金融領域の規制改革 分野間・産業間のデータ連携がカギ

ビジネスや日々のくらしと密接にかかわる金融領域。コロナ禍で非接触決済などの新技術も普及しているが、スーパーシティやスマートシティの実現にはどのような規制改革が必要か。経済政策・金融を専門とする東京大学大学院経済学研究科の柳川範之教授に聞いた。

柳川 範之(東京大学 大学院経済学研究科・経済学部 教授)

住民・地域目線で規制改革を

キャッシュレス社会、自動運転、ドローン配達、遠隔医療など、生活全般に最先端技術を導入し、未来都市の先行実現を目指すスーパーシティ。構想実現のためには、複数領域の規制を、一括して迅速に緩和・改革することが必要だ。

経済政策や法と経済学を専門としながらスーパーシティ・スマートシティへの知見も深い柳川氏は「時代に合わせて制度を変えること自体には誰も反対しません。ただ、技術サイド・サービス供給サイドの視点だけでなく、需要サイドである住民・地域のニーズの視点を取り入れることが重要です」と話す。供給サイドの目線は『テクノロジーを入れる』ことに集中しがちで、住民や地域への提供価値、『何のためのテクノロジーか』という目的が欠落する傾向があることはこれまでも指摘されてきた。

一方で、住民側からのニーズも、目に見えるものだけがすべてではない。例えば、『買い物や公共施設に行くための交通手段』などは認識しやすい〈顕在ニーズ〉だが、提示されて初めて気づく〈潜在ニーズ〉も多く存在する。潜在ニーズの提示という意味では、旅館の〈おもてなし〉がわかりやすいと柳川氏はいう。

「提供されてはじめて、こういうサービスが欲しかったと気がつく場合が多いからです。先回りの気づかいが心地よい滞在を実現するように、デジタル化で得たデータをおもてなし視点で活用することで、行政や民間の新たなサービスが生まれる可能性があります」

こうしたニーズの先取りは、民間事業者の得意とするところ。行政だけでなく、多様な事業者、団体、研究機関、個人の知恵を交え、未来のまちに必要なサービスを創出し、そのために変えるべき規制や仕組みを検討することが重要だ。

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