長崎市のデジタルマーケティング戦略 観光客の声を見える化

観光において年々重要性を増しているデジタルマーケティング。地域DMOである長崎国際観光コンベンション協会は、Salesforceが提供する「Salesforce Marketing Cloud」を導入し、個人旅行の需要掘り起こしや観光消費の拡大をねらう。

長崎市は、江戸時代から世界の窓口として機能した出島をはじめとして、大浦天主堂、洋風木造建築が並ぶグラバー園など、歴史的観光資源を持つ地域だ。独特な地形が作り出す景観と異国情緒漂う街の雰囲気の魅力から、老若男女問わず様々な層の観光客が訪れている。

人気の観光地、グラバー園からは長崎港が一望できる

歴史・文化を生かした交流都市へ
データを生かすDMOの貢献

2018年に地域DMOとして登録された長崎国際観光コンベンション協会(以下、DMO NAGASAKI)は、多くの観光施設を保有する行政と連携して、「訪問客の満足度向上・消費拡大」、「事業者のビジネスチャンス拡大・収益向上」、「市民の満足度向上」などをミッションに掲げ、観光・交流まちづくりの舵取りを行っている。

左から、セールスフォース・ドットコム 金融&地域DX営業本部 若尾勇治氏、同統括部長 井口統律子氏、DMO NAGASAKI事務局長兼 DMO推進本部長 豊饒英之氏、同企画部 小林寿樹氏

事務局長兼DMO推進本部長の豊饒英之氏は「開港から450年、国際交流のまちとして栄えた長崎市には、外から来た人を受け入れる風土があります。市民の方々がガイドとして街歩きを案内する『長崎さるく』や、教育旅行で選ばれてきた実績、さらに近年のインバウンド誘客で東アジアの国からも多くの来訪があり、地域全体として観光事業に取り組んできました。コロナ禍で今は訪問客数が下がっていますが、いま私たちが目指しているのは、行政・事業者・市民が協力して、訪問客も含めて相互にWin-Winになる交流都市であり、そこにDMOとして観光まちづくりのマーケティング・マネジメントを行っています」と語る。

課題は、新たな客層の誘客、そして選ばれ続ける仕組み作りだ。2019年度の延べ宿泊者数のうち9割が国内からの観光客となっているが、旅行形態が団体から個人にシフトするなかで、旅行スタイルに合った観光プランの開発と情報発信が必要だ。インバウンドやMICEなどもアフターコロナを見据えて注力市場となる。それには顧客のニーズを拾い上げる細かなマーケティングが必要だが、そこで今年度からDMO NAGASAKIが導入したのが、デジタルマーケティングに強みを持つSalesforceの「Marketing Cloud」だ。

アナログからデジタルへ
データ活用の重要性

企画部 小林寿樹氏は、「これまで長崎市では誘客に関する統計調査を年に一度の頻度で行ってきましたが、個人旅行か団体旅行、などの大きな区分はわかるものの年齢層などの詳細は部分的に把握できる程度でした。2021年からは、DMO NAGASAKIが調査担当となり、調査をより総合的・包括的にしました。具体的には、アンケート対象を事業者・市民の方々まで拡げ、多様な関係者からのリサーチ結果をレポートとして毎月公表して、地域の方々に見ていただけるようにしました。詳細な情報を地域内にシェアすることで、ビジネスチャンスの拡大や収益向上につなげるきっかけにできればと思っています」という。

さらに、アンケートでは聞き取りづらい観光客の「生の声」をSNSから拾うために活用を始めたのが、「Marketing Cloud」の中のソーシャルリスニング機能、「Social Studio」だ。ソーシャルリスニングとは、Twitterやブログなどソーシャルメディア上で交わされるユーザーの自然な会話を収集・分析し、リスク管理や商品開発などのビジネスプロセスで活用する手法だ。「Social Studio」を使うことで、DMO NAGASAKIは、直接アンケートを取らずとも、長崎を周遊する観光客の嗜好をSNS上で収集・分析することができ、観光客や長崎市への旅行を検討している見込み客の潜在的なニーズを拾い上げてマーケティング・プロモーションに生かすことが可能だ。

「DMO NAGASAKIにとって、お客様の声を収集することは非常に重要で、アンケートで得る回答というのはどうしても質問によってリアルな気持ちが読み取れなかったりする。ソーシャルリスニングによって、これまで漠然としていたお客様のイメージが鮮明になれば、顧客層に合った新たなプランの開発につながります。また集まったデータを地域にフィードバックすることで、お客様に触れる事業者の方々も良い準備ができるのではないかと思います」と小林氏は語る。

様々な地域の事例を知るSalesforceの若尾勇治氏は、情報の収集だけでなく発信についても重要性を指摘する。

「『Marketing Cloud』は、DMO NAGASAKI様からお客様へのプロモーション戦略の改善にもご活用いただけます。例えば、Web上で旅行を予約したお客様に対して旅ナカのアクティビティをご提案することやリピーターのお客様には最新の観光スポットをご案内することも可能です。顧客情報を一元管理しているからこそ、最適なタイミングで最適な方法でご案内ができるため、『訪問客の満足度向上・消費拡大』、『事業者のビジネスチャンス拡大・収益向上』に寄与できます」。

積み重ねたデータから
地域のビジョンを生み出す

DMO NAGASAKIでは2021年から5カ年の「長崎市DMO事業計画」を定めており、当面の目標は2023年に訪問客数をコロナ禍前の水準まで引き上げ、その後は持続的な成長を図ることとしている。

小林氏は「今年度は『Social Stu dio』を活用し、長崎市がどんな風に見られているのかを把握し、今後のマーケティング施策の戦略を立てたいと思います。その後は戦略に沿って様々なプロモーションを打って、その結果をもとに高速でPDCAを回すことで長崎市の観光地としての新たな価値を磨き上げていきたいと思います。Salesforce様には今後もデータ活用に関する知見をいただきたいです」と話す。

Salesforce 金融&地域DX営業本部 統括部長の井口統律子氏は、「データを活用してお客様のイメージが鮮明になってくると、観光地としてのビジョンやロードマップが見え、これまでとは異なる課題も出てくると思います。その際弊社からは、その時々の長崎市の状況に合わせたご提案によってご支援をできればと思っております」と語った。

コロナ禍によって観光のスタイルが変わるなか、一歩進んだデジタルマーケティングが今後の観光地復活の起爆剤となるかもしれない。

 

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