などで急遽システムが必要になることもある。キントーンは一度作ったシステムの改修も簡単であるため、業務スキームの変更や急変する環境への対応も可能だ。

また、キントーンを連携サービスと組み合わせれば、さらに幅広い業務に対応できる。例えばウェブフォームのツールと連携して、ウェブから住民の申請を可能にする、帳票出力のサービスと連携して、キントーン上のデータを基に通知書を出力する、といったこともできる。他には、総合行政ネットワーク(LGWAN)のアプリケーションサービスプロバイダ(ASP)として活用することも可能になる。

東京都、神戸市でも
キントーン活用で業務改善

自治体でのキントーン導入事例としてはじめに紹介されたのは、DXを梃子にした構造改革「シン・トセイ」を進める東京都だ。東京都ではキントーンを全庁的な情報共有や業務効率化の基盤として活用している。「東京都ではキントーンを使って豊洲市場における水産物の衛生監視業務をデジタル化しました。まずは都のデジタルサービス局の担当者が2時間で試作アプリを作り、現場からの意見を聴きながら改良を重ねたそうです」と山中氏は振り返る。

また、神戸市でも全庁的な業務改善プラットフォームとしてキントーンを活用し、現場の職員が自らシステム開発を行う体制を整えている。

「職員の方が作成されたアプリの1つとして、『公用車運転日報アプリ』があります。以前は公用車の運転記録は紙で記入・管理しており、年間約5000枚の紙を使っていましたが、アプリによって完全ペーパーレス化が実現したそうです」。

自治体DXをサポートするため、サイボウズでは行政職員専用のユーザーコミュニティ「ガブキン」も運営。現在、200団体の行政職員700人以上が参加している。コミュニティでは、他の自治体の活用事例に関する質問やアプリテンプレートの共有、イベントを通じた仲間づくりなどが活発に行われている。

キントーンの行政職員専用コミュニティ「ガブキン」。業務ノウハウを含めたテンプレート等を公開している

山中氏は、講演の締めくくりとして「サイボウズではガブキンのほか、パートナーによる伴走支援やセミナー、イベントなど様々なサポートを用意しています。キントーンを使ったDXの推進は、自分たちの業務を自分たちの手で変えていける、そんなことに気づける前向きな取り組みです。皆様との二人三脚で、自治体DXの様々なハードルを乗り越えていきたいです」と呼びかけた。

 

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サイボウズ株式会社
メール:cy-public@cybozu.co.jp
URL:https://kintone.cybozu.co.jp/jp/government/

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